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ホンダが消える18)ソニーだけなら「おもしろいEV」空を飛ぶにはアップルの力も

 ホンダとソニーが2022年3月4日、電気自動車(EV)で提携すると発表しました。共同出資会社を設立して2025年からEVを発売します。連載「ホンダが消える」では昨年10月にホンダの未来を再構築するベストシナリオとしてソニーとの提携を予測しました。見事、的中しました。

 長年の企業取材経験、しかもホンダもソニーも30年以上注視し続けていましたから、両社の気質は理解していると密かに自信を持っていました。そう的外れでもない想定として遊び気分もあって、第一稿後も新たな動きを踏まえて「ソニー」「アップル」との提携の可能性を何本か描いてみました。

 宝くじメガビックの当選気分とまでいきませんが、想定内の範囲でソニー提携が実現し、まだボケていないことが自覚できてちょっとうれしかったです。両社の社長による記者会見をチェックすると、「ホンダが消える」で指摘した内容が多く、驚きがなかったのが逆に残念です。

ホンダ、ソニーでは補えないピースをアップルが埋める

 ホンダとソニーの提携はこれで完結するわけではありません。3月4日の提携発表を子細に読み込むと、新しいEVモデルの理想形を世に送り出すためにまだ足りないピースに気づくはずです。この2社の提携の枠内ではちょっと楽しい電気モビリティができあがるだけです。

 ホンダの三部敏弘社長、ソニーの吉田憲一郎社長は記者会見で明快に述べています。ホンダは車の開発・生産技術、ソニーは電子技術とエンターテイメントの経験をそれぞれ持ち寄り、どこも創り得ないEVを誕生させる考えです。ホンダとソニーがお互いの強さと弱さを自覚して、補う目的で手を結ぶことにしたわけですが、裏返してみればホンダとソニーの能力で開発、生産できるEVにとどまることを意味します。

21世紀のEVは3次元の移動体、高度なネット・情報処理の経験と技術が不可欠

 21世紀のEVとして求められるのは、3次元空間を自動運転できる移動体です。地上の自動車道を走り、時には地上を離れて空を飛ぶでしょう。現在の自動車道のルートに従って走るだけで終わりません。地上を離れて一定の高さを保ちながら空間を移動する能力が必要です。

 3次元(3D)の空間をナビゲーションするためには、人工衛星と位置情報のやりとり、並走する周囲の車との距離感など人間の能力を超える情報処理能力が求められます。3次元空間を移動するEVはインターネットと人工知能を内蔵し、しかも誤作動やハッキングなどを防止する高度なセキュリティーが不可欠です。

 ソニーはゲームやパソコン、スマーフォンなどの事業を通じてインターネットや電子関連技術について豊富な経験を持っています。しかし、グーグルやアップルなどが構築した世界の情報インフラに対抗できるほどではありません。

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