
シニアライター釜島辺の「求職セミナー体験記」(9)介護から警備まで
「60歳以上の職種別就職率」が高い「介護」と「警備」の仕事を知ろうと両方の説明会に参加した。いずれも肉体労働のため人手不足で、就職できる確率が高い業種だ。人と人が支え合い、社会を支える仕事に携わることは大切だ。しかも日ごろ見られない社会の断片に触れられるかもしれないと思っていた。パソコン画面の仕事より、生身の人間として手応えもありそうではないか。
介護職員就業促進事業の一環
介護の初心者向けの説明会のチラシには「現役介護職員による体験談」とあった。「介護や福祉に興味はあっても、『未経験だから自信がない』『介護の仕事をしながら資格が取れないかな』と思っている方も多いのではないでしょうか? そんな方が一歩を踏み出すためのセミナーです」と書いてある。「現場の生の声が聞けるチャンスです!」という誘い文句に「これだ!」と思った。
応募窓口に電話すると、「介護職員就業促進事業で、資格をお持ちでない方も働きながら相応の研修を受けられる介護施設があります。ぜひ介護施設の職員の話をお聞きになられてはいかがでしょうか」と勧めてくれたのだ。
明るい雰囲気の会場
会場に入ると、これまでのセミナーと空気が違っていた。まず机がない。前方には一人の講師ではなく、受託した福祉事業の協同組合職員の男性6人がスタイリッシュなジャケットをはおって、まるでIT企業の社員のようだ。横にはスポーツジムの従業員のような黄色いTシャツ姿の男女4人の介護会社のスタッフが並ぶ。暗く重苦しいイメージを描いていたが、疲弊した雰囲気など微塵も感じさせない健康的な明るさに満ちている。
受講者は男性15人、女性13人。対象年齢を指定していないので年代も幅広い。こちらも気づいたことがある。女性がほぼ全員スニーカーで参加していたのだ。その臨戦態勢ぶりを見て、心構えが違うと感じた。
介護現場とは
最初だけハローワークの職員が司会を務めたが、すぐに福祉事業の協同組合職員、訪問介護スタッフへとマイクが渡り、自己紹介のあと、さっそく訪問介護の女性責任者が「特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなどの施設系と、訪問介護、通所介護、訪問入浴などの在宅系があります」と説明を始めた。
内容は、食事、排せつ入浴、移動などの身体介護、そして掃除、洗濯、買い物代行、調理などの生活援助があり、「料理の苦手な男の子も『クックパッドを参考にしたら大丈夫でした』と社に帰ってきます」とにこやかに話した。仕事の魅力は「年齢問わずチャレンジしやすいこと」。つまり年代に応じて経験を生かしながらできる仕事だという。そして「ステップアップができる」という。実務者研修を受けられ、介護福祉士になる機会もあるそうだ。
若手の男性職員もマイクを持ち、「介護の仕事の魅力はざっくりいうと社会貢献です。とてもいい仕事なので、とにかく第一歩を踏み出してほしいです」と強調した。こうしたステキなセリフがさらりと出てくるのが、共感を大切にする「ゆとり世代」のいいところだ。そして現場スタッフからの報告に続く。
飲食業界から転身
飲食業界で2年働いていた松岡悠斗さん(仮名)は朗らかに語る。
「接客に興味があって、中華、フレンチ、和食、ファーストフード、いろいろ吸収しようと積極的に働きました。コロナ感染が起きて飲食業界があやしくなったころ、介護で働く友人に声をかけてもらい、働きながら介護を学びました」
「この仕事は人助けなので、人に必要とされるのはすごく心地いいし、お礼を直接言ってもらえるのがうれしい。指名していただいたのがすごく励みになりました」
「排せつや食事の世話を不安に思う方もいると思います。僕もそうでしたけど、どんなスキルも生かせる職場だと思ってください。料理、掃除、パソコンと、不安もありますが、仲間が一緒に考えてくれるので不安は払しょくできます。一対一で話すことは楽しいですよ」