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「テスラ、日産救済劇」弄ばれた末に政治家も絡む「M資金事件」茶番劇?

 ついにというか、やっぱり現れました。日産自動車がおもちゃのように弄ばれ、それを餌に徘徊する金の亡者たちが集まっています。茶番劇と笑えるレベルではありません。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が日産の経営再建に向けて米テスラに出資する計画があると伝えました。テスラは電気自動車(EV)の世界最大手で、世界一の大富豪イーロン・マスク氏が経営者です。破談となったホンダとの経営統合協議は元はと言えば、EVを巡る技術開発。次代の市場の主役であるEVで生き残るのが狙いでしたから、実績もカネもあるテスラに出資を求め、再建の道筋を描くのはそう無理筋ではありません。

FTが「テスラ出資計画」伝える

 テスラへの救済出資を考案したのはテスラ元社外取締役の水野弘道氏で、菅義偉元首相らの支援も取り付けたと伝えられています。フィナンシャル・タイムズによると、テスラなどを加えた投資コンソーシアムを設立し、そこに台湾の電子機器製造大手、鴻海精密工業を少数株主として参加させる構想もあるそうです。鴻海はEVに進出しており、日産との提携に意欲を見せて日産との接触を認めています。

 水野氏は邦銀や投資ファンドなどを経験する金融の専門家で、数多くの職種を経験しており、経緯はわかりませんが2020年4月にテスラ社外取締役に就任しています。その後、菅首相時代に経産省参与に就き、EVを推進する役務を負ったようです。テスラによる日産救済シナリオに菅元首相の名前が載ったのも、こうした”縁”があったからなのでしょう。

 実現性はどこまであるのでしょうか。金融知識を鍛えるゲームソフトとして見たら、おもしろいです。ただ、最終的な経営判断は日産なり、テスラですから結末はわかりませんが、冷静に眺めれば素朴な疑問がいくつも湧いていきます。

 まずテスラが日産に出資するメリットがあるのでしょうか。テスラは世界のEV市場でBYDなど中国勢と激しいコスト競争を展開しています。生産コストを抑制して割安なEVを開発、生産することに注力しています。

テスラにメリットは?

 仮に日産を傘下に収めて経営再建に取り組むとします。既存の工場はエンジン車が主体ですから、そのままでは使えません。生産設備、レイアウト、建屋などをゼロから設計し直して、EV仕様の工場に立て直す必要があります。出資分で工場用地が手に入るというメリットは考えられますが、テスラほどの資金力なら世界戦略に合わせて適地を物色して建設投資した方が早いでしょう。

 なにしろ日産の再建には時間がかかります。ホンダが経営統合を断念した理由は、日産経営陣の判断の遅さと実行力の無さです。テスラなどが投資連合が労働組合や利害関係者と交渉して工場の建て直し、人員カット、資産売却を実行しようとしても、いつ完結できるかは不明です。即断即決を貫くイーロン・マスク氏がそんな時間の浪費にがまんできるわけがありません。多くの批判を浴びながらも、トランプ政権が進める政府職員の人員整理の現状をみればすぐにわかることです。

 しかも、日産を手にしたとしても、テスラが市場で優位に立つ保証はありません。テスラはエンジン車のシェアが欲しいわけではありません。日産にEVがあるじゃないかという意見もあるかもしれませんが、日産のEVは世界的に見ればわずかです。出資に見合う投資コストとは思えません。現在、好調な売れ行きをみせるハイブリッド車が手に入るかといえば、それも無理。日産が経営破綻寸前に追い込まれた理由は、トヨタ自動車やホンダと違って欧米で販売できるハイブリッド車を持っていないことですから。

不動産会社の方がメリット大?

「仮に」の2乗を前提に考えれば、日産を買収して利益を得るのはシンガポールなど海外の不動産会社ではないでしょうか。日産が日本国内に多くの工場・事業所の用地を保有しています。立地場所も悪くありません。マンションなど新たな不動産開発に投資すれば、予想通りのリターンを得られるかもしれません。

 投資家、政治家などに弄ばれる日産が哀れです。巨額資金を餌にしたM資金事件を彷彿させます。直近では船井電機の倒産劇でしょうか。あの日産が雲散霧消する。そんな風景は見たくありません。

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