• HOME
  • 記事
  • 食・彩光
  • ウイスキー、ビールのクラフトブームが背中を押す 明治機械が製麦の第一人者と提携

ウイスキー、ビールのクラフトブームが背中を押す 明治機械が製麦の第一人者と提携

 日本各地でウイスキー、クラフトビールが相次いで誕生し、地産地消のスターとして注目を浴びています。なかでもジャパニーズ・ウイスキーは世界的な評価を集め、投資対象になるほど高価格に。ところが、日本国内で製造されるビールやウイスキーに使用される麦芽は多くを輸入に依存しており、国産比率は10%以下。原料供給の制約が今後の拡大の足かせとなる恐れがありましたが、加速するジャパニーズ・ウイスキー、クラフトビールの市場創造力が食品機械メーカーの背中を押しました。

ジャパニーズ・クラフトが世界で人気

 明治機械が京都製麦研究開発(京都市)と業務提携しました。明治機械は製粉や飼料など食品機械で国内トップシェアを握る創業120年を超える老舗。京都製麦は「製麦の第一人者」と評価される篠田吉史氏が代表を務め、モルティングに関する研究開発や分析、醸造コンサルティングを主な事業としています
モルティングとは、大麦を発芽させて麦芽(モルト)にする「製麦(せいまく)」工程で、デンプンが糖分に変わり、ウイスキーやビールの製造に不可欠な糖化酵素が活性化します。伝統的な手法では、床に広げた大麦を定期的にかき混ぜて発芽させますが、現在は機械化された方法が主流です。

 明治機械は1899年(明治32年)の創業以来120年以上にわたって蓄えた技術と経験に、篠田氏が保有する専門的な知見やノウハウを加え、製麦事業を計画する事業者を取り込む考えです。明治機械の事業の裾野拡大に繋がるのはもちろんですが、日本発のウイスキー、ビールの底上げにも直結します。

 ジャパニーズウイスキーは、国産モルト原料使用が世界市場に向けた「売り」となっています。国産モルト原料の安定供給が確実になれば、より個性的なウイスキー、ビールを醸造できる基盤が整います。

投資対象として取引される

 ウイスキーは世界からの需要に追いつかない状況です。例えば「イチロー 秩父」と呼ばれる埼玉県秩父市に蒸留所を置くウイスキー「イチローズモルト」は世界的な品評会の高い評価を追い風にオークションで高額落札されるほど。プレミアムウイスキーとしての地位を確立していますが、定価での入手が難しい状況が続いています。

 北海道の厚岸町で生産される厚岸ウイスキーも販売と同時に売れ切れる状態が続き、販売時は転売禁止を強く確約されるほど。生産が追いつかない事態が続き、価格も1万〜2万円を超えます。

 ただ、雨後の筍のように誕生するウイスキーやビールの中には、品質のばらつき、さらに生産拡大に伴う品質の不安定さも指摘されています。大量に生産するため、せっかくの醸造技術とノウハウが追いつかず、期待した味との違いから思わず「これがあのウイスキーか?」と思わずラベルを見直す製品も出てきています。ウイスキーを専門とするバーでも、高い人気を集めていたクラフトウイスキーを品揃えから取り下げたところもあります。

国産モルト原料が安定供給すれば世界はさらに近く

 クラフトビールもあちこちで誕生しており、差別化が難しくなっています。単に地元のクラフトビールではお客さんは集まって来ません。

 寿司ブームを思い浮かべてください。江戸時代から継承された手で握る技術を機械で再現したことで回転寿司チェーンとして事業化され、海外進出をてこに世界的な寿司ブームを作り上げました。ウイスキーやビールも生産体制が機械化などで整い、日本産のモルト原料の生産供給が安定すれば国内市場はもちろん、「日本ならでは」をブランドにかならず世界市場で躍動するはずです。

関連記事一覧