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スーパーのセルフレジは誰のために、お客?お店?利益は誰に これじゃ「三方ダメ」

 「デジタル・デバイド」。その風景を見た時、今や死語となった言葉が思い浮かびました。スーパーで増えているセルフレジ・カウンターです。最初の頃は便利だなあと思っていました。買い物点数が少ない時は、多くのお客さんが並んでいる通常のレジカウンターを避け、商品バーコードをスキャンすれば簡単に支払いが済みます。海外のスーパーではもう30年ほど前からデビッドカードなどによる電子決済がとても便利に使えていましたから、ようやく日本でも当たり前になってきたと歓迎したほどです。

セルフレジはデジタル・デバイドの風景?

 ところが、近所の大手スーパーを見る限り、セルフレジのコーナーはガラガラなのに、すぐ横にある通常のレジカウンターには多くのお客さんが並んでいます。レジ担当の店員が手作業で商品を決済し、現金やカードなどで決済するのですから、手間と時間がかかります。それでも多くのお客さんは「セルフじゃない方」を選んでいるようです。大きなスーパーになると、レジコーナーが横一列に並ぶ中、通常のカウンターに多くのお客さんが列となり、セルフレジのコーナーは人影がパラパラ。店内が混雑しているにもかかわらず、レジカウンターの混み具合がばらつくのはちょっと異様です。

 やはり、高齢者やスマホに慣れていない人にとって、セルフレジは使いにくい。スマホをうまく利用できる若者らはセルフレジに向かい、不得意な高齢者はレジ担当の店員が会計してくれる通常のコーナーに並ぶ。デジタルの機器やサービスに慣れた人と慣れていない人が自然に仕分けされてしまう。これが「デジタル・デバイド」とわかったつもりでしたが、どうやら大いなる勘違いのようでした。

 デジタル・デバイドのもともとの意味は直訳すれば「情報格差」。ただ、言葉が意図している内容はインターネットや携帯電話など情報技術をうまく活用できる人と、そうじゃない人の間に生まれる格差を指します。1990年代後半から普及し始めたインターネットや携帯電話は大都市と地方、あるいは若者と高齢者、先進国と途上国という構図でデジタル・デバイドによる利益、不利益を生み出しました。「スマホを使いこなせない」。こう聴くと、すぐに高齢者だと発想するのが典型例です。ステレオタイプのように理解と誤解が広がり、今では使われていません。

セルフレジは閑散の時も

 なぜセルフレジの不人気ぶりをデジタル・デバイドと勘違いしたのか。セルフレジは一見、効率的に決済できるように思えますが、実はお客さんに大きな負担を強いているのです。まるで政府が強引に進めるマイナンバーカードと同じ。利用するまでの手続きが煩雑で、利用する人間の使い勝手は二の次。DX、デジタルトランスフォーメーションは人手に頼っていた業務をデジタル処理すれば効率が向上するといいますが、そのDXの効能を発揮するシステムや端末を使いこなすまでの作業が多く、結果としてユーザーが使いにくいのです。

 セルフレジは優れたシステムです。パターンはさまざまで、例えば通常通り、レジに並べば店のスタッフが買い物カゴに入れた商品を取り出してバーコードをスキャンした後、「5番のレジへどうぞ」と指示してくれるお店もあります。一人で完結するシステムもあります。買い物カゴに入れた商品のバーコードを自分自身でスキャンで読んで金額を確認、カードや「なんとかペイ」で支払うお店もあります。イトーヨーカ堂のようにカートに読み取り機器を取り付け、店内を回りながら選んだ商品をその場でスキャンして会計処理を済ますシステムもあります。

システムは優れても、利用の下準備がたいへん

 本来の目的は人手不足に対応するため、レジ業務を効率化することです。しかし、セルフレジが閑散とし、店員が会計処理するレジに偏って混雑しているなら、むしろレジの業務はロスを生んでいるのではないでしょうか。

 セルフレジそのものの問題ではないと思います。地方スーパーに行くと、お客さんがどんどんセルフレジに向かい、買い物を済ませています。よく考えたら、大手スーパーのセルフレジは、利用できるまでの下準備が面倒です。スーパーが発行している電子マネーを利用しなければいけないとか、スマホにアプリをあらかじめダウンロードしていないとだめとか。それよりも大都市の大手スーパーは利用客が多いためか、セキュリティー面の強化も加わり、手間が多く、利用する方法を熟知しなければいけません。

 ある大手スーパーを例にみても、複数のアプリが存在し、そのアプリを使いこなすのが大変。割引キャンペーンを利用しようとしても、スマホを覗くと多くの割引クーポンがあってどれを選べ良いのか悩みます。これだと思ってクーポンを利用すれば、セルフレジから電子音で「このクーポンは使えません」と言われ、店員に質問すると「あ、このクーポンは電子マネーは使えず、クレジットカードで決済してください」と答えられます。

アプリ・決済機能は満載に

 セルフレジを利用するためには、その下準備と使い方を十分に理解していないとダメなのです。品物を買ってお金を払おうと思っているのに、払うまでの作業と知識な無いと払えない。そこまでしてセルフレジを利用するメリットがお客にとってあるのでしょうか。しかも、現状は使い方で迷うお客さんを手助けするための指導役の店員が必要です。人員の効率化に逆行しています。

 主因は簡単。セルフレジのシステムに利用目的を詰め込みすぎているのです。大手スーパーは多くの事業部門から寄せられる要求をアプリに詰め込み、決済機能は満載状態。セルフレジカウンターでお客は、満載のアプリや使用方法を使い分ける勇気と知識が必要です。使いこなせるわけがないのです。お客さんの目線に戻って、もう一度セルフレジを考え直してみたらどうでしょうか。

 よく考えるとやはりデジタル・デバイドの結果かもしれません。スーパーの経営陣が情報技術の使い方をわかっていないのですから。混迷するマイナーカードのデジタル庁と同じです。

 近江商人は商売とは売り手、買い手、世間の三方に利益が出るよう心がける「三方良し」を旨としていますが、これではスーパーにもお客にもDXによる効率化にも、いずれもメリットを享受しないことになります。大手スーパーのセルフレジは「三方だめ」で終わってしまうのでしょうか。もったいない。

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