• HOME
  • 記事
  • Net-ZERO economy
  • 公取委、日本野球機構とトヨタ「アルファード」独禁法違反 伝家の宝刀を抜きまくる 

公取委、日本野球機構とトヨタ「アルファード」独禁法違反 伝家の宝刀を抜きまくる 

 日本野球機構(NPB)とトヨタ自動車「アルファード」。意外な組み合わせと思いますが、その理由はもっと予想外。独占禁止法違反の「取引妨害」に抵触するそうです。独禁法の守護神、公正取引員会は「下請けいじめ」やグーグルの検索ソフトなど身近な問題を相次いで摘発するなど行動範囲を広めていますが、プロ野球と高級ミニバンが同じ違反で並ぶとは思いもしませんでした。独禁法が日常生活でとても重要な法律であることをヒシヒシと感じます。

野球機構はフジテレビの取材を拒否

 日本野球機構は、2024年秋にプロ野球日本シリーズでフジテレビの取材証を没収したことが対象です。フジテレビが日本シリーズ中継と同じ時間帯に米大リーグ(MLB)のワールドシリーズを放送したため、野球機構は日本シリーズの地上波中継に関するテレビ局、スポンサー、12球団の協力体制を損なうと判断、取材証を没収しました。その後も野球機構が主催した「侍ジャパン」の強化試合でもフジテレビの取材は認められませんでした。

 公取委は、取材証の没収がフジテレビの取材機会を大きく損ねた判断したほか、野球機構が大リーグの野球が日本のプロ野球の動画コンテンツと競合関係にあると考え、テレビ局の番組編成に圧力をかけたかどうかも調査しています。フジテレビが大リーグの中継放送を躊躇した可能性があれば、独禁法の「取引妨害」などに抵触します。

 プロ野球はテレビなどのメディアに助けられてファン層を広げてきた歴史があります。フジテレビも大きく貢献しています。大リーグのワールドシリーズで日本シリーズの視聴率が低下すると憤慨する気持ちはわかりますが、これまでの貢献度を無視するほどではありませんし、ワールドシリーズに対抗できるコンテンツに日本シリーズに磨きをかける方が大事ではないでしょうか。フジテレビをいじめるよりも、野球機構はもっと広い視野を持つべきだったのでしょう。

プロ野球はテレビ・新聞でファン層を広げていたはず

 なによりも元新聞記者の眼からみれば、取材や編成の自由を阻害する野球機構の判断が理解できません。野球機構のバックには読売新聞などがついています。天に唾を吐くような真似をするとは思いもしませんでした、しかも、スポーツ配信は今やテレビのみならずネットで流れているのが実情です。フジテレビがワールドシリーズを放送しなければ日本シリーズの視聴率が大幅に高まったと考えること自体、過去の驕りです。勘違い、浅慮という言葉しか思い浮かびません。

 トヨタの「アルファード」も野球機構と同様、勘違いともいえる強気の販売姿勢が裏目に出ました。納車待ちが発生するほど高い人気に乗じた「抱き合わせ販売」です。トヨタの高級ミニバン「アルファード」「ヴェルファイヤー」、大型SUV「ランドクルーザー」は発売以来、大人気を集めており、納車期間が長く、アルファードの場合で半年程度はかかるといわれています。あまりの人気の高さから中古車価格も上昇しており、購入後に転売する動きが出ているほど。

高級ミニバンと自社サービスを抱き合わせ販売

 公取委が警告したのは直営販売会社トヨタモビリティ東京(東京・港)。トヨタの子会社で、都内の約200の販売店でトヨタやレクサスの車両を販売してます。1年上も前から、「アルファード」「ヴェルファイア」「ランドクルーザー」の新車を販売するにあたって、自社サービスの購入などを条件としていました。コーティングやメンテナンス、トヨタファイナンスとのローン契約や所有する車両の下取りを要求しました。トヨタのサービスは不要と考え、受け入れない客には販売を拒否した例もあるそうです。トヨタモビリティ東京は転売対策としてサーボスの購入を条件にしていたとみられていますが、法律違反は許されません。不利益を被るのは心底、欲しいと思う購入者ですから。

 公取委は2024年10月に抱き合わせ販売が疑われると注意喚起したそうです。トヨタモビリティ東京も11月ごろ、抱き合わせ販売の疑いを受ける行為をやめるよう指示していましたが、すべての店で徹底されていないことから、行政指導である警告を下して再発防止を求めました。

伝家の宝刀をどんどん抜いて、

 公取委は1980年代から2000年代にかけて、独禁法の守護神といわれながらも摘発が少ないため、「伝家の宝刀をぬかない」と言われ、無気力とまで批判されたことがあります。最近は、宝剣をどんどん抜いており、気持ち良いくらいです。遠い存在だった独禁法を身近に感じるとともに、国民、消費者の目線から見ても不法な商取引が摘発されることは、日本経済、消費者にとって、とてもプラス。これからも、どんどん抜いてください。

関連記事一覧