
シニアライター釜島辺の「求職セミナー体験記」(10)自分らしく働くために
「どのような仕事が向いているのだろうか」。そう思いつつ求職活動の一環で参加してきたセミナー、説明会は半年で十数回に及んだ。それぞれ参考になったが、一個人としては聞けば聞くほど未知なる「適職」が遠ざかっていった。「新聞記者だった自分にはやっぱり『書く仕事』が向いているのではないか」。気ままな旅をしながらそんな考えに至った僕にとって、最後に参加したのが「自分の思考特性を理解して就職活動につなげよう」というセミナーだった。
チラシに誘われて
僕があれこれセミナーを受講する際に参考したのは応募を求めるチラシだった。たとえばこのセミナーの場合、多くの説明が記され、それが誘い文句となったのだ。
「物事を見るとき、自分のクセや思い込みはありませんか? 自分自身の思考や捉え方の特徴を知って、就職活動への活かし方を学びます」
「チェックシートで自分の感覚の特徴を知り、就職活動に応用する」「自分自身の思い込みが就職活動に与える影響を知る」「自分らしく働くためのポイントを学ぶ」
問いかけから内容まで細かい文字が並ぶセミナー案内。はっきりしたイメージまでは抱けないが、何か参考になる話を聞けそうな気がしてくる。シニアに限らず、「全年齢対象」とあるので、普遍的な内容なのだろうと察しもつく。
凛とした講師の姿勢
会場は年齢層の幅広い男女50人で埋まっていた。最後のセミナーなので話に集中しようと思って僕は前方に座った。チラシで見た女性講師の顔写真が女優みたいだったことも多少意識したが、こうした就活セミナーの講師陣は男女問わず浮ついたところがなく、地味で堅実な印象を感じていた。人生の針路にかかわる仕事だけに信用と中身が問われるので当然かもしれない。
かつて経済官庁の審議会を取材したとき、真っ赤な靴底が見えるほど高いヒールで闊歩する化粧バリバリの某社女性取締役の委員がいた。「まるでスター気取りだけど、規制緩和で苦しむ人たちのこと分かっとるんか」と冷ややかに眺めたが、この日の講師で産業カウンセラーの皆川麗子さん(仮名)は対照的なローヒールで、テンポの良い話と凛とした表情が印象に残った。勉強しているのだろう。話の内容が濃い。
それに皆川さんには進行にも工夫があった。冒頭で「皆さんにも発表してもらいます」と宣言したのだ。受講者はいつ指名されるかわからないドキドキ感で眠くなることはない。「なるほど、うまい方法だ」と感心していると、「ただし守秘義務があるので発表者のプライバシーはこの場限りです。ここまでよろしかったら手を挙げてください。はい、反対側の手も上げて、そのまま体をねじって伸びをして……」とストレッチ方法まで話が展開する。人前で話す時に使えるテクニックだ。「このアイデア、いただき」。そう思ってさっそくメモした。