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ホンダが消える47 稚拙な提携劇を反省したら、次はアップルと手を
稚拙、いや稚拙を飛び越えて醜悪。なんとも表現できない提携劇を見せられた思いです。ホンダと日産自動車の経営統合協議の結末は、自動車産業を知る人間なら誰でもわかっていました。「あの2社が手を組めるはずがない」。日産は日本の自動車産業の草創期から続く名門意識が強い。ホンダは戦後生まれのソニーと並ぶスター企業。どちらも自意識過剰気味の会社ですから、面と向かえるわけがない。しかも、最近のホンダは大企業病の悪さが露われ、日産と同じお役所体質になっています。「社長が命令するなら、やるか」。みんなでワイワイ議論するかつての「ワイガヤ」が消えてしまっています。
結末は誰もがわかっていた
三部敏宏社長の記者会見が振るっています。要約すると次の通り。当初の共同持ち株会社では判断のスピードが鈍るため、子会社化を日産に提案した。日産にとっても厳しく、合意が撤回される可能性も考えてはいたが、「それ以上に恐れるべきは、両社の統合が進まず、将来、より深刻な状況に陥ること」。
ホンダが日産と経営統合を協議すると発表したのは2024年12月23日。26年8月に持ち株会社を設立するというスケジュールも公表しています。普通なら、協議の骨格はすでに合意しており、株式評価など細部を詰める段階に入ったと受け止めます。ところが、わずか2ヶ月足らずでご破算に。協議開始時は「一緒にやろう」というだけ。合意事項は事実上、白紙?
持ち株会社方式では遅過ぎ、反発覚悟で子会社化を提案したというのですから、24年12月の「あの記者会見は何だったのか?」と呆れますが、それだけ日産に切迫した事情があったと察します。それなら日産はもっと譲歩しなければいけません。ホンダはそう読んだのでしょうが、そこは日産はいつまで経っても日産のまま。
日産の内田誠社長は「完全子会社化では日産の強みを最大化するのが難しいと考えた」と説明していますが、日産の強みが消えてしまったから2025年3月期で最終損益は800億円の赤字に転落するのです。奈落の手前にいる自社の内情がわかっていないのです。
アップルはEVを断念していない
それではホンダは次の一手をどう考えるのか。「From to ZERO」サイトではもう2年前から提案していますが、アップルと提携したらどうでしょうか。アップルはEV進出を考えていましたが、断念しています。しかし、どうもアップルはま諦めていないようです。
英フィナンシャル・タイムズによると、日産の株式を保有するルノーは、日産株の売却先として鴻海精密工業のほかにアップルも候補と伝えています。日産への経営参画を目指す鴻海の劉揚偉会長は、ルノーと交渉していることを認めおり、ルノーはアップルを含む世界中の企業にアプローチしているのは事実のようです。EVを断念したアップルは、実はまだ意欲が十分にあることがわかります。
アップルの現状を考えたら、EV進出を諦めるわけにはいかないはずです。iPhone、iPadなど携帯端末の成長力は失われているうえ、最近流行の生成AIでは出遅れています。iMacなどコンピューターや半導体の開発から創業し、シリコンバレーのスター企業になりましたが、新製品開発に手詰まり感が出ています。
今後の成長市場の創造を考えたら、EVは避けて通れません。EVは単に自動車というわけでなく、人工知能を使った情報処理を駆使する移動空間としてエンターテイメント、通信など人間生活に必要な機能をふんだんに搭載します。EVは器であって、そこから派生する技術と商品は無限です。
テスラ創業者のイーロン・マスクが人型ロボットの実用化を急いでいるのも、EV、ロボットすべてをひっくるめて人工知能をフルに活用した社会を想定しているのです。アップルが人工知能が主役を務める未来社会に乗り遅れるわけにはいきません。
ソニーと共に
ホンダはソニーとEVを共同開発しています。ソニーはアップル創業者のスティーブ・ジョブスが尊敬していた会社です。ホンダはテスラが開発に注力する人型ロボットについては、すでに「アシモ」を完成させており、世界トップの地位にあります。アップルがホンダ、ソニーと手を組んでEVを開発することに躊躇するでしょうか。なによりもホンダが最も欲しいEVに必要なソフトウエア開発や資金力は日産よりもはるかにあります。交渉相手としては日産の数倍も手強いでしょうが、費用対効果は100倍以上でしょう。
小サイトが2年前から唱えているホンダ・ソニー・アップル連合。現実味が帯びてきたと笑うのは筆者だけでしょうか。