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AIだけじゃない!北海道・和寒のかぼちゃの種もスタートアップの果実に!!

 「わっさむペポナッツ」。旭川駅に隣接するイオン店内を通り過ぎようとしたら、舌を噛みそうな文字が並んだPOP(ポップ)に目が釘付けされました。なんか昔に同じ響きの流行語を聞いた覚えがあります。「ペンパイナッポーアッポーペン」。青森県出身の古坂大魔王が扮するピコ太郎が2016年にヒットさせた動画でした。

「わっさむペポナッツ」に目が釘付け

 ペン(pen)、アップル(apple)、パイナップル(pineapple)の3語を呟き、手に持つペンでアップルに突き刺すジェスチャーを繰り返し、「ペンパイナッポーアッポーペン」を唱えます。どんな意味があるのか不明ですが、米人気歌手のジャスティン・ビーバーに大受けしたのをきっかけに世界中で話題を呼びました。

 頭の中で「ペンパイナッポーアッポーペン」の歌声と動画が再生していたら、目の前に女性がにこやかに笑って呼びかけてきました。「和寒のかぼちゃのタネですよ」。POPがぶら下がるワゴンには透明なパッケージに包装されたタネがぎっしりと並んでいました。

ペンパイナッポーアッポペンじゃない、ペポナッツ

「商品名は昔、流行したペンパイナッポーアッポペンに似ていますね」と返そうと考えたら、ポチとボタンが押されたように5分間を軽く超える商品説明が始まりました。

和寒は日本一のかぼちゃ産地

 「このかぼちゃのタネは、タネを食べるために栽培し、収穫しているんですよ。栽培は旭川より北にある和寒町。小さい町ですが、和寒はかぼちゃの作付け面積が日本一。味はもちろん、とても美味しい。この食べられるかぼちゃはストライプペポと呼ばれる品種で、日本でよく食べられるかぼちゃとは違い、種を食べることを目的に品種改良したものです」

 「かぼちゃのタネは美味しさだけでなく、栄養価でも優れているのです。ナッツ好きですか?かぼちゃは健康に欠かせない鉄分、亜鉛はアーモンドの2倍もあるのですよ。かぼちゃ日本一の和寒の農家が、新しいブランド商品を作りたいと考え、事業化しました。商品化には苦労しましたが、農家さんが栽培したかぼちゃは全て購入して、商品化して販売しています」

 あまりにも滑らかなセールストークに「素晴らしい」と拍手したら、「もう10年も同じことを話しているんですから」と苦笑していました。聞き惚れてしまい、まず質問したのは「へえ、かぼちゃのタネって米大リーグの選手がひまわりのタネと一緒にベンチで食べているんでしょ」ぐらい。

大リーグのベンチで食べる風景も

 逆に日本ではあまり食べる習慣がありません。「日本でかぼちゃのタネを食べる人は少ないから、事業として厳しくないですか」と訊ねると、「そうですね。ただ、名前は言えませんが、どんと買ってくれるところがあるんですよ」と答えてくれました。かぼちゃのタネの話を反芻していたら、質問がどんどん湧いてきて和寒町へ取材に行きたくなるほどでした。とりあえず、女性の素晴らしいセールストークに敬意を表して購入することにしました。

訳ありだけど、美味しさは変わらない

「お勧めはどれですか_」とワゴンに並ぶ商品を眺めたら、「最初ですから、訳ありとあるタネをたくさん食べてみてください。皆さんの目から見たら、通常の品物と変わらないのですが、私たちの目でキズモノになったタネをパッケージにしています。美味しさは変わりませんが、お値段がとても安いですから」と指差します。「いやあ、欲がないなあ。いかにも北海道らしい商売をやっているね」とこちらが恐縮していました。

 購入した「訳あり」のパッケージを裏返すと、製造者は和寒シードと記載されています。「かぼちゃのタネだけで事業を興すなんて、勇気があるねえ」と思わず口から出てしまいましたが、目の前の女性は「小さな町である和寒のために、やれるだけことはやってみよう。それだけです」と率直に語ります。

かぼちゃのタネの事業化にまっしぐら

 「わっさむペポナッツ」は使用するかぼちゃの品種の名前がペポかぼちゃのタネ、ナッツから由来しています。タネは緑色の皮で、コーンフーレクの素材やお菓子のトッピングなどに使われています。購入した「訳あり」をコーンフーレクに混ぜ、牛乳を注いで食べると、いつも以上に深い味わいが出ました。かぼちゃのタネがどんな食品に使われているかと気になり始めたら、いつも食べている材料に利用されていることに気づきます。

 かぼちゃのタネを事業化するのは、とても難しいと思っていましたが、とんでもない勘違いでした。むしろ可能性の大きさを感じます。最近流行りのスタートアップといえば、人材紹介や人工知能などがキーワードに飛び交います。ちょっと飽きていました。

 そこに異彩を放つかぼちゃのタネが目の前に。味だけじゃなく事業化に挑む心意気にすっかり魅了されました。「ペンパイナッポーアッポーペン」に負けず、それどころか世界が欲しがる日本発のヒット商品に育って欲しいです。

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