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スズキ、EV「eビターラ」でダイハツ従え、ホンダ、日産を抜き去る異次元経営へ

 スズキがEV(電気自動車)の世界市場に躍り出ます。軽自動車のライバルだったダイハツ工業を従えて、トヨタ自動車との提携をてこに世界販売を加速。ひょっとしたら今年中にエンジン車を含めればホンダや日産自動車を抜き、トヨタ自動車に次ぐ第2位の地位を固めるかも。トヨタでもない、VWでもない。中興の祖、鈴木修氏の「おれは中小企業のおやじ」を盾にスズキ流の異次元経営の道を疾走します。

世界戦略車第1号

「eビターラ」は2024年11月にイタリア・ミラノで初公開。翌年の2025年1月にはインドでも発表。日本でも2026年1月から発売します。EVでも高い人気を集めるSUVで、駆動系などプラットフォームはトヨタ、ダイハツと共同開発し、スズキのインド合弁会社で生産します。

 もちろん、スズキにとってEVの世界戦略車第1号。すでにインドで発売し、これから欧州、日本が続き、100以上の国・地域で販売を予定しています。EV市場が早くから立ち上がった欧州向け輸出が半数程度を占めると見られますが、トヨタブランドでも発売されるので、世界の中小型SUV市場でスズキブランドのEVは存在感を高めるはずです。

 なにしろ、価格は他のEVに比べ割安。日本の価格をみると、価格は399万3000円からで、政府の補助金利用で実質約312万円に。他のEVと比べてみても SUVは500万〜600万円台が多く、初めてEVを購入する人には手が出やすい。

BYDとも闘える価格帯

 同じ価格帯では日産「リーフ」。セダンですが、価格400万円から。ほぼ横並びですが、セダン仕様のリーフより使い勝手や悪路での走破性が優れるSUVを考慮すれば、競争力は十分。価格も含め高級感あふれるテスラとは雲泥の差ですが、世界のEV市場を席巻しているBYDのSUVには良い勝負ができそうです。

 世界の自動車メーカーにとってEV進出は喫緊の課題です。スズキは欧米や中国より出遅れた進出となりますが、スズキにとってのEVはこれまでの強みを進化させ、異次元の道を走る起爆剤になります。

 まず祖業ともいえる軽自動車からの脱却。現在は収益の柱はインド事業となっていますが、日本国内の販売台数の80%は軽が占めており、ダイハツとシェアトップ争いが成長エンジンになってきました。軽は現在も日本国内市場の新車販売の40%を占めるほどですが、過酷な価格競争で収益は期待できません。ホンダが軽「N-BOX」で軽トップを連続しても4輪車事業の収益が低いことでもわかると思います。

舞台裏には鈴木修のシナリオ、演出

 スズキはすでにハンドルを切り、ダイハツとの競争よりも1000CC以上の中小型車に傾斜しています。競合関係もスズキがトヨタと資本提携して以来、ダイハツとはグループ企業の関係になりました。不正試験問題もあってトヨタグループ内の序列はスズキがダイハツを上回り、小型車の主導権はスズキに移っています。ダイハツは今や、トヨタ、スズキに続く軽・小型車部門になってしまっています。EVでもスズキが先行しており、ダイハツはスズキと共同開発している軽EV商用を25年内にようやく発売する程度。

 勝負する市場もインドから欧州など世界各地に広がります。EVは糸口に過ぎません。充電設備などが不足する新興国では得意の小型車で勝負できます。インド生産が日本並みのレベルに近づいていますから、品質で遜色はありません。

 世界で勝負するといっても、トヨタやGM、VWに自身を重ねる自信過剰に陥ることはありません。スズキの強みは、どんな危機にあっても常識に縛られずに突破口を見出す中小企業魂にあります。鈴木修氏が自らを鼓舞し、奢りを排するため、常に「俺は中小企業のおやじ」とあえて演出していましたが、それは世界で生き残る頑張りを引き出すのが狙いです。

「eビターラ」は鈴木修氏が周到に練り上げた生き残りのシナリオの一部にしか過ぎません。これから新しいスズキが始まるのです。

 写真はスズキのHPから引用しました。

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