
ホンダが消える19 N-BOXはカローラに “らしさ”体現は経営かクルマか
ホンダの軽自動車「N-BOX」が2021年度の販売ランキングで第1位となりました。排気量や車内空間が軽を上回る普通車(登録車)の販売第1位のトヨタ自動車「ヤリス」との差はわずか120台。N-BOXは軽で7年連続で首位を守っており、全車種でも2019年度以来のトップです。もう乗用車市場で比類なきブランドとなりました。その強さはかつてのトヨタ「カローラ」と重なります。
ホンダがスズキとダイハツに勝つ姿は新鮮
強さを簡単に見てみましょう。N-BOXの販売打数は19万1534台。軽第2位のスズキ「スペーシア」と9万台も差が開いています。普通車のヤリスとは120台差ですが、ヤリスはシリーズ3車種の合計ですし、ホンダを軽く上回るトヨタの販売力を考慮すれば、購入者が車の使い勝手と価格の両面を高く評価して選択していることがわかります。
なにしろヤリスは昭和と平成を通じて販売首位の座を守り続けたカローラの後継を担うブランドです。トヨタはカローラの販売台数を稼ぐため、数多くの兄弟車種を追加して同名ブランドを冠した販売台数を上積みして販売第1位の座を守ってきました。ヤリスでも同じマーケティングを展開していますが、N-BOXを追い抜けませんでした。1位と2位の差は120台。3月31日の登録締め切り間際までトヨタとホンダはどんな販売を展開したのでしょうか。4月以降、走行距離が10キロも満たない「新古車」がトヨタ、ホンダそれぞれの販売店で並ぶかもしれません。
ホンダのN-BOXに戻ります。同車は軽の室内空間としては最大級で、安全装置など装備面の充実度で他の軽を圧倒しています。軽の王者は総合力で比較したら、スズキとダイハツ工業の2社です。商品力を単一車種の販売だけで比較し評価するのはちょっと無理と承知していますが、軽の王者スズキとダイハツの間に割って入るホンダの姿が正直、新鮮です。
ホンダは日本国内でトヨタ、日産自動車と競い、米国や中国など海外市場でも他国のメーカーに負けずに輝くブランドと思っていました。それがトヨタも叶わないスズキとダイハツの生産体制、価格競争力に対抗できる軽自動車を作り出したのです。軽自動車は現在、日本の新車販売の4割を占める国民車です。
かつてホンダ社内から「日本では小さなクルマしか売れない」と嘆く声が聞かれましたが、これから加速する電気自動車(EV)で主流になるコンパクトカーを開発するうえで、自信を持ってチャレンジできる成功体験です。
スーパーカブは1億台を超える国民車 その遺伝子をどう継承
ホンダはすでに「スーパーカブ」という国民車を世に送り出しています。1952年に50CCの2輪車カブを投入して以来70年間、100CCも加えた「スーパーカブ」に進化し、生産・販売は1億台超えています。他社が真似できない強さが二輪車の事業の土台を構築し、世界の「HONDA」へ飛躍できたのでした。アジアメーカーの攻勢などで厳しい時期もあったホンダの2輪車事業が息を吹き返したのは、スーパーカブというしっかりした資産があったからです。