• HOME
  • 記事
  • 食・彩光
  • 函館産ウニが700万円!松前の岩のり10枚1万円!北海道の食が壊れないか、心配です。

函館産ウニが700万円!松前の岩のり10枚1万円!北海道の食が壊れないか、心配です。

「うわあ、700万円のウニってあるの!」。もう驚きしかないです。2025年の年明け、東京・豊洲市場での初競りで、北海道函館市で水揚げされたムラサキウニが1枚700万円の最高値で落札されました。過去の最高値は1年前の24年の150万円。4倍以上の高値が付いたことになります。ウニ1枚は50グラムだそうですから、1グラムで14万円。一口で飲み込んじゃう量です。年明けの豊洲での初競りはマグロが有名ですが、すでに高嶺の花の存在であるウニもマグロに続くのか、ちょっと悲しくなったニュースでした。

小学生の頃は潜って獲ったウニ

 ウニに驚いていたら、函館市と同じ北海道南部の西端、松前町の岩のりが10枚1万円の値がつくこともあると北海道新聞が伝えていました。松前町の道の駅では8000円程度で売られているそうですが、日本海と津軽海峡の潮流に揉まれて育った海苔の味は他の地域とは違い、産地指名買いもあって1万円超えもあるそうです。「えっ」と思ってネット通販でみたら、「5枚で1万円」という商品もありました。頭が「ウニ」になるというか、「岩のり」になるというか食の値段がよくわからなくなりそうです。

 実は小学生の頃、函館市の津軽海峡に面した海岸で岩場から飛び込んでムラサキウニを獲って食べていました。700万円の値が付いたウニの産地は同じ函館市でも市内中心部から遥か遠い地域ですが、それでも同じ函館市。夏の海でも寒いですが、水中メガネであらかじめ狙いを定めて潜り、ムラサキウニを1個、掴みます。

岩場に戻ったら、ナイフか小石で黒くて細長いトゲトゲに注意してウニの殻を壊し、オレンジ色の卵巣を取り出します。もちろん、ひと口で飲み込みます。海水の塩味が混じっているので、思わず「うめえ〜」。当時は沿岸の漁業権が今ほど厳しくなかったせいか、子供たちが遊びながらウニなどを獲ることは怒られていませんでした。

 もう10年以上も前に函館市の同じ岩場を訪れたら、「立ち入り禁止」の看板がありました。津軽海峡の強い波が押し寄せる岩場なので、確かに危険といえば危険ですが、60年ほど前は子どもの遊び場。一番高い先っぽから飛び降りることができたら、「男の証明」という難所もありました。今の子供は、そんな肝試しも、自分で殻を割って食べるウニの味も体験できないのです。

ツブ、イカ、カレイみんな高騰

 北海道の食はどうなるのでしょうか。「今さら何を言うんだ」と叱られそうですが、ツブ、イカ、カレイなど毎日、母親がおやつや夕飯で料理してくれた食べ物がどんどん遠い存在になってしまいました。地球温暖化で海水温度が上昇し、魚種が変化していることもあり、価格は高くなり、眼にする機会も減っています。北海道の馴染みの居酒屋さんも料理する魚の手配に苦労しています。柳葉魚などはもう幻の魚。イカももうすぐ仲間入りするかも。失礼ながらウニは潜って獲るものだと体に染み込んでいますから、今でもお金を払ってまで食べる気がしません。

 北海道の水産物の質も下がっているのではないでしょうか。海外からの観光客の増加によって大量に仕入れ、販売する必要があるので、質より量の確保に走っているせいか、料理のレベルが下がっている気がします。何を食べても「うまい、うまい」と言ってお金を払ってくれるのですから、仕方がないのかもしれません。

「うまい」は悪魔の囁きにも

 「おいしい」「うまい」は魔法の言葉であり、悪魔の囁きにもなります。農水産業のみなさんはより良いものを育て、収穫する努力を重ねる一方、店頭では量をまず揃えることを最優先して質が二の次になる場合もあります。「高くてもうまい」が知らぬ間に「高くてまずい」に変わってしまう。余計な心配とは承知していますが、こままでは北海道の食が壊れてしまうのではないでしょうか。

関連記事一覧