
ホンダが消える 17) ソニーはやっぱり自動車メーカーのパートナーを求めている
2022年2月2日、「20220202」と数字すべてがゼロと2だけで表現される日、ソニーグループが決算説明会を開き、十時裕樹副社長兼CFOは「(電気自動車の)VISION-Sの市場投入は、検討することを発表しただけ。EV(電気自動車)市場への参入を決定したわけではない」と強調しました。
この会見で興味深いのは電気自動車(EV)への取り組みがまだ検討段階であると対外的に発信したことです。その意は、単独で参入しないとの意思表明と受け止めます。
好決算で攻めの経営戦略を示すも、EVは慎重姿勢に
決算内容は過去最高の利益です。2022年3月期の連結営業利益(国際会計基準)は前期比26%増の1兆2000億円と従来予想の1兆400億円から2000億円近く上乗せする見通しです。ソニーはこれまで上方修正を繰り返しており、これで3回目。吉田憲一郎会長兼社長が副社長時代から先導する経営改革が成功を収めています。
株価も1万2000円台。10年前の2012年1月ごろは1000円台をうろうろしていたのですから、10倍以上も上昇しています。確かにあのころのソニーは何をやってもダメ。もう目も当てられなかったのですからしょうがありません。
過去最高の好決算ですから、経営戦略は攻めの姿勢を明確に打ち出しました。1月末には米国のゲームソフト会社を約4100億円で買収すると発表しています。ところが売上高、利益をさらに上乗せしようと前のめりになっているにもかかわらず、電気自動車の計画についてはちょっとニュアンスが後ろ向きになりました。
ソニーは1月に米国で開催したCESで春には電気自動車などを扱う新会社「ソニーモビリティ」を設立することを発表しています。自動車部品メーカーの力を借りながら、単独でも完成車を創り上げる勢いをみせしました。しかし、十時副社長は具体的な設立時期を明言せず、パートナーとして連携・提携を進める考えを示しました。投資面でもソニーが単独で工場を建設したり、バッテリーなど主要部品を開発、生産することはないようです。
予想通りです。ソニーは技術に精通し、大ヒットする新製品を世に送り出した経験を豊富に持っています。「開発と事業化の難しさ」「アイデアと実用化の違い」をしっかりと理解しており、開発から事業化へ移行する際の障壁の厚さと高さを熟知する会社です。かつてゲーム用半導体投資で大やけどしたこともあります。
新規事業を成功させるためには、収穫するまでの時間と人材が十分に必要であることを痛いほど知っているのです。映画事業を思い出してください。今回の過去最高の好決算で大きく寄与した映画事業は「スパイダーマン」の世界的大ヒットで生み出しました。興行成績は2000億円を超えており、ソニー・ピクチャーズとして過去最大だそうです。しかし、映画事業は順風満帆だったわけではありません。