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日産とセブン&アイ、社長交代しても自力再建の道筋は見えない

 日産自動車の内田誠社長、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長が退任する方向です。ともに日本を代表する世界企業ですが、まだまだ飛躍する実力を持ちながらも業績は目を覆う惨状に。なにしろ窮地を脱する自力再建策を打ち出せないのですから、社長の経営手腕に対する不信が増幅するのは当然です。早期の社長退任は避けられないとみていました。ただ、社長交代したからといって浮揚するわけではありません。日産、セブン&アイに潜む病巣はかなり深刻です。

社長の経営手腕に不信

 日産は3月6日に開催する指名委員会で内田社長の退任を決める見通しだそうです。指名委員会は委員長が社外取締役4人とルノー会長の5人で構成しています。ホンダとの経営統合を白紙に戻した事態について、内田社長の経営判断を疑問視する意見が強く、2020年2月に就任した内田社長の再任を認めない方針だそうです。

 指名委員会の委員長はみずほ信託銀行の副社長を務めた永井素夫氏。日産の主力銀行であるみずほ銀行はホンダとの経営統合を後押していただけに不信感が募っているうえ、協議終了後も自立再建策を示せない現状に苦慮しているようです。

業績不信を打開できるか

 日産の2025年3月期決算は純損益が4年ぶりに800億円の赤字に陥る見通しです。2024年9月中間期で事実上、赤字の窮地に立った後、内田社長はホンダとの経営統合を一気に進めて経営再建する思惑でしたが、ホンダの子会社化提案を前に自らすべてが白紙に戻しました。

 といっても、来期の2026年3月期で黒字転換する見通しは全く立っていません。世界の従業員の解雇や海外工場の閉鎖などを計画していますが、本当に実行できるのかすら危ぶまれているのが現状です。

 セブン&アイも先行きが見えません。日本のコンビニエンス業界で「一人負け」と呼ばれるほど「セブンイレブン」の収益は低下しています。株価低迷は企業価値の低下に直結、当然のように外資の買収対象に。案の定、2024年8月にカナダのコンビニ大手から買収提案を受けました。

 対抗策として創業家の伊藤興業が中心になってMBO(経営陣による企業買収)をぶち上げたものの、9兆円という巨額の買収資金が準備できず、2月に入って頓挫。MBOに参画するとみられた伊藤忠商事が見送ったことが引き金となりました。傘下のコンビニ「ファミリマート」との相乗効果は期待できないというのが理由ですが、セブンイレブンの経営状況を精査した結果が予想を上回る惨状だったのが主因でしょう。

変革と挑戦に向けて組織を再構築できるか

 セブン&アイの井阪社長はセブンイレブン創業者の鈴木敏文氏の弟子です。ところが、2016年に経営の全権を握っていた鈴木会長を追放し、代わって経営を率いましたが、絶好調だったコンビニ業界の潮目の変化を読めず、業績は右肩下がりへ。カナダからの買収提案に対抗するMBOが雲散霧消したにもかかわらず、新たな再建策を提示できません。

 日産の内田社長と同様、自力再建より他人に頼る経営を選んでいるようでは、社長の責務はもはや果たせないと誰でも考えるでしょう。

 もっとも、日産もセブン&アイも社長交代後の再建シナリオは不明です。両社とも海外企業による資本提携・買収の可能性は残されています。自動車も小売業も資本主義の世界で生きているのですから、その結末が海外企業の買収となっても何の不満はありません

 自力再建をめざすなら、大胆な発想が必要です。今、日産、セブン&アイに欲しいのは、再び成長軌道に戻るという意思力です。不甲斐ない経営者の陰に隠れてしまっていますが、日産とセブン&アイは事業構造、組織力が崩壊しているわけではありません。このまま経営破綻に向かう企業ではありません。

 欠けているのは、企業としての危機感と改革力です。「烏合の衆」とは言いたくありませんが、中堅幹部、社員全員が「変革と挑戦」の思いが共有できているのでしょうか。次善の策として選んだ経営者では元の木阿弥です。将来を託したいと思える経営者を起用すると共に、新たな企業連合による座組みを仕立てぐらいのサプライズが欲しいです。

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