浪江駅そばに飲食店が集まっています。

浪江町に戻った輝き、日本の「地方」を照らすか(その2)

「そうですよね」、夜に飲み歩いてタクシーで帰るお客さんが浪江町にどれだけいるのか。タクシー運転手さんは朝から働き、深夜までは無理です。「歩いて帰るしかない」と諦め、帰り道のルートをもう一度復習していたら、お店のドアが開きます。「マスター、生ビール飲める?」。マスターは「瓶ビールもありますよ」と返したら、そのお客さんは「お金は持っているぞ」と着ているジャンバーのポケットを叩きます。マスターは独り言のように「これだけ酔っ払っていたら」と呟いたら、そのお客さんは「じゃあ、良いよ」とドアを閉めてしまいました。

「かなり酔っていたね」。「短期の人かなあ、お客さんも短期?」と私に聞きます。「いやあ、私は旅行です」「あっそう、どこに泊まっているのか?」「◯◯ですよ」「あこまで歩いて帰るの?6号線に歩道ってあるの?いつも車でしか通っていないから、歩道があるかどうか知らないよ」と苦笑します。

そして再びドアが開きます。さっきのお客さんです。「お金は持っているから・・・・」と言って再びポケットを叩きます。マスターは「お客さん、かなり酔っているようですから今夜はもう飲まない方が良いですよ」。まるで映画のシーンです。実際、函館を舞台にした映画で見たことがあるのを思い出しました。

浪江町の1軒目も2軒目も、私がいつも飲んでいるお店の雰囲気と変わりません。いずれも会社の上司と部下、女性だけの二人連れ、家族などのお客さんが訪れ、いつものように愚痴を言い、笑います。浪江町の夜はどこにでもある夜でした。違いはタクシーが午後9時以降走ってくれず、私以外、道をよろよろと酔っ払って歩く人がいないだけです。

驚いたのはホテルまでの道のりは行きと違ったのです。街灯が明るく照らしてくれ、酔いも手伝ってすぐにホテルに着いてしまいました。楽しい夜でした。ホテルに着いたら、ホテル宿泊のお客さんがフロントの人に「やっぱりスナックでいっぱい飲まないと寝れないよ」とお店探しを頼んでいました。ちょうど戻ってきたところだったので、飲食街の電照看板を見せながら、「浪江駅前にいけばありますよ」とアドバイスしました。私はこの看板を見て勇気をもらいました。「いつもと変わらないけれど、いつもと違うんだぞ」とお店の皆さんの気持ちを感じます。さて、ホテルの玄関で会ったお客さんはホテルのスタッフに「タクシー呼んでよ」と頼みます。答えは一つしかありません。「いやあ無いですよ」。私は酔った勢いもあって「タクシーが無くても歩いて20分で着きますよ」。

明日は暴風雨、原子力災害伝承館へタクシーで、決める

そのお客さんは「それはない。人間は20分も歩くことはしないですよ」と笑い返します。私も「そうかもしれないなあ」と思いながら、部屋のベッドへ直行してトラックの走行音など全く気にならずに翌朝まで熟睡しましました。 そうそう、翌日は暴風雨の天気予報でした。双葉町の東日本震災・原子力災害伝承館へ行来ます。歩いて行こうかなと思っていましたが、もう無理かなと観念。朝起きたらタクシー会社へまず電話しようと決めました。天気予報通り、翌朝はトラックの走行音と激しい雨と風で目が覚めます。

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