
日産は「日参」へ 社長が毎日、開発・生産・販売の現場を訪ねて社内で覚悟を共有
日産自動車が2月12日、2026年3月期の連結最終損益が6500億円の赤字見通しを明らかにしました。前期は6708億円の赤字ですから、2期連続で6000億円超の赤字です。2025年3月期でネットキャッシュは1兆5000億円だったそうですから、経営破綻するまでにはまだ時間が残されていますが、崖っぷちはもうすぐそこに。
崖っぷちはもうすぐそこに
黒字化の道筋は五里霧中のまま。大規模なリストラ計画は1年前の2025年春、国内外の7工場、従業員2万人の削減などを発表していますが、主力輸出先の米国や中国は販売不振に喘ぎ、予想だにしないトランプ関税が加わり、経営環境を襲う逆風は吹き荒れています。
イバン・エスピノーサ社長は決算会見で「販売状況は厳しかったものの、断固たる活動が事業の安定化につながり、回復の道筋ついてきている」と話しますが、追加リストラを検討する可能性もあり、耐え忍ぶ時期が続くのは間違いないありません。
もっとも、悪戦苦闘するのは経営陣だけではありません。社員とその家族、部品メーカー、販売店それぞれが厳しい状況に立ち向かっているのです。頑張れと言われても、ため息しか出ない時もあるでしょう。何人かの技術者のみなさんとお話しすると、多くの難題を抱えながらも、「自分たちの役割をしっかり果たすしかない」と胸の内を明かしてくれました。
内部通報件数では第1位
そんな現場の空気を伝えるランキングがあります。経済誌の東洋経済オンラインの「内部通報件数が多い企業ランキング(2025年版)によると、日産は4年連続で第1位。グループ全体で1700件を超えています。一見すると、社内の不満をぶち撒けていると勘違いします。
内部通報が多い=ブラック企業ではありません。必ずしも不正が多いことを示して意するわけではなく、むしろ通報の窓口が機能しており、法令遵守、問題の早期発見、解決に積極的な姿勢と評価すべきだそうです。
日産に続くランキングをみても、第2位が日立製作所、第3位はスギホールディングス、第4位はファーストリテイリングとなっており、業績面だけでみれば高収益を上げている優良企業が多い。100位までみると、今やブラック企業の代表ともいえるニデックはランキング入りしていません。大赤字の日産が優良企業の中に紛れ込んだ印象は否めません。
日産は2期連続の6000億円を超える赤字を抱え、大規模なリストラに取り組んでいる最中です。決して社内の空気が再建に向けて結集しているとは思えません。でも、「腐っても鯛」。組織が腐っているわけではありません。勇気づけられるのは最近、日産が発表する新車はとても光っていることです。欧州が開発した電気自動車(EV)「マイクラ」は1980年代に大きな話題を集めた「Be-1」を彷彿させます。世界でもEVの先駆けといわれる「リーフ」もモデルチェンジによってかなり仕上がりが良く、輝いています。

日産のEVはトヨタ自動車やホンダが人気のSUVをEVに脚色しているのに比べて、他社に先駆けて早くから開発、販売している経験が活かされているためか、乗用車として熟成しています。もちろん、エンジン車やハイブリッドの一種「e-POWER」も性能面で負けているわけではありません。
ゴーンの派手なパフォーマンスに学ぶ
大赤字の理由は明快です。カルロス・ゴーンを追い出した後の経営陣がゴーンを真似た財務数字のトリックに興じて、しっかりした経営戦略を立て実行することを怠ったことです。優秀な人材は経営陣の無能さをすぐに見抜きますから、会社の将来を身限って転身を選びます。それが日産から大量の人材流出を招き、「日産は人材の宝庫だった」と他の業種が驚く皮肉な現象が広がったのです。
だからこそ、エスピノーザ社長は自ら開発や生産、販売の現場を訪れて社員らの声を聞き、励まし合って日産の空気を変える努力をしてほしい。新車開発の豊富な経験を持っているですから、開発陣とは深く突っ込んだ議論ができますし、生産や販売の苦しい状況に耳を傾け、打開策を話し合うのです。開発、生産、販売にふんだんに投資できるとは思えませんから、社長が毎日現場を訪れる「日参」を続けてほしい、
1999年に日産入りしたカルロス・ゴーンは再建計画「リバイバルプラン」をぶち上げ、経営改革を断行する一方、現場を訪れて派手なパフォーマンスを演じて、日産から「トヨタには勝てない」と言った厭戦気分を一掃しました。エスピノーザ社長は、ゴーン氏のパフォーマンスを是非真似てください。社長が毎日現場を訪れば、社内にも経営陣に対する信頼感が醸成されます。

エスピノーザ社長にとって日産のリバイバルプランは「日参」なのです。お高く止まって「あっち向いてホイ」を指揮する余裕などはないのです。この覚悟を持って日産を舵取りし、社内全体で共有できれば、かならず目の前に「明日」が見えてきます。

