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日産、万骨枯らして「GT-R」残す テールランプの輝きは希望の未来に続く道を教える

 今は昔、もう40年近い前の1980年代に「スカイライン」「GT-R」の生みの親として知られた桜井眞一郎さんにお会いました。すでに日産自動車というよりは、日本が生んだ世界的なスポーツカーを開発したカリスマと評されていましたから、歩く姿からオーラが放っていました。ホント、眩しかった。

桜井さんは「馬」について話し始めた

 桜井さんは席に座った途端、すぐに話し始めました。「馬を見てごらんなさい。後ろ足の蹴りでどんどんスピードを速めていくでしょう。前足は方向性とバランスを取るぐらいの推進力。馬は理想の走りを体現しているのです」。突然、馬の話題に振られたので正直、キョトンとしてしまいましたが、意図はすぐに察しました。新車開発の原点を強調したかったのです。

 桜井さんが育て上げたスカイラインGT-RはFR(後輪駆動)でしたが、1980年代はすでに自動車の駆動方式はFF(前輪駆動)が主流になっていました。FRは車前部に搭載したエンジンが出力する駆動力をプロペラシャフトで後輪に伝える方式で、前部に座るドライバーが握るハンドルは軽く、操舵性や走行性で優れていました。ただ、車体を縦に貫くプロペラシャフトは床下が盛り上がるなど車内空間を狭める欠点がありました。

 これに対しFFはエンジンの力を前輪で駆動するので、プロペラシャフトは不要。車内空間が広くなります。自動車が特別な乗り物から誰もが利用する使い勝手の良い移動手段になり、ハンドルを操作する技術革新も手伝って前輪駆動のFFが日本車メーカーでどんどん採用されました。

 桜井さんは、時代と逆行していると批判を浴びても、GT-Rは世界最高水準を極める走行性能を進化させるためにFRを堅持する信念を強調したかったのです。走るために生まれ、育てられた馬が後ろ足で駆けるように、GT-Rも走るために誕生した自動車だからです。桜井さんはその後も自動車開発に駆ける熱い思いを語り続けました。

 熱烈なファンに支えられたGT-R、桜井さんでしたが、当時の日産では時代に取り残された存在になっていたのも事実です。日産はトヨタ自動車と共に世界市場をにらんで新車を次々と開発し、世界各地で生産、販売するメーカーでした。GT-RのほかにフェアレディZなど世界に誇るスポーツカーを輩出しているとはいえ、日産はスポーツカーだけで生きていけません。現役の開発部隊と桜井さんの距離はどんどん開いていました。

経営危機でも生き残る

 ところが、日産は1990年代、疾走どころか七転八倒します。巨額の赤字を計上しながら、経営再建の道筋を探りますがどれもこれも失敗。1999年にルノーと資本提携し、カルロス・ゴーン氏が指揮するリバイバルプランによって息吹き返します。

しかし、「技術の日産」は収益V字回復の名の下でばっさりと捨てられてしまいます。開発投資は大幅に削減され、発売される新車の魅力は薄れるばかり。「サニー」「セドリック」「シーマ」「プリメーラ」など日本の自動車史を飾る名車を世に送り出してきましたが、開発・生産コストを抑制する新車開発でヒットする車が出るわけがありません。

 カルロス・ゴーン氏は世界を勇躍する野望を披露しながらも、結局は「技術の日産」を食い潰してしまったのです。

 「日産社内のクーデタ」でゴーン氏を追い出し、後を継いだ経営者も同じでした。なんとか収益を捻り出す辻褄わせの経営に終始し、日産を衰退に追いやります。2025年3月期で6000億円を超える巨額赤字を計上した理由の一つとして「日産に売れる車がない」と嘆く声が広がりましたが、それは当たり前です。財務諸表ばかりを睨み、売れる車を開発できる人材と技術を見捨てていたら、誰でも立ち行かなくなるのはわかります。

 歴史の皮肉というのでしょうか。GT-Rは生き続けました。FRを守り、価格も数千万円もする高級スポーツカーでありながら、今も熱望するファンを多く抱えます。

 日産は8月末、GT-Rの生産を終了すると発表しました。排ガス規制対応や部品調達が困難になったというのが理由です。1969年に「スカイライン」のレース仕様車として発売されて以来、2度の生産終了を経験していますから、これで3度目。日産社長は将来に復活する可能性を示唆しており、近い将来に復活するはずです。

再生する力こそ希望

 繰り返し復活するGT-Rに日産再建の希望を見出すことができます。時代に流されず、「技術の日産」に相応しいクルマを開発し続けることです。窮地に追い込まれた今、どうしてもすぐ売れる車を出したいでしょうが、正直いって手遅れです。一度、原点に立ち返って、日産が世界に送り出すクルマとは何かを問い正して下さい。それはエンジン車なのか、電気自動車(EV)なのか。それとも空飛ぶクルマなのか。あるいは全くかけ離れた発想から生み出すモビリティなのか。技術の神髄を結集して、自動車を愛する思いで開発してほしいです。

 GT-Rのテールランプの輝きと出会った時のドキドキ感を経験したことがありますか。「一緒に走ろうか。でも、キミのクルマはついて来れるか?」。そのまま一緒に走りたい衝動に駆られます。日産の「希望の未来」は何度も再生するGT-Rが証明しています。

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