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似鳥ニトリ会長が商品開発を主導 円高の恩恵失い、永守ニデック会長と同じ轍を踏むか

 ニトリの似鳥昭雄会長がニデックの永守重信会長と二重写しに見えてきました。似鳥会長は家業から、永守会長はゼロから創業し、世界に飛躍する企業に育て上げた稀代の経営者です。縁あって似鳥会長の素顔を知る機会が多かったせいか、持ち前のユーモアが最近の業績不振で失せてしまい、その言動にちょっと驚いています。収益力低落を焦燥感を募らせ、ボタンの掛け違いが始まった永守ニデック会長と同じ轍を踏むのでしょうか。

減益の流れから抜け出せない

 ニトリホールディングスが減益の流れから抜け出せません。株式上場前から続けていた増収増益36期連続の大記録は2024年3月期で減収減益となり、ストップ。翌年の2025年3月期も売上高は増えましたが、経常利益、営業利益、純利益いずれも減少。

 直近、2025年4月〜9月期中間決算でも売上高が前年同期比1・8%減の4391億円、純利益が8・1%減の417億円。似鳥会長は「こういう状態は初めて。深く反省している。今のニトリには消費者の求めている商品が無く、魅力が少ないということだ」と厳しい現況を認めています。

 主力の家具など耐久消費財は逆風に直面しています。物価高騰で家具の購買意欲は冷え込む一方、人手がかかる配送コストが増え、販売管理費が増加し続けています。ニトリの客足は10ヶ月連続で前年割れとしていますから、かなり深刻です。

 結局、打開策の切り札はやはり似鳥会長の経営手腕。自ら商品開発のトップに立ち、開発や発売のスピードを早めて半年後の2026年2月以降は新商品の比率を20%から30%へ引き上げる方針です。低価格帯の商品も増やします。

 なにしろ、ニトリといえば「お、ねだん以上」のキャッチコピーが語る通り、お客の期待を上回る品質、使いやすさが売り。ライバルよりも割安に、しかも高品質の家具などを購入できる。だからこそ、客足はニトリへ、ニトリへと向かいました。

「お、ねだん以上」の源泉は円高

 強さの源泉は円高にありました。インドネシアやベトナムに生産拠点を持ち、日本市場のニーズに適した家具などを開発し輸入してきました。使い勝手に工夫を凝らすアイデアも加わり、「円高差益」はニトリの実力を強化し、収益はトントン拍子で伸びてきました。

 東京など関東に本格進出する2015年以前の2010年に札幌市で開催した決算発表が忘れられません。当時の似鳥社長は増益の推移を示した棒グラフを説明パネルに表示し、お得意の笑いを交えて「増益はニトリの商品力と従業員の努力のおかげ。ただ、円高も少し貢献しており、まあ、この辺が円高差益というか効果かな」と説明するのですが、範囲をぼやかしながらも利益額を示す棒グラフの大半を指でなぞっていました。

 ところが、円高は円安に転じます。ドル円相場は2015年以降、1ドル120円から100円を推移していましたが、2022年から円安の流れに。130円、140円、150円と円安は進行します。海外から輸入していたニトリの主力商品は、円高効果から円安差損の負の重荷を背負いながら「お、ねだん以上」を実現しなければいけないのです。

 「お、ねだん以上」を掲げている以上、単純な値上げはありえません。2021年以降、客単価を高めるマーケティングを加速しているのも円安をにらんでのことです。最近は洗濯機など電気製品を品揃えに加え、ニトリの客層を広げる戦略を加速しています。テレビCMに登場する商品は10万円以上の高額商品が目立ってきました。

 しかし、割安感が売りだった量販店で客単価が高まれば、当然客足は減ります。ニトリの決算資料をみても、2021年以降の客単価と客数の増減にはっきりと相関関係が現れています。客単価が上がれば客数は減るのです。2025年中間期をみると、客単価は104・6と上昇していますが、客数は92・8に落ち込んでいます。「お、ねだん以上」を掲げたニトリが自縄自縛の悪循環から抜け出せないのです。

異論を挟めない空気はニデックと同じ

 似鳥会長は商品開発のトップに立って新商品数を増やすとともに、低価格帯の商品も強化すると表明しています。減益の流れを自らの力で止め、増益に転じたい。家業を引き継いだとはいえ、事実上の創業者である似鳥会長は思いはわかります。しかし、ニデックの永守会長と同様、カリスマ経営者であり、社内で誰も異論を挟めない独裁者であるのも事実です。

 2024年3月期で増収増益記録を止めてしまい、減益から抜け出せない根源は、似鳥会長にあるのです。

 構図はニデックとそっくり。後継者として選んだ社長の経営手腕が未熟と批判し何度も交代させましたが、誰が社長であろうとニデック社内の経営の実権を握り続けているのは永守会長であることを従業員は知っているのです。仮に問題があったとしても、誰も反対できないでしょう。そして今、ニデックは不適切会計という重大な疑義のもと株式上場すら危うい窮地に追い込まれています。

 ニトリも創業以来の正念場を迎えているのかもしれません。

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