大内宿、白川郷との既視感に驚き、名物「ねぎそば」の味は長ネギの苦さだけが残る

 そんなに驚きを覚えなかったことに驚きしました。既視感があるのです。「もう何度も見たなあ〜」。そんな想いを反芻する風景でした。

「ねぎそば」をめざして

  福島県の大内宿です。東北は毎年、墓参りを兼ねてクルマでほぼ一周しているので、福島県内を通るたびにいつかは訪れたいと思っていました。なにしろ超有名な観光地です。江戸時代の宿場町の家並みがそのまま残る風景は、テレビなどでよく紹介されていましたし、長ネギ一本を箸代わりに食べる名物の「ねぎそば」は、ネギ好きとしてはぜひ挑戦しなきゃと考えていましたから。 

大内ダム

 今回の東北旅行は2泊3日のドライブ旅行です。大内宿には山形県米沢市から峠道を抜けて向かいました。そろそろ大内宿が近いなあと思ったら、大内ダムが出迎えてくれました。有名なダムがあることを忘れていました。ロックフィルダムの美しさと雄大さ。写真を撮影します。

 ダムを後にすれば、もう大内宿。あと何キロという案内板が増えてきます。もうクルマの運転席から見える景色は速度計でも案内板でもありません。「そばが絡まっている長ネギ一本」。ちょうどお昼前だったので、唾液も出てきます。

 そろそろと思ったら、広い駐車場が目の前に現れました。大型バスが何台もずらりと連なり、団体客が並んで降りてきます。個人のクルマも多く、第1駐車場?は満車状態。「今日は平日なのに・・・」と驚きながら、誘導された他の駐車場へ。クルマを降りた後、駐車場の案内担当の方に「平日でもこんなに混んでいるんですか」と尋ねたら、「月曜と金曜はかならず混んでいる。だけど、今日は火曜日だからねえ〜」と係の人も首を傾げています。あとでようやく気づきましたが、福島県観光で「火曜日」は重要なキーワードでした。

外国の観光客が多く立ち寄っています

 大内宿の有名な茅葺き屋根が連なって見えてきました。テレビで見た同じ街並みです。当たり前ですね。茅葺きが輝く家並みが旧下野街道脇にに右左20軒以上が連なります。茅葺き、柱や梁などの手入れが行き届いしているので、まるで映画のセットを眺めているようです。宿場町の入り口に当たる家の前には「大内宿」という籠樽が並んでいました。福島県はおいしい日本酒が多いので、「大内宿」と並んだ籠樽にはかなり魅かれましたが、この後のドライブを考えたら諦めざるを得ません。眼福として満喫します。

大内宿の籠樽

 訪れる観光客の大半が私と同じことを考えているようです。両脇を固める茅葺きの家々には「ねぎそば」の看板がすぐに目に着くように掲げられています。「ねぎそば、ありますよ〜、すぐに座れます」という掛け声も聞こえてきます。

 両脇に並ぶ家はおみやげ屋さんか食堂がほとんど。民宿もありました。1泊すれば観光客の姿も減る夕方、涼みながら「日本酒を飲んだら、うまいだろうなあ」と再びお酒の妄想が浮かびます。旧街道筋から外れると、洗濯物が干す茅葺きの家も見かけましたから、観光客が帰った後はどんな風景になるのだろう。そんな興味も湧きましたが、本日はとにかくねぎそばを食べよう。

 といっても、観光で訪れていますから必須課目は押さえます。江戸時代の問屋本陣を再建した「大内宿町並み展示館」は、大名が宿泊しただけあって柱も梁も凄い。受付の方は観光客を囲炉裏に集め、一生懸命に説明していました。「なぜこの町並みが残ったと思いますか?この地域が貧しかったからです」とかなりシリアスなお話を明るく披露して、聞く人の心を掴んでいました。手練れです。

町並み展示館

観光客のメインは外国人?!

 おみやげ屋さん、食堂も一軒、一軒訪ねました。ふと気づきました。おみやげ品が見かけたものが多い。岐阜県の白川郷と同じような品物やお菓子が並んでいます。もちろん、名称やデザインは違うのですが、まるで観光客が想像する「日本のふるさと」のイメージに合わせておみやげ品を揃えているかのようです。周囲はアジアを中心に海外から訪れた観光客がほとんど。今年1、2月のスキー場で経験したように観光地のメインターゲットは外国人の時代なのでしょう。

 だからなのでしょうか。「ねぎそば」を食べるために勇んで入った食堂では、蕎麦の味よりも気まずさだけが残ってしまいました。ちょうどお昼時もあってスタッフさんは大忙し。中国語を話すアジアの観光客のみなさんが注文し、その注文したものの配膳がとても慌ただしく、食堂全体が落ち着かない。日本語と中国語による意思疎通が難しいこともあって、配膳するスタッフさんも語気が荒くなりがち。「抹茶頼んだ人、抹茶、マッチャ、グリーンティー」と一語ごとに音声が拡大。せっかくコロナ禍が収束して国内外から観光客が集まり、日本の観光産業も息を吹き返しているのに・・・と外野席から余計な心配をしてしまいます。

 爽やかだったのは、旧街道を吹き抜ける風。お会計の時もお昼の忙しさで疲れていたせいか、無言でお金の手渡しだけ。「観光産業はサービス業。一度印象を悪くすると、2度目は来ないのに」と再びつまらない心配も。そういえば、福島県内を回ると、定休日を火曜日に設定しているお店が多かった。大内宿を訪れた日が火曜日だったこともあって、お休みのお店が多かった。その火曜日に開いているお店はいつも以上に忙しかったのでしょう。

 ねぎそばの味はどうだったかなあ。迎えに座った若い二人が長ネギは箸代わりだからといって、そばを食べた後、そのままネギをどんぶりに載せたまま席を離れたのが、一番目に焼き付いています。

大内宿を守る住民憲章

 大内宿全体を望む風景が見渡せる観音様や弁天様、お寺さんに立つと、手入れが行き届いた宿場町の美しさに惚れ、「やっぱり訪れてよかった」と思います。展示館の受付の方が言っていました。「宿場町の茅葺きが残ったのも、なんでもうまくできるわけじゃないから。取り残された結果だよ」。

 大内宿を離れる時、掲げられた「大内宿を守る住民憲章」を読んで出発しました。交通の不便な地域に住み、その町並みを守り続ける。白川郷で、そして今回の大内宿でも感じた住民のみなさんが背負う重さを忘れるわけには行きません。

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