
損失引当金876億円、第2の創業・EV向け駆動系がニデックの未来も損失する残念な結末
「ニッデク、なんなのさ?」。やっぱり、この叫びが出てきます。高収益を誇った企業の決算が突然、信用できなくなる日が訪れるなんて!!
ニデックの2025年9月中間期決算は予想以上の衝撃です。7月に「速報値」を発表した後、確定値はまだでしたが、東証が定めた開示期限ギリギリの11月14日に公表された中間期決算は、売上高が前年同期比0・7%増の1兆3023億円、営業利益が82・5%減の211億円、純利益が58・6%減の311億円。7月に「速報値」として公表した数字は営業利益が878億円、純利益が548億円ですから、大幅な下方修正です
なによりも驚いたのは損失引当金876億円を計上したこと。電気自動車(EV)駆動系「E-Axle」など車載用製品部門で損失引当金364億円、減損損失316億円、家電・商業・産業用製品部門での求償債務194億円などが新たに加わりました。
驚きはまだ終わりません。2025年4~6月期は7月の「速報値」で純利益が455億円の黒字だと公表していましたが、大幅に訂正されて94億円の最終赤字に転じています。株主からみれば、驚きを超えて叫び声も失う思いでしょう。
巨額の損失引当金を計上したEV向け車載事業はニデック創業者の永守会長にとって第2の創業に等しい挑戦でした。創業当初から育て上げた主力製品の小型モーターに続く次代を担う事業として注力していました。
なにしろ、経営目標は壮大。E-Axleの販売台数は2030年度で1000万台。目標を高く掲げ、それに向かって多少強引と批判されても達成するのが永守流であり、実現するのがニデック神話でした。
しかし、挑戦は完全に裏目に。敗因は中国での躓き。世界最大のEV市場に躍進した中国でニデック製品の販売拡大を進めましたが、中国製との激しい価格競争に敗れ、大赤字を被っていました。
軌道修正する時間はあったはずです。2年前の2023年10月、永守会長は「今期に黒字を見込んでいたが、年間で150億円の赤字が出る」との見通しを明らかにしていました。すでに23年度3月期で300億円の営業赤字を計上。電動アクスルの販売台数見通しも下方修正が続きましたが、息を吹き返すことはできませんでした。不適切会計の主因は第三者委員会の調査が全容を明らかにするまでわかりませんが、「E-Axle」を軸にした無謀な経営戦略が不適切会計を招いたかもしれません。
ニデックの決算数字に対する信頼は地に落ちています。5月以降に不適切な会計処理が疑われる問題が相次いで発覚。その後も監査法人PwCジャパンが2025年3月期決算を「意見不表明」するなど経営指標の信頼性が大きく揺らいでいます。
2025年9月中間期についても監査意見は「意見不表明」。一連の不適切会計問題を巡る第三者委員会の調査が終わっておらず、結論の表明の基礎となる監査証拠が得られていないことなどが理由ですが、「意見不表明」が2025年3月期、2025年9月中間期と2度も続くのは異例中の異例です。今後、損失引当金の金額が膨らむ可能性は否定できませんし、株式上場を維持できるかどうか危うい状況です。
ニデック創業者、永守重信氏は多くの”信者”を抱え、その一言が日経平均を左右するとまでいわれました。そのニデックが株式市場の信頼を裏切ってしまいました。岸田光哉社長は「組織風土の改革が必要。第三者委から最終的な報告をいただいたうえで、本質的な原因のレビューを深めていく」と話していますが、どこまで経営改革に見込めるのか。信頼回復に向けて第一歩がニデックの未来を決めます。
◆ 写真はニデックのHPから引用しました。

