• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
  • HOME
  • 記事
  • ZERO management
  • ホンダが消える30 「今日、誰かホンダを見た?」夢が見えない、感じない、見当たらない

ホンダが消える30 「今日、誰かホンダを見た?」夢が見えない、感じない、見当たらない

 最近のホンダを眺めて「感動した風景を見た」と感じますか。それとも、もう見慣れてしまって「いつものホンダ」と感じているでしょうか。「ホンダが消える」をもう2年近く連載していますが、最近は「ホンダ」の文字を見て、心躍る時がありません。

N-BOXは軽で8年連続トップ

 例えば新車。軽自動車「N-BOX」は相変わらずダントツの強さを見せつけています。2022年度(2022年4月〜2023年3月)の販売台数は20万4734台。軽自動車の新車販売では8年連続のトップ。エンジンの排気量1000CC以上の登録車を含めた新車全体でみても販売台数で2年連続のトップ。しかも、軽自動車では第2位のダイハツ工業の「タント」に8万台以上の差を付けて圧倒しました。クルマそのものの素晴らしさと強さがよくわかります。

追走する他のホンダ車が見当たらない

 ところが、追走する他のホンダが現れない。新車販売のベスト10で顔を出すのは軽自動車、登録車を含めても小型車の「フリード」だけ。フリードは、小型車ながら6人・7人乗りで、燃費や安全性能などでも使い勝手が良い。コストパフォーマンスは抜群です。販売ランキングのベスト10は軽自動車ではスズキとダイハツ、登録車ではトヨタが圧倒的なシェアを握っていますから、なんとかベスト10に名を連ねるだけの価値があります。

 しかし、ここでホッとするわけにはいきません。ホンダの主力小型車「フィット」はモデルチェンジ後、予想に反して売れていません。現在のミニバンブームの先駆として登場した「オデッセイ」は国内生産を終え、中国製に衣替えして再登場しますが、国内市場での話題性は乏しい。

 需要が縮小するセダンはもっと寂しい。「レジェンド」は生産終了し、「アコード」が走る姿を見たら、今日は幸運かもと思うぐらい稀です。明るい材料といえば、根強いファンを持つ小型SUVで「ZR-V」を新たに投入したことぐらいかな。

2040年に向けて変身中なのはわかります

 ホンダが変身に向けて七転八倒しているのはわかります。2040年にはエンジン車から全面撤退し、新車すべてを電気自動車(EV)に転換すると宣言しています。地球温暖化に対応する自動車メーカーとして生き残り策を選択したのです。

 エンジンからEVへの転換は、他人から背中を押されて決断したわけではなく、自ら自動車メーカーとしてのメッセージが込められています。そのひとつがソニーと提携して、これまでと全く異なるEVを開発、世に送り出すこと。そう理解しています。

 しかし、現在の新車戦略をみていると、ホンダからのメッセージ、あるいは次代への夢が伝わってきません。2040年に向けて今は大変な時期。これからEVが相次いで誕生するまで待ってくれといわんばかりです。今は「ツナギ」の時期として消耗して良いのか。疑問と不安を覚えます。

挑戦力も失っていないか

 目の前にN-BOXしかヒット作が見当たらない事実は、挑戦力を失ったホンダを炙り出しています。新車開発は10年単位です。同じ期間、ホンダは新たなブレイクスルーに挑んでいなかった。あるいはメッセージを発する経営戦略を選択していなかったこと。今さら躍起になっても、新たな挑戦、夢は結実するのか。こう物語っているようです。

 例えば「S660」。2015年に軽スポーツカーとして大ヒットしました。リスクを避ける大企業病に陥っていたホンダは若手技術者のモラルアップを狙ってプロジェクトを立ち上げ、誕生しましたが、生産は期限限定。軽スポーツカーは1990年代に「ビート」が登場しており、この試み自体は二番煎じ。若手技術者のガス抜きに使われたと批判されてもおかしくありません。S660は一例に過ぎません。話題性だけを連ねても、新車開発の実力は養えません。

自動運転レベル3のレジェンドは生産終了

 そして「レジェンド」。この車名が出るのかと驚きますか。「シビック」など小型車メーカーのイメージを払拭するため、高級車市場へ挑んだセダンでしたが、トヨタ自動車の壁などに跳ね返され、2022年1月に生産終了しました。しかし、この車には世界で初めての凄い技術が注入されていました。自動運転レベル3です。、高速道路など一定の条件の下であれば、ドライバーはハンドルから手を離してシステムに運転操作を任せられるようになります。

 ホンダはHonda SENSING」と呼び、自動車に搭載するカメラの視野を100度まで広げ、人間の目と同等レベルに引き上げました。もちろん、運転を制御する半導体や人工知能を活用しており、人、自転車、クルマやバイクを見分け、危険な場合は回避行動します。2023年以降、視野角は360度に広げ、実車搭載する予定だそうです。

未来を先取りし、実現したのに・・・

 未来を先取りし、実現したのです。なぜ「レジェンド」を媒体に「ホンダの先進性」をアピールしなかったのか不思議でなりません。自動運転レベル3は2040年までに登場するEVには必須の技術です。世界の自動車メーカーの中でもベンツと並んでトップを走るホンダ・レジェンドをみせつけ、ホンダ車の可能性をもっと理解してもらえるチャンスでした

 N-BOX、フリードだけじゃない。「レジェンド」はまさに伝説としてこれからも生き続けたのに・・・。自動運転レベル3は儲からないとの憶測を聞きますが、実にもったいない。

「きょう、だれかを、うれしくできた?」は自問自答のよう

 ホンダが発するメッセージについて改めて確認しようと考え、ホームページを開きました。特別コンテンツとして「きょう、だれかを、うれしくできた?」のキャッチコピーが大きく掲げられ、説明文には「HONDAのハートは、いつも誰かに向かっている」とあります。安全技術などをテーマに人気アイドルグープのKing&Princeが動画で紹介しています。

 クルマの若者離れが進んでいます。「キンプリ」を起用する思いはわかるつもりです。ただ、何かがすれ違い、それが続いている気がします。これまでも「ホンダは誰かをうれしくできたのに、それを見逃してきた」のがホンダ自身のように思えてなりません。キンプリを媒体に自問自答しているようにしか思えません。

夢を自ら描けない自信喪失に?

 その違和感は、夢を自ら描けない自信喪失から生まれています。

 「EV、自動運転などやらなきゃいけないことが目の前に待ち構えている。自分自身の夢を追う余裕などはない」。

 ホンダ自身が自己否定を乗り越えて次代のホンダに生まれ変わる過程の中で、何を肯定し、否定するのか、そして自己陶酔するか。その選択に自信を失っているのです。

関連記事一覧

PAGE TOP