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下請けいじめ ⑦ 経産省の行政指導か 自動車、鉄鋼、石油のトップが最上位評価にずらり

 中小企業庁の「下請けいじめ」調査で驚いたのは、自動車、鉄鋼、石油などの業界1位企業が最上位評価でずらりと名を連ねたことです。経済産業省の中小企業庁が2021年9月時点の取引状況を公表して以来4年間、調査結果を見てきましたが、有名企業であっても評価に凸凹がありました。長年の商習慣で下請け企業が不当な交渉、価格を強いられるのが当たり前でした。それがまるで白黒のコマが切り替わるオセロのようです。

長年の悪弊が改善へ

  急転する背景に何があったのか。政府が下請けいじめの改善に努めるのは、不利な価格交渉を強いられる中小企業の収益低迷が30年間も年収が増えず、日本経済が足踏みする主因となっているからです。といっても、ここまで激変するには強烈な後押しが必須です。昭和の通商産業省の幻影がよみがえります。かつての行政指導が復活したのではないでしょうか。

 今回の調査は2025年3月現在の取引状況を全国30万社を対象にしており、このうち6万6000社が回答しました。価格交渉、価格転嫁、支払い条件の3項目について下請け企業が発注企業を10点満点で採点、平均点を4段階で分類しました。各項目で7点以上がア、7点未満4点以上がイ、4点未満0点以上がウ、0点未満がエと表記しています。

 中小企業庁が公表した企業は446社。このうち3項目すべて最上位の評価を得た企業は58社。全体の13%を占めます。

トヨタ、日鉄、日立、エネオス・・・

 産業別にみると、基幹産業の自動車はトヨタ自動車、ホンダ、スズキ、日野自動車、いすゞ自動車、スバル。鉄鋼では日本製鉄、神戸製鋼所、大同特殊鋼。電機は日立製作所、沖電気工業。機械は小松製作所、クボタ。化学は信越化学、三菱ケミカル、住友化学、石油はエネオス、食品はマルハニチロ、運輸はJR東日本、電力は北海道電力、北陸電力。

 それぞれの産業を主導するトップが最上位で右倣へしたかのようです。事業規模が突出して大きい企業ばかりですから、系列・グループ企業も右倣へします。

 トヨタ系列をみてください。トヨタ直系のグループ企業8社が並びます。トヨタ車体、トヨタ自動車東日本、豊田通商、豊通マシナリー、ジェイテクト、愛三工業、東海理化電機製作所、フタバ産業。自動車事業などで歴史的にも深い取引企業として日本碍子、日本特殊陶業の2社。

 トヨタと資本関係がある自動車メーカーもさらに加えれば、スバル、いすゞ自動車、スズキ、日野自動車の4社。ちょっと強引ですが、「トヨタ」繋がりでみると、58社のうち14社が占めます。トヨタの力、恐るべし。言葉がありません。

 日立系では日立系の日立産業システム、日立パワーソリューションズ。神戸製鋼ではコベルコ建機が最上位評価にそれぞれ名を連ねます。

 中小企業庁がこの4年間、公表した下請けいじめの企業リストは着実に効果を上げています。過去、取引する中小企業から低い評価を下されたソフトバンク、ヤマト運輸など有名企業の多くは姿勢を改め、取引関係を改善しています。

 中小企業庁と並んで公正取引委員会の役割も見落とすわけにはいきません。優位な地位を利用して不当な契約行為をしていると判断し、独占禁止法違反として積極的に摘発しており、「下請けいじめ」と名指しされた企業の評判は著しく低下しています。

政府だけでなく国民の監視も厳しく

 ただ、今回の最上位評価に並ぶ企業名をみると、もっと強い意思というか政治力を感じます。

 昭和の通商産業省の幻影が飛び回っているのです。戦後の日本経済を復興するため、産業界に設備投資や生産計画を指示しました。いわゆゆ行政指導です。法的な拘束力はなく、従うか従わないかは企業の判断に任されていますが、当時の通産省に歯向かう企業はありません。

 現在の経産省が下請けいじめの現場に口出すとは考えていません。むしろ、経産省は背中を押すというよりも日本経済を主導するリーダーに実行の確約を迫った勢いを感じます。

 もちろん、多くの国民が関心を持って大企業の姿勢を監視する力は最も大きいと考えています。厳しい視線を肌で感じるからこそ、経団連会長を輩出した日本製鉄はじめ住友化学、トヨタ自動車などが大きく改善しているのです。

 大きな流れになってほしいです。

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