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5年前「クビにして」と宣言した内田社長の沈黙が、日産の惨状を饒舌に語る

 後味が悪い定時株主総会が続きました。フジ・メディアホールディングスは投資ファンドのダルトンと取締役選任を巡って争っていましたが、総会では堀江貴文氏らが加わって場外乱闘気味に。トヨタ自動車はコーポレートガバナンスの改革と称して社外取締役が半数を占める経営陣を披露しましたが、社外とは名ばかりの身内同然の間柄。総会では祖業の豊田自動織機製作所の株式非公開化など肝心のテーマが議論されず、シャンシャンで終了。最近の株主総会では物言う株主が相次いで登場していますが、機関投資家がパフォーマンスを演じているのかと勘違いしちゃします。

総会本来の機能を果たした日産

 その中で株主総会本来の機能を果たしたといえるのは日産自動車でした。決して皮肉ではありません。総会では株主のみなさんが社外取締役を含めて経営責任に対する自覚の無さを相次いで指摘し、改めて日産が抱える深刻な病巣を明らかになりました。新経営陣のみならずメインバンクなど日産の経営再建に携わる利害関係者が文字通り、褌を締め直す覚悟を持ってくれれば幸いですが、果たしてどうか。

 日産の株主総会は、昨年よりも7割も多い1071人の株主が参加し、所要時間は1時間以上も長い3時間を超えたそうです。会社が提案したイバン・エスピノーサ社長ら4人の新しい取締役の選任、社外取締役8人の再任が承認されました。新経営陣は、国内外の工場閉鎖や大幅な人員削減など再び浮揚する施策に取り組みますが、株主から見ればこれまで不甲斐ない経営に終始してきた日産の経営を信頼できるわけがありません。

 新聞やネットメディアによると、エスピノーサ社長は6700億円を超える巨額赤字を計上した経営悪化に対し陳謝した後、追浜工場(神奈川県)などの主要工場の閉鎖を念頭に「痛みを伴い、国内外の多くの地域社会に影響する。残念だが、日産を守るためにはやるしかない」と述べたそうです。

 「はい、わかりました」と納得できる株主は少ないでしょう。追浜工場は横須賀市など地域経済を支えてきただけに、経営赤字を招いた前社長の内田誠氏の経営責任を「町が吹っ飛ぶ」という厳しい表現で問う声も出たそうです。

 ホンダと経営統合を打ち出しながら、結局は「バカにしている」という訳もわからない理由で雲散霧消してしまった稚拙な経営判断もありました。にもかかわらず、内田氏には4億円の報酬が支払われます。内田社長を支え今回退任する役員らにも億円単位の報酬が支払われることにも納得できないでしょう。

内田氏は沈黙のまま、退場

 内田氏は総会の壇上にいたものの、一言も答えなかったそうです。なんとも情けない経営者ですね。

 5年前を思い出してください。内田氏は2020年2月の臨時株主総会で社長就任が認められましたが、その時の総会でも株主から強い批判を浴び、「経営に改善が見えなければ、すぐに私をクビにしてください」と宣言した人物です。株主総会で「クビしてください」と軽々しく発言すること自体、社長としての器の軽さを感じたものです。ただ、これまでの無策を反省してクビを覚悟で日産再建に取り組む姿勢を示したことは評価したいと無理やり思ったのものです。

 それがいざクビになる時、沈黙し続けるとは・・・。株主のみなさんと同様、裏切られた思いです。株主総会で見栄を切ったら、最後まで貫き通して欲しかった。4億円ももらうなら、できるでしょう。

 内田氏の沈黙は日産が経営再建できるかの答を示しています。クビ覚悟で経営再建策を披露しても、所詮手に余る処方箋でした。周囲からのダメ出しを避けるため、できもしない世界販売計画を打ち上げ、それでも間に合わないならホンダとの経営統合を持ち出して、株主や主力銀行などからの非難の声を抑える。しかし、最初から実現できないことはわかっていたので、最後は口を一文字にして逃げるだけ。自身は終生、楽して生活できる資産が確保済みですから、あとは避難の声が静まるまで待つだけ。

退任する取締役4人、社外取締役も同罪

 内田氏だけではありません。今回退任する副社長3人も同罪です。課長時代から知っている人物がいますが、上司の言い分に常に「はい」と答えるヒラメ社員でした。英語ができるというだけでカルロス・ゴーン時代を生き抜き、内田社長も支えました。彼らも億円単位の報酬をもらい、退任します。なんですか、これは!!

 再任する社外取締役も同罪です。無為無策の内田社長を5年間、取締役会を中心に監督してきた立場です。まるで底抜けしたかのような赤字の池に陥った日産の経営をなぜ修正できなかったのか。それが、どうしてすんなりと再任されるのか。

 内田氏の沈黙は巨額赤字を繰り返す日産の惨状を饒舌に語っているのです。日産はもう再建できないことを。だから、沈黙するしかないのです。

  諦めるわけにはいきません。まだ望みはあります。沈黙する彼らに日産の将来を見通せるわけがありません。巨額赤字を招いた無能な経営者たちなのですから。きっと突破口があります。

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