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ホンダが消える5) 世代交代で”らしさ”を再現できるか

 ホンダが55歳以上の社員を対象に募った早期退職に2000人を超えるベテラン社員が応募したそうです。2021年8月6日付の日本経済新聞と読売新聞の2紙が伝えています。記事によると、早期退職は自動車の電動化や自動運転へ事業の主軸を移すため、中高年層に偏った社員構成を改め、若い技術者を起用して世代交代を加速するのが狙いだそうです。応募者数は国内の正社員の約5%を占めます。退職者の詳細がわかりませんが、応募の半数は60歳未満だそうです。開発・生産・販売の軸となる人材が大量に流出するのは確実です。狙い通りに内燃機関エンジンに頼った企業体質の意識改革に成功できるのか、あるいはベテラン社員がホンダの将来を見切って新しい舞台へ向かって離れただけなのか。今回の大量退職にはっきり見通せない怖さを感じます。

 日経・読売の記事によると、ホンダは早期退職制度を2011年に廃止しましたが、2020年12月に再導入する考えを示しており、2021年4月に10年ぶりに募集しました。今回は55歳以上64歳未満が対象で、退職金は最大3年分の賃金を上乗せするそうです。当初は1000人程度と予想していたそうですから、2倍以上も上回りました。ホンダの日本国内の従業員数は子会社を含めて約4万人です。ホンダは22022年3月期に退職金の割増費用を数百億円程度計上するようです。

 2021年4月に就任した三部敏弘社長は6月の株主総会で「カーボンニュートラルに経営資源を集中させる」と表明し、2040年までにエンジン車の新車販売をやめて電気自動車(EV)など二酸化炭素を排出しないクルマだけにする考えを明らかにしています。三部社長は2ヶ月前の4月就任の記者会見で自らのホンダ像を明らかにしています。

「Honda があってよかった、Hondaなら、きっとやってくれると 皆さまから存在を期待される企業であり続けたい。これが私たちが目指す姿です

 予想の2倍を超える早期退職者が応募した背景を考える際に大事なキーワードは、この「Hondaらしさ」にある気がします。ホンダファンなら誰しもが口にし、期待するフレーズが繰り返し使われています。

では、ホンダらしさとはどんなものでしょうか。連載第1回目で引用した「社史」で本田宗一郎社長は「本田ズバリ」という項目で次のように説明しています。まず「会社のゆくべき最後の、私の最も希望するところのもの、又実現しなければならないものを決意して、ホンダ、ズバリを考えて見る」と前置きした後、受け継いでやってもらわなければいけないと続けるのは「世界的なオートバイメーカーとなる目的を達成することだ」。当時の日本経済の状況を加味すれば、オートバイとは二輪車そのものを指すのではなく、優秀な製品を開発・生産する世界一の技術力を確立することと理解して良いと思います。

大事なのは次からです。日本は優秀な人材がいるのに世界的な製品を送り出せないのは会社そのものがダメだからと説明します。「その会社とは縄張り意識が強く、縦の命令系統、言い換えれば出世系統に敏感で、ライバル視する部署や人材には闘争的な感情を持って叩き潰す」「頭脳を働かせ活躍すべき最も大事な青年時代をこれに費やして後はその惰力で壮年時代を暮らすことが多すぎはしないだろうか」と日本企業の組織が抱える病巣を指摘しています。そして「ホンダを日本重工業の世界進出への突破口としたい」と夢を語ります。

 ちなみに「社史」が発刊された創業7年目の従業員数は2500人。今回の早期退職の応募者と同数の人材がズボッと抜けた印象です。ホンダの創業期の活力が脱落したインパクトはやはり計り知れないものでしょう。

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