公正取引委員会がスーパーのオリンピック(東京)を下請法違反(減額の禁止)と認定し、再発防止を求める勧告を伝えました。プライベートブランド(PB)製品を生産委託する下請け企業への納入代金などを不当に引き下げました。直近ではヨドバシカメラが乾電池やモバイルバッテリーなどPBを生産する企業に支払代金を不当に減額したとして摘発されており、下請法違反を徹底的に取り締まる姿勢は微動だにしません。
PBの支払い代金を不当減額
公取委の摘発といえば、当該業界をリードする大手企業を取り上げて業界全体に注意を促す「一罰百戒」が常套手段でした。しかし、最近は不正行為を1件たりとも見逃さない「モグラ叩き」を貫いています。業界で中位以下で小額なら「見逃してくれる」といった甘えや隙を全く与えず、下請けいじめ撲滅の本気度に喝采したいです。
オリンピックは首都圏を中心にスーパーやディスカウントストアを100店舗以上を展開しています。イトーヨーカ堂やイオンなど大手と比較して、中規模なチェーンですが豊富で割安な品揃えが売り物です。
違反は1000万円台でも見逃さない
その割安な品揃えを支えていたPBで起こっていた不正行為を見逃しませんでした。オリンピックは2023年5月から2025年4月まで洋菓子や食料品などPBを生産委託した下請け10社に対し「割戻金」の名目で納入代金を不当に減額していたのです。オリンピックはすでに減額した合計1716万円を返金しました。
注目したいのは摘発した金額です。直近をみると、ヨドバシカメラの減額金は6社に対し1300万円余り。不正行為に金額の多寡は関係ありませんが、公取委が摘発したヨトバシカメラもオリンピックも1000万円台と過去の摘発事例に比べて少額です。
例えば2025年2月のビックカメラの場合、5億円余り。2年前のノジマは7310万円。繰り返しますが、減額幅で不正行為の軽重が変わるわけではありません。「1000万円台でも見逃さないぞ」という公取委の強い意思がよくわかります。
「リベート」「支払い繰延」「後付けの負担押し付け」。家電量販店はじめ小売業界にはびこる悪しき商習慣です。ただ、発注企業と下請け企業の力関係は歴然です。公取委の聞き取りで下請け企業は「割戻金を断ったら取引を切られる可能性があり、断る選択肢はなかった」と話したそうです。
摘発は中小企業の収益力を高める狙いも
政府は中小企業の収益を高め、従業員の賃金水準を引き上げるため、中小企業庁はじめ「下請けいじめ」の撲滅を進めていますが、実際の発注交渉で取引停止、あるいは縮小の可能性を感じたら、下請け企業は断れません。だからこそ、独占禁止法の番人である公取委の目はますます厳しさを増すのです。
急成長する話題のスーパーも見逃しません。関東を中心に全国展開をめざす食品スーパーのロピア(川崎市)を独占禁止法違反の疑いがあるとして立ち入り検査しました。安売りでテレビなどで取り上げられており、現在は19都道府県118店舗ですが、イトーヨーカ堂や西友に代わって居抜きで開店し、店舗網を広げています。
ロピアの場合は新規開店絡み。開店準備の際、納入業者から人員を派遣してもらって商品の陳列や補充などを手伝ってもらったそうです。人件費を払えば問題はありませんが、むろん派遣費、人件費は払っていません。
下請法違反が消える日はいつ?
物価高騰の逆風の下、小売業は激しい生き残り競争が続いています。発注企業は1円でも仕入れを安く値切りたいと考え、受注企業は1円でも高く支払い代金を得たいと願っています。
日本経済を支える中小企業が元気でなければ、日本の成長はありません。いくら公取委が下請法違反をモグラ叩きをしても、下請法違反を犯す企業は絶えることはないでしょう。でも、支払い代金の減額で収益を上げる事業モデルを続ける限り、企業は足踏みしているだけ。この現実に気づいて欲しいです。