鳥取県は鬼太郎、妖怪がいっぱい でも、そろそろ次の「キャラ変」を生む神通力も

 鳥取県のJR境線は、凄いことになっていました。

列車座席の背もたれに

米子駅の階段

JR西日本の境線は列車、座席、駅名に

 JR西日本の米子駅と境港駅を結ぶ18キロの境線は、「鬼太郎列車」「ねずみ男列車」など妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪のイラストが描かれた列車が走り、路線の16駅すべてに妖怪名が愛称として付けられていました。鬼太郎の生みの親である水木しげるさんのふるさと、境港駅はもちろん鬼太郎駅、そして米子駅はねずみ男駅。境港にも米子駅にも近い米子空港は米子鬼太郎空港と名前を変更しており、最寄りの米子空港駅はべとべとさんの愛称。

 列車は外観に命名された妖怪が描かれ、座席にもさまざまなポーズで縫い込まれています。駅構内の階段にも妖怪が浮かぶ上がるようにペイントされています。境港駅から水木しげる記念館まで1キロ弱の「水木しげるロード」には177体の妖怪像が立っています。コロナ禍前までは年間400万人近い観光客が訪れ、鳥取砂丘を上回る時もあったそうです。

水木しげるロードには177体の彫像

 以前、訪れた時は水木しげる記念館が完成した直後。20年ちょっと前。幼い頃から水木しげるさんの漫画は大ファンでしたので、一度は行ってみたい境港に向かう良いきっかけでした。水木しげるロードに鬼太郎やねずみ男が立っていましたが、妖怪神社も手作り感があって微笑ましいぐらい。お土産屋さんもまばらで、普通の商店が多数派だった印象です。すでに境港はすでに鬼太郎ブームに包まれていましたが、少しおっかなびっくりでブームに便乗している空気が残っていました。

 ところが、2022年11月は違っていました。空港から乗ったタクシーの運転手さんは「コロナ禍前はもうどうしようもないほど観光客で混み合い、こんなもんじゃなかった」と懐かしそうに話していましたが、水木しげるロードは私も含めた観光客が列をなしています。駅から記念館までの商店は多く妖怪関連の商品を揃えており、交差点の角に昭和の香りぷんぷんの看板を掲げたスナックがとても目立っていました。

 米子駅に向かう列車も妖怪ずくめ。車体、車内の座席、駅構内の施設は視界に入るものは鬼太郎かねずみ男かねこ娘か。停車駅を告げる車内放送も「ゲゲゲの鬼太郎」の声優が務めます。こちらも思わず「鬼太郎〜」と目玉おやじの高音で叫びたくなります

キャラ変した鳥取県

 「キャラ変」とは鳥取県のためにある言葉だと痛感しました。 キャラ変とは、まじめで陰気なイメージをもられた人がギャグを言って陽気なキャラクターを演じるようなものといわれていますが、私が知る鳥取県は「スタバはないが砂場はある」ころ。お昼も夜も静か、というか寂しい街でした。米子や境港は地域の経済力があったせいか、鳥取市と比べて街の勢いは違いましたが、それでも水木しげるさんのキャラが最も突出していた県でした。

ぬらりひょん

 しかし、キャラ変も繰り返され、多くの場面で使われるとその威力は薄れます。岡山県倉敷市で、好きなデニム生地を使ったお店を回りました。岡山県の倉敷市や井原市はデニム生地の生産地で知られ、その品質は世界から高い評価を集めています。価格が高いので、目の保養のつもりでしたが、お土産屋さんに入ると「鬼太郎」の文字が見えます。のれんには「ぬらりひょん」。妖怪のキャラクターを使った多くのグッズが並んでいました。「岡山県でも鬼太郎かあ」と目玉おやじ風に声高に叫びたいところでしたが、その前に大枚をはたいて小物を買ってしまいました。

 その神通力には頭が下がりますが、どこもかしこも「水木しげる」ブランドに頼り、いつまで便乗するのかと心配になります。ゆるキャラブームもあって、日本全国で郷土の英雄などをキャラクターにした観光キャンペーンが盛んです。高知市の空港名は高知龍馬空港で、高知市内を歩き回ると明治の偉人を輩出した記念碑があちこちにあります。明治時代に偉人を輩出した素晴らしさは敬服しますが、もう100年過ぎても明治時代の遺産に頼るのはちょっと残念。

水木さんに続く素晴らしい才能を待っています

 水木しげるさんの偉業はすばらしい。大ファンです。でも、鳥取県が生み出す才能は水木さんだけで終わるわけがないはず。新たな神通力を発散するキャラクターがかならずいるはずです。今回は残念ながら、鬼太郎ファミリーの陰に隠れてお目にかかることはありませんでした。ちなみに好きなキャラは「ぬりかべ」。素晴らしい才能は突然、目の前に現れます。ぬりかべのように。

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