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EV充電器もガラパゴスの道へ、高速道の充電器99%を1社独占、世界標準争いでも取り残される

 心配していたことが現実になりそうです。電気自動車(EV)の充電器規格の世界標準争いで日本が取り残される恐れが出てきました。携帯電話の性能・サービスで先行したにも関わらず、iPhoneなどスマートフォンの普及時にすっかり出遅れ、日本の携帯電話がガラパゴス化してしまった構図を再現するのでしょうか。

携帯電話と同じ構図を再現

 EV充電器のガラバゴス化を予感させる出来事がありました。公正取引委員会は高速道路のサービスエリアなどに設置されたEV用充電器の実態調査を公表し、事実上1社が独占していることを明らかにしました。公取委は競争を促す狙いもあって、高速道路会社は複数の事業者から選定するよう求めています。

 独占と指摘された会社は「イーモビリティパワー」。2019年10月に東京電力ホールディングスや中部電力、トヨタ自動車、日産自動車などが出資して設立しました。社長は東電出身者。公取委によると、高速道路上にある充電器445基のうち439基がイーモビリティパワー1社。占有率は98・7%。高速道路会社が充電器の整備を始めたころ、納入できる会社はイーモビリティパワーの前身企業しかいなかったなので、独占禁止法違反と判断しないそうです。

高速道の充電器は1社独占

 経済産業省と国土交通省はEV普及に向けて、高速道路で充電できる数を2025年度までに2倍以上に増やす計画ですが、高速道路会社は現在のイーモビリティパワーと事業を継続する考えですから、他社の充電器が増える見通しはほぼなさそうです。

 イーモビリティパワーの出資企業をみたら当然です。東電、中電、トヨタ、日産など日本のEVを主導するメンバーが揃うのですから、新たな参入の可能性はゼロとはいいませんが、新たなライバル企業が登場して競争が始まる状況は考えられません。競争によって技術やサービスが進化することもほぼないでしょう。

 しかし、日本国内のEV充電器の供給体制が1社独占として継続したからとって、その余勢をてこに日本市場から飛び出すことはないでしょう。きっと日本でしか通用しない規格として世界から取り残されるだけです。

日本の規格は世界で先行したが

 EVの充電器規格は大きく4種類に分かれています。日本はCHAdeMO(チャデモ)と呼ぶ方式を開発する一方、欧米はCCSを、中国は現在のGBを規格化しています。EV世界最大手の米テスラは国や地域に縛られず、独自のテスラ方式を設定し、利用しています。規格の違いは電源への差し込み口の違いなどで、そのままでは互換性はありませんが、変換アダプラーを利用すればどの方式でも充電できます。テスラを保有する日本のユーザーが日本国内でテスラ以外の充電器を利用できるのも、この変換アダプターを保有しているからです。

 現在は乱立するEVの充電規格ですが、実は日本はチャデモ方式を世界標準にするよう中国などへ働きかけていました。 世界のEVの量産化では三菱自動車工業「アイミーブ」、日産日産「リーフ」が口火を切り、日本の充電器規格が世界で先行し、主軸になる可能性があったからです。EVを戦略的に展開する欧米自動車メーカーは当然、反発。欧米規格としてCCSを提唱し、チャデモに対抗します。日本は欧米に並ぶEV大国である中国と連携すれば、チャデモ方式は欧米に対抗できる勢力になると踏んでいました。

テスラの急浮上で米国が追随

 しかし、世界標準規格に押し上げるためには、利用するEVの普及が不可欠ですが、肝心の日本のEV量産が世界で出遅れています。ウロウロしている間にテスラが世界のEV市場を席巻、その結果として独自の方式を推進するテスラが世界で使われ、日本、欧米、中国とは異なるテスラ方式が一気に世界標準に向かって浮上しています。

 日本のガラパゴス化の決定打になりそうなニュースが舞い込んできました。米GMがCCSの普及を諦め、テスラ方式を採用することになりました。すでにフォードもテスラ方式を全面的に採用することを表明しており、北米市場はテスラ方式で統一される見通しです。

日本はEVも規格も取り残される

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