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ホンダが消える57  四輪開発を技研に戻す 「売れる車」創りは迷路から抜け出せるか 

 ホンダが四輪車の開発部門を本社組織から外し、子会社の本田技術研究所(埼玉県和光市)に移します。技術研究所は1960年に設立し、収益に縛られず自由な発想で車創りに取り組むホンダの頭脳です。しかし、2020年、当時の八郷隆弘社長は四輪車事業の経営効率を高めるため、本社が開発部門を吸収して本社主導で「売れる車」創りを目指すと宣言しました。八郷社長は経営不振に喘ぎ、自らの求心力を維持する狙いもあって、ホンダ社内の意識改革を求めたのですが、結局は失敗に終わったようです。

2020年に八郷社長が分離

 なにしろ、四輪車事業は相変わらず息を吹き返しません。2025年3月期を例にみると、いつもながら青色吐息。売上高は4・9%増の14兆4678億円と伸びたものの、営業利益は56・5%減の2438億円と半減以下。営業利益は1・7%と2・4ポイントも下がる信じられない低水準。

 なんとか持ち堪えているのは二輪車が大健闘しているからです。四輪車に比べて売上高は4分の1にであるにもかかわらず、営業利益は2・7倍も稼ぎ出しています。販売台数、営業利益、営業利益率、いずれも過去最高を記録しました。驚くのは営業利益率が18・3%。四輪車の1・7%とひと桁も違います。

 2020年から始めた四輪車の組織改革は失敗だったとしても、わずか5年後に元の技術研究所に戻すことは原点回帰なのか、それとも開発は自信喪失のままなのか。

 2026年2月10日の日本経済新聞は「開発部門が本社主導になったことで自由な開発環境が制約され、ヒット商品が多く生まれない課題も浮き彫りになった。開発効率よりも競争力の高い次世代車の開発が重要と判断し、組織再編に乗り出す」と解説していますが、2020年当時は売れる車創りを忘れたかのような技術研究所の組織運営を批判して本社に吸収したのですから、この5年間の試行錯誤は無駄だったということでしょうか。

三部社長も自分が乗りたい車を創りたかった

 予兆はありました。「社長の私が買って乗っている。ホンダ渾身のモデル」。ホンダの三部敏宏社長は3ヶ月前の2025年10月末に開幕したジャパンモビリティーショーで、9月に発売したばかりの「プレリュード」をこう紹介しました。正直、驚きました。ショーの目玉はホンダの次代を担う電気自動車(EV)のゼロシリーズ。三部社長はEVに賭ける意気込みを説明しましたが、会見で最も言葉に力がこもり、熱い思いが伝わったのは「プレリュード」でした。

 「三部社長はやっぱりホンダの人なんだなあ」とつくづく思いました。「プレリュード」は1970、80年代に大ヒットした名車です。2025年の復活にホンダファンは驚き、大歓迎。目の前にある「シン・プレリュード」は流麗なボディに素晴らしい走行性能を纏い、なによりも他を圧倒するオシャレなオーラも再現しました。再び、世界を魅了するホンダ車を開発したい。ホンダの開発陣の思いが伝わってきます。

 もっとも、熱い思いが裏目に出ることが多かったのも事実。ホンダの開発陣の真骨頂はお客さんに新車を売るというよりは、自分たちが乗りたい車を創ることにあるからです。名車を開発することもあるけど、市場のニーズと合わない車が続出する。この繰り返しが四輪車事業を疲弊させたのは事実です。プレリュードを「ホンダ渾身のモデル」と呼ぶ三部社長の言葉には儲からない四輪車事業へのジレンマも物語っているのです。

世界を驚かせた技術を再び輩出できるか

 本田技術研究所は、ホンダの根源です。1946年、創業者の本田宗一郎氏が設立して原動機付き自転車を開発、生産。3年後の1949年に本田技研工業に発展にしました。現在の研究所は1960年に本社から分社化し、本社から受け取る委託研究費で運営する形をとっていますが、本田氏の思いを継承する組織なのです。事実、排ガス規制を先駆けてクリアしたエンジン、エアバック、F1でも活躍する高性能エンジン、自動運転など世界最先端の技術を輩出し、ホンダは世界の表舞台に躍り出たのです。

 ただ、技術研究所が本田宗一郎氏が描いた姿に戻ったからといって、欧米や中国などとの技術競争で失地回復できるかどうかわかりません。技術者など総合力で劣るとは思いませんが、ヒット車を排出できない今のホンダにとって最も欠けているのは成功体験です。

 1970年代から1990年代まで世界を驚かせ、感動させてきたホンダを再び目撃したい。三部社長が「プレリュード」に込めた「ホンダ渾身」の熱い思いは、ようやく前奏曲が始まったばかりなのです。

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