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元谷さん、株式上場すれば「APA PRIDE」はもっと輝く

 アパホテルが快進撃しています。すでに日本最大のホテルチェーンとなっていますが、創業者の元谷外志雄さんは「圧倒的なナンバーワン」を目指しており、アパホテルの開店ラッシュは止まりません。テレビCMも多く、「APA(アパ)」の響きが耳の鼓膜に焼き付いています。

圧倒的な日本一をめざす

 経営の指標を見る限り、絶好調としか表現できません。2024年11月期は過去最高を記録する数字がずらり。売上高は前期比18・2%増の2259億7000万円、営業利益は44・9%増の821億1400万円、純利益は50・8%増の562億8400万円。営業利益率は36・3%。直営やフランチャイズ(FC)などホテルの経営方式が異なるので単縦比較はできませんが、大手チェーンの多くは10〜20%台ですから、頭抜けた高収益を実現しています。

 幸運にも1980年代、創業者の元谷外志雄さんを新聞記者としてたびたび取材した経験があります。アパホテル第1号のオープンも目撃しています。金沢市片町にオープンしたのが1984年12月。片町は金沢市の中心街で、昼も夜も多くの人で賑わいます。ホテル第1号は片町といっても、住所は池田町。ほんのちょっとだけ片町交差点から外れていますが、気持ちは金沢市のど真ん中、いや金沢市を軸にした北陸経済界にその存在感を知らしめる心意気でした。

 本谷さんは異彩を放つ経営者でした。出身は石川県小松市。建設機械の世界企業「コマツ」が創業するなど進取の気質が強く、世界に打って出る経営者を輩出しています。本谷さんも高校を卒業後、地元の小松信金に入り、注文住宅販売の信金開発を創業します。アパホテルの前身です。

 初めてお会いしたのは創業から10年過ぎたころ。注文住宅、分譲マンションを業容を広げ、ホテルに進出しました。

 元手は自身の才能と気持ちです。いかにも本谷さんらしいと思ったのは2010年から開始した経営戦略。日本一が目標だけに「頂上戦略」と銘打っており、まるで映画「仁義なき戦い」を彷彿させます。わかりやすいイメージを社内外に訴え、アパホテルの存在感も強調する戦術なのでしょう。

 アパホテルのHPによると、計画を含めるとグループで907ホテル、客室は13万室に迫るそうです。2027年3月末までに15万室を達成し、圧倒的なナンバーワンチェーンになる目標です。創業者の元谷外志雄さんは経済誌などで「やるからには日本一になりたいものでしょう。うちは創業から53年、1回の赤字も出さずにずっと利益を出している」と語っています。

強さの源泉はワンオーナー 

 その強さは「私がワンオーナーで、世の中の状況を先読みしながら1人で即座に経営判断を下せたことが大きい」と話す通り、元谷会長の剛腕が源泉です。アパホテルチェーンの8割は、グループで所有して運営。ホテルの客室、サービスに対する品質に責任を持つことでお客様満足度を高め、それがアパブランドの知名度を広めてリピーターを増やす戦略です。「ヒルトンやシェラトン、ザ・リッツ・カールトンなど海外の有名ホテルチェーンは、ブランドを貸しているだけ」と言い切ります。

 元々、祖業が不動産開発が軸ですから、事業内容はホテル以外でも拡大しています。例えば2023年12月には大江戸温泉の資産運用会社を買収しました。投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、賃貸料収入や売却益などの収益を分配する金融ビジネスを育てる狙いです。全国トップクラスのホテルチェーンとして多くの不動産を抱えていますから、新たな収益源の柱として不動産を金融商品を育てるのは自然の流れです。 

 先行きに懸念はないのでしょうか。アパホテルの経営規模は元谷会長の剛腕を持ってしても身の丈を超えそうです。そろそろ次代の経営戦略を考える時ではないでしょうか。世界有数のホテルチェーンである米ヒルトンは2000年代に入って収益低迷に苦しむ時もありました。2007年に投資ファンドに買収されます。非上場となって経営再建に取り組み、2013年に再上場します。

 ヒルトンなどと覚悟が違う!と反論するのはわかっています。しかし、創業家が支配したヒルトンが低迷した道を歩む可能性は否定できません。

サッカー日本代表と一体感をアピール

 強さの源泉であるワンマン経営にも限界があります。どうしても周囲には異論を唱える人材が減ってしまい、創業家の威光で経営が進み、明晰な経営判断が鈍る時もあります。株式公開すれば、物の言う株主らの注文に気を使うのは面倒という思いもあるでしょうが、財務内容はじめ経営の現況を明らかにして多くの株主らの視線に応えられるアパホテルの新しい強さを誇示してほしい。

 アパホテルはサッカーの日本代表を支援しており、HPでは「JAPAN PRIDE」の中から「APA」を抜き出して一体感をアピールしています。W杯優勝を狙うようにアパホテルが世界で通用するホテルブランドを目指している気持ちなのでしょう。ヒルトンなどを上回る強靭な経営に到達するためにも株式公開を検討する時です。「APA PIRDE」を築くのは今です。

◆ 写真は「金沢市池田町にあるアパホテル第1号」 ホームページから引用しました。

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