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ホンダが消える24 車がアシモになる 電池・人工知能・センサーが走る

 自動車が他の産業と一緒に溶け込む瞬間を感じました。まさに「will be in the melting pot」。

LGとの電池工場建設から近未来を予測すると

 ホンダが韓国電池大手のLGエネルギーソルーションと米国で電気自動車用電池工場の建設を決めました。未来を託すEVの性能のカギを握るのは蓄電池。自らの手で確保するのは当然の投資戦略とみえます。しかし、過去の設備投資を振り返ってください。ホンダは1970年代から二輪車、四輪車の組み立て工場、エンジン工場を米国に投資し続けました。エンジンは車の心臓部。他から調達するわけにはいきません。

 一方で自動車部品の生産は日米の部品メーカーに任せ、米国製部品を現地調達してきました。車は3〜5万点の部品で構成、組み立てます。何か何まで自社生産できるわけではありません。自動車の品質、コストそれぞれで競争力を強化するためには、分業のメリットをフルに活用し、それぞれの分野で強い部品メーカーを選び、頼ってきました。自動車生産の歴史です。

心臓部がエンジンから電池へ

 蓄電池も、これまでの発想なら部品の一つです。エンジン車なら燃料タンクに相当します。米国の電気自動車メーカー、テスラを見てください。パナソニックやLGと大量調達する契約を結ぶ代わりに巨額投資を迫り、量産した電池を安く調達しています。EV向けの電池は自動車のコスト全体でかなりの比率を占めます。品質も発展途上です。専業メーカーに任せるのが経済原理に合っています。

 パナソニックや韓国、中国の電池メーカーもテスラはじめ世界のEV需要をにらみ、巨額投資を続けます。EVの市場拡大は始まったばかり。電池のシェアを早めに獲得して固定すれば、量産効果と技術で世界のEVメーカーとの取引・価格交渉で優位に立つこともできます。日本が先駆けて韓国が追い抜き、中国がさらに追撃する。この構図はかつての液晶テレビの投資競争とダブって見えます。パナソニックがテスラとの独占的な取引で先頭を切ったかにみえましたが、テスラの陽動作戦に振られ、投資負担に青息吐息の時がありました。こちらもパナソニックが10年ほど前に液晶などディスプレー投資で味わった苦境を思い出させました。

部品メーカーとの力関係も崩れる

 ここに来て自動車メーカーと部品メーカーの力関係が崩れ始めています。テスラはじめ自動車メーカーが電池の自社開発に舵を切り始めたのです。電池の生産能力、投資が拡大するにつれ、調達する自動車メーカーよりも供給する電池メーカーが新技術開発や価格交渉力を持ち、力関係が逆転し始めたからです。

 EV普及の一番の弱点は電池の性能です。ガソリン車に比べて走行距離が短いうえ、充電時間や施設など運転面のメンテナンスの不備にあります。その弱点は技術開発と量産効果で乗り越えられる可能性があります。燃料タンクはガソリンを満タンにする空間ですが、電池は進化できる部品です。電池の大きさや重量を抑えながら、走行、充電の性能が飛躍的に高まれば、EVの未来も一気に見えてきます。自動車投資の主役の座にはエンジンに代わって電池が着く時代が到来しました。

 自動車の開発はどう変わるのでしょうか。電気自動車はモーターを含めたパワーユニットと電池が主要部品になります。これらを制御するのは電子回路です。近い将来、インターネットやカメラなどのセンサーをフル装備した自動運転が実現するのは間違いありません。宇宙の人工衛星、車周辺の状況を探るカメラとセンサーなどから集まるナビゲーション情報を判断するのは人工知能です。すべての機能を存分に発揮させるエネルギーを供給するのが電池です。

新車開発は電池を中心に回り始める

 エンジンが中心だった新車開発が電池を中心に回り始めます。電池が製品の機能を決める。まるで家電製品の開発と同じです。電池性能、センサー機能を基盤に設計された運動能力が電気自動車の成否を握ります。

 ホンダは2040年にエンジンを搭載する車を全廃する方針です。世界的な評価を得ている走行性能にソニーとの提携をてこにセンサーによる情報解析能力を加え、テスラやトヨタ自動車、日産自動車などと一線を画せる電気自動車を生み出せる素地を持っています。

 すでにホンダとソニーは近未来の電気自動車をめざす技術基盤で世界で頭抜けています。そうです、ホンダは人間型ロボットのアシモ、ソニーはロボット犬のアイボです。いずれも、ロボット開発の常識を超える洗練された動きを実現しており、技術力のみならず開発の経験、培ったノウハウは電気自動車の開発に投射されるはずです。

ホンダはアシモ、ソニーはアイボを実用化済み

 自動車は外形は同じに見えても、中身は大きく変わります。まるでアニメ・映画や玩具で大人気を集める「トランスフォーマー」を想像してしまいます。ホンダでいえば、開発を終えたアシモが車に変形して走り回ります。頭部は人工知能と周囲を見極める画像センサー、背中には電池やパワーユニット、手足は俊敏に反応し、時速100キロ以上で疾走します。もちろん、ドライバーの人間と会話、あるいは映画や音楽を楽しみながら長距離のドライブを走り続けます。

 ホンダは2040年にエンジンを搭載する車を全廃する方針です。あと20年もありません。ソニーとの提携でハードウエアの技術基盤を整えています。あとはアップルと提携してネットや情報セキュリティー技術を補えれば、アシモが人間と一緒に移動する”自動車”は夢物語ではありません。

 電池の投資はテスラ、トヨタなども積極的に進めています。必然的に自動車の家電化の道を走ります。自動車がすべて電気自動車になると考えていません。EV、ガソリン・ディーゼル車、ハイブリッド車が走り回り続けます。しかし、EVの進化に合わせて、自動車産業の枠組みは取り払われ、移動する機械が進化していく過程を目にするはすです。

will be in the melting potが始まった

 「From to ZERO」では「私の産業史」という視点から1980年代からの自動車の提携・合併の歴史を取り上げています。初回の副題に「will be in the melting pot」とつけていました。近未来の自動車産業は電機などと融合して、沸騰するるつぼのなかで溶解してしまう様をイメージしてもらえればと考えました。予想通り、産業の溶解が始まってきました。

 

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