セブンシスターズ蘇る 石油利権が国際政治も脱炭素もぶち壊す

 1970年代まで世界の石油利権を独占していた国際石油資本「セブンシスターズ」の蘇りを告げるニュースです。

 米国のトランプ大統領はベネズエラのマドゥロ大統領の拘束作戦について米国議会に対し事前に通知していないにもかかわらず、石油会社に対しては作戦前に漏らしていました。米ウォール・ストリート・ジャーナルは作戦を実行するおよそ1ヶ月前、米国の石油会社幹部に「準備しておくように」とほのめかしたと報道しました。米国議会よりも石油会社を優先する!驚きを超えて米国の政治権力の異常な現実を物語ります。

1970年代まで世界の石油利権を独占

 事実、作戦終了後にトランプ大統領は石油大手が数十億ドルを投資してベネズエラの老朽化した石油精製プラントを一新すると言明。大統領を拘束する暴挙という強烈な脅しもあって、ベネズエラは米国の命令に従ったかのように石油3000万〜5000万バレルを供給すると発表しました。

 世界最大の原油埋蔵量といわれるベネズエラの石油権益が米国の管理下に再び戻ることになります。

 なぜ再び戻るのか。キーワードはセブンシスターズ。その存在と歴史を簡単に振り返ります。メンバーはエクソン、モービル、テキサコなど米5社、BP、ロイヤル・ダッチ・シェルの欧州2社。第二次世界大戦後から1970年までサウジアラビアなど中東産油国が反旗を翻すまで世界の石油利権をほぼ独占。巨大な経営規模から石油メジャーと呼ばれ、世界各国の政治や経済に深く関与する多国籍企業の象徴でした。

世界の政治、経済に深く関与

 なにしろ石油資源は膨大なマネーが渦巻く世界です。石油産出国の政治経済、開発などの投資マネーを供給する銀行、原油を精製するプラントメーカーなど数えきれない利害が蜜に群がるアリのように結集するのですから。石油資源を巡る国際政治、領有権争いが過熱化してしまい、時には政権交代や内乱に発展することもたびたび。

 その陰にはセブンシスターズが政治経済を動かすシナリオライターとして暗躍していると言われ、企業の利権が国家より優先されると批判を浴び続けました。セブンシスターズ=国際政治を混乱させる多国籍企業の悪名となっていました。

 ベネズエラはまさに典型例です。米国の裏庭と称された南米の石油などの資源は石油メジャーに採掘から精製、販売まですべてを握られていました。米国は重質油で扱いにくいベネズエラの原油を安く買い叩き、高度な精製能力で高く販売してきたのです。

 ベネズエラから見れば、本来なら自国が享受すべき巨大な利益が米国に流出してしまう現実を受け止められるわけがありません。米国資本とつながる富裕層などが政治、経済を牛耳り、多くの国民が貧しい生活を強いられていたのですから。

チャベス大統領は米国資本を追い出す

 180度転回したのが1999年。チャベス大統領が国民の大半を占める貧困層の支持を集めて誕生しました。軍隊時代から米国に従属する国会体制に抗議してクーデタを起こし、投獄も経験。その後は武力闘争から政治活動に転換し、大統領選挙で勝利を手にします。

 2007年には大半の石油施設を国有化、米国資本を追い出します。政治思想はマルクス主義者を自称するぐらいですから、米国とは全く反りがあいません。ただ、政権は混乱し続けます。米CIAの支援を受けたクーデターにも遭いますが、なんとか乗り切りながらもベネズエラは混乱と貧困の悪循環から抜け出せません。副大統領を務め、継承者を自負するマドゥロ大統領でしたが、政情は火に油を注ぐ状況が続くだけでした。

 トランプ大統領は「ベネズエラが米国の石油を盗んだ」と発言していますが、それはセブンシスターズが抱く思いを投射しています。はたから見れば石油メジャーの横暴と捉えることもできますが、彼らから見れば石油利権の死守はもっと非情なものでした。

「石油の1リットルは血の1リットルだ」。イラクがクウェートに侵攻した1990年の湾岸戦争の時、米国シェルの経営幹部から言われました。日本は湾岸戦争の有志連合軍に参加せず、巨額の援助金を支払うことを選びましたが、彼は「日本は金さえ払えば、石油が手に入ると勘違いしている」と非難しました。石油メジャーにとって石油利権を巡る国際政治、戦争は常識でした。

グリーンランドの領有権も資源が狙い

 トランプ大統領はベネズエラに続き、コロンビア、メキシコ、グリーンランドなどにも言及しています。南米でもないグリーランドの領有についても明言しており、その理由としてロシア、中国に対する警戒、安全保障を加えていますが、本音はグリーンランド、そして北極海に眠る資源。恩恵はもちろん、石油メジャーが手にします。

 新たなセブンシスターズの時代が始まるのでしょうか。トランプ大統領の発言を見る限り、かなり確率は高そうですが、それは国際政治の秩序が石油などの巨大利権で崩され、そして化石燃料の復権を宣言することと同じです。

 地球温暖化に向けた脱炭素によるは夢物語へ。地球は温暖化と戦争によって真っ赤に燃え上がってしまうのか。空恐ろしい。

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