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ホンダが消える29 ソニーにちょっとがっかり、遊園地の入り口で新たな感動探しに迷うEV 

 ちょっとがっかり。ホンダとソニーが共同開発する電気自動車(EV)に対する感想です。まだ開発初期の段階。評価が早過ぎるのは承知のうえです。ホンダもソニーもなぜEVを開発するのか。わかっているはずの原点を見失っている様子。まるで遊園地を訪れ、さあ楽しもうと入り口に立った途端、右か左か、それとも真っ直ぐに進むか悩んでしまい、迷っているかのようです。

開発モデルのコンセプトに驚きがない

 2023年1月4日、米国ラスベガスで開催したIT関連イベントCESでホンダとソニーは開発中のEVのプロトタイプを発表しました。社名は「AFEELA」。アフィーラと呼びます。新しいEVから得られる新鮮な体験を感じる。そんな意味を込めたfeelから創造したブランド名だそうです。

 ホンダとソニーが共同出資で設立した「ソニー・ホンダモビリティ」の水野泰秀会長は、両社のコラボレーションを通じて斬新なソフトウエアを活用し、「モビリティーに革命を起こす」と語ったそうです。

 残念ながらCESの会場で現車を見ていません。ネット情報などを頼りに想像すると、車体デザインは空力抵抗を下げるため、ボディは極力削ぎ落とされています。フロント、車体全体の印象は世界の自動車メーカーが目指しているデザインの流れに乗っているようです。フロント正面に「メディアバー」と呼ばれる情報表示がついています。アップルの「Mac 」で採用したタッチバーのよう。

 車内のインテリアは運転席前方に横幅のスクリーンが嵌め込まれ、走行状況、位置情報や周辺施設、エンターテインメントなどさまざまな情報が表示される設計です。すでにホンダが2020年8月に発売した「Honda e」で実装されている発想です。車内外に驚きはありません。

センサーとカメラが45個、こちらは提携の狙い通り

 開発モデルには車内外にセンサーやカメラが45個も設置されています。こちらも予想通り。ドライバーがハンドルやアクセル、ブレーキを操作しなくても、目的地に到達する自動運転を実現するためには、車の四方八方に目を光らせ、衝突を回避しながら走行しなければいけません。センサーとカメラは自動運転の成否のカギを握るひとつです。車内外から収集する情報を処理する能力を高めるため、クアルコムと専用半導体を開発するそうです。

 ホンダがソニーと提携する狙いのひとつはセンサーとカメラの最新技術を手に入れること。「From to ZERO」で1年以上も前、ホンダはソニーと提携して世界トップクラスのセンサー技術を取り込むよう提案しました。提案通り、実現に動いているようでホッとしました(笑)。

 世界の自動車メーカーは電子技術やソフトウエアで優れた会社と手を組み、情報処理能力を飛躍的に高めて自動運転の実現、最新コンテンツの取り込みを急いでいますが、ホンダ・ソニーが最前線を走っているのは間違いありません。アフィーラにはほかに車のドアが自動開閉、空気浄化など画期的な技術が披露されていますが、特筆することはありません。

 ホンダがソニーに期待するもうひとつの提携効果は、自動車メーカーを超える飛躍した発想です。

車内のエンターテインメントと自動運転だけ?

 ソニーは移動する空間内の新しいエンターテインメント開発に注力するため、ゲームメーカーのエピックゲームズと共同でゲームコンテンツを開発することを明らかにしています。プレイステーションで世界トップクラスのゲームビジネスを展開しているソニーです。メタバースなど新しい技術を盛り込んだコンテンツが誕生するのでしょうが、開発の流れはこちらも予想通り。

 開発モデルのアフィーラから、なにを感じとれば良いのでしょうか。移動する道具に過ぎなかった自動車がディズニーランドやゲームセンター、三次元映像を楽しむ移動空間に変身するダイナミズムでしょうか。

 何か物足りない気がします。自動車の主役が内燃機関エンジンから電気モーターへ移行する最大の理由は地球の劇的な気候変動を招く温暖化ガスを減らすためです。移動する時間と空間をエンターテインメントの消費に使うだけなら、たとえ自動車すべてがEVに置き換わったとしても、クルマより関連設備を充実した公共交通機関を利用した方が「地球」のためになります。むしろクルマを諦めて大量輸送機関の利用を勧める時代が訪れると予想します。

 それでもヒトはなぜエンジンから電気モーターへ切り替えてまで自動車を選び、移動したいと考えるのか。EV開発の大きな流れが見えてきた今、移動する機械である自動車そのものの魅力、エンターテインメント性を考えても良いと思います。

 100年以上積み上げてきた自動車の楽しさは、好きな時間に好きなだけの荷物を積んで、家族や友人ら好きな人々と一緒に好きな場所へ移動することに尽きます。もちろん、トラックなどで貨物を効率的に輸送できる経済的なメリットも計り知れません。「駅から駅へ」という制約から逃れられない新幹線など公共交通機関との違いです。

開発は迷路に入り込むのでは

 自動車はヒトに自身の考えに従って移動する自由を提供する移動体として進化してきました。最近、マツダの「ロードスター」などスポーツカーが人気を集め、異例のヒットを飛ばしている背景も同じ理由です。EVの普及に伴いガソリン車が近い将来消えてしまうなら、あの楽しさを手に入れるなら今しかないという切迫感があります。

 EVの開発は、インターネットや半導体技術の進化を追い風に単にエンジンから電気モーターへ切り替わるほかのプラスアルファを加えて加速しています。その答が自動車内で楽しむエンターテインメントなのか、ドライバーの負担を大幅に減らす自動運転なのか。開発の方向性を見極めなければ、一部の人にしか利用されない物珍しいおもちゃ「ガジェット」になってしまいそうです。開発が進むにつれ、ホンダ・ソニーはじめ多くの技術者が迷路に入り込むのではないでしょうか。

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