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下請けいじめ④ シャトレーゼ、最低評価は経営変調の警告 社長は「成長を止める」

 中小企業庁が公表した「下請けいじめ」調査で大手菓子メーカーのシャトレーゼが最低評価となりました。3月には、公正取引委員会からが下請法違反を犯したとして再発防止などを求める勧告を受けています。日本国内、海外で1000店舗を超える洋菓子店を展開し、急拡大していますが、相次ぐ「下請けいじめ」の指摘はシャトレーゼの経営に対する警鐘です。下請けいじめの最低評価を下されたタマホームなど住宅メーカーと同様、急成長を支える収益源を下請け企業から奪取する「甘い経営」は通用しません。

「甘い経営」は許されない

 中小企業庁は8月、価格交渉や価格転嫁、支払い条件の3点で取引条件を評価した調査を公表しました。毎年半年ごとに中小企業30万社を対象に実施しており、回答した6万6000社のうち10社以上が「主要な取引先」とした446社の状況を10点満点で評価して平均点を算出し、4段階で分類しました。

 価格の交渉や転嫁は改善が進み、最低評価の企業は消えましたが、支払い手数料を負担させるなどの支払い条件で15社が最低評価を受けました。

支払い条件が最低評価の企業は次のとおり

・テルモ(東京・渋谷区) ・シャトレーゼ(山梨・甲府) ・三菱鉛筆(東京・品川区) ・三協立山(富山・高岡市) ・SMC(東京・中央区) ・住友重機械工業(東京・品川区) ・芝浦機械(東京・千代田区) ・牧野フライス製作所(東京・目黒区) ・パナソニックAP空調・冷設機器(群馬・大泉町) ・一建設(東京・練馬区) ・セーレン(東京・港区) ・共和コンクリート工業(北海道・札幌市) ・イワタボルト(東京・品川区) ・新日本建設(千葉・千葉市) ・古河産機システムズ(東京・千代田区)(順不同)

 中小企業庁によると、現金支払いをやめて手形などで代金を支払ったにもかかわらず、手形の交付から支払いまでの期間が60日を超え、しかも手数料に相当する「割引料」を受注企業に負担させた企業もありました。かなり意図的で、悪質です。

 15社で異例なのはシャトレーゼ。これまでも最低評価を受ける業種は住宅・建設、機械などが多かったのですが、15社のうち唯一、食品メーカーのシャトレーゼが入りました。

 シャトレーゼは直近、公取委からも勧告を受けています。菓子の包装に使う資材などの製造を委託している11社に対し、受け取りの期日を過ぎても仕上がった商品の一部を受け取らずに未払いのまま無償で保管させていたということです。受け取っていない商品は2300万円分に上り、このうち1300万円分が1年以上過ぎていました。

 公正取引委員会は、こうした行為が下請け法違反にあたると認定し商品を受け取って代金を支払うことや保管費用の支払い再発防止などを求める勧告を出しました。シャトレーゼは公取委、中小企業庁の一連の「下請けいじめ」に対し「下請け法に関する認識の不足」と陳謝しており、「コンプラインアンス強化に取り組んでまいります」とのコメントを発表しています。

主因は住宅と同様、急成長が引き金

 なぜ「下請けいじめ」が連発するのか。やはり常連組のタマホームやオープンハウス、飯田グループ、一条工務店など住宅メーカーと同じ急成長が誘発しています。

 シャトレーゼは齊藤寛氏が1954年、山梨県甲府市で今川焼き風の焼き菓子店「甘太郎」を創業したのが始まりです。その後、アイスクリーム事業に進出し、フランチャイズ方式を活用して一気に拡大。25年3月期は単体売上で1414億円にまで成長しました。

 株式上場していませんから数字は会社発表に基づきますが、売上高は2015年3月期で430億円。10年後の2025年3月期は1414億円と3倍以上も増えました。店舗数も国内外で1000店を突破し、2倍以上に増えました。2010年にはホールディングスを設立して、ワイナリー、ゴルフ場、ホテルなども傘下に収め、売上高も2025年3月期で1613億円。 

 これだけ急成長すれば、経営のバランスは崩れます。シャトレーゼは素材調達から製造、流通、販売を一貫して手掛けているだけに、取引会社との信頼関係は強い半面、急成長に伴いどんどん高まる経営目標を達成するため、発注する際に不正な利益誘導を求める社員も出てきたのでしょう。言い換えれば、人材育成が追いつかず、経営の嵩上げばかりに夢中になってしまったのです。急成長企業の落とし穴にハマったのです。

 シャトレーゼの古屋勇治社長は産経新聞のインタビューで「急成長の中で会社の基盤がついていかなかった」「社会的責任、コンプライアンスがおろそかになっていた」と認め、新規出店を大幅に削減して「成長を止める戦略」を選ぶ考えを明らかにしています。創業者の齊藤氏が1年前の2024年8月に亡くなり、経営の大局観、ブレーキをかけるカリスマを失ったことも一因かもしれません。

創業哲学の「三喜経営」に立ち返る

 創業者の齊藤氏は自らの経営哲学として「三喜経営」を掲げていました。「利他の精神」に基づき、「お客様、従業員、社会」の三者が喜ぶことを目指し、実践しました。シャトレーゼは創業者の経営哲学を改めて学び、創業の原点に立ち返るしかありません。

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