• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。

空港施設 社長の再任否決 大株主のJAL、ANA、否決理由を教えてください

 羽田空港の格納庫などの施設運営を手掛ける「空港施設」の社長が罷免されました。同社が6月29日に開催した株主総会で、大株主である日本航空と全日本空輸の2社は、乗田俊明社長の取締役再任に反対したのです。同社の社長人事は国土交通省の元事務次官が乗田社長に対し同省出身者の社長昇格を求めたことが明らかになり、事実上監督官庁による上場企業への人事介入として問題視されていました。乗田社長は上場企業のガバナンスを理由に国交省OBの要求を拒否しましたが、上場企業としての見識を貫いた社長が株主総会が再任を否決される結果には驚かされます。反対票を投じた日航と全日空はぜひとも罷免した理由を詳しく説明して欲しいです。

会社設立以来、社長は21年まで国交省出身

 東証プライム市場に上場する空港施設は、空港の格納庫や事務所、ホテルなどの賃貸事業、空港内の熱供給事業、給排水運営などを手掛けています。いずれも国交省が握る許認可権限と深い関連があるため、会社が設立された1970年から2021年までは国交省OBが社長に途切れることなく就任しています。今回罷免された乗田社長は21年6月、日航から初めての民間出身者として就任しています。

 1993年に店頭登録して以来、上場企業であるにもかかわらず当たり前のように運輸省、国交省の出身者が社長の椅子に座り続けているのですから、就任2年間しか経過していない乗田社長に23年6月で国交省出身の副社長に社長の椅子を譲るよう求めるのも肯けます。国交省の元事務次官は要請したことについて、なんの疑問を持っていなかったと察します。

拒否した社長は初の民間出身

 今回の株主総会で奇妙なのは議案として提出された取締役9人の選任のうち、否決されたのは乗田社長だけ。残る8人は可決されています。乗田社長の再任に反対票を投じた全日空は、派遣している同社出身者も含めた人身の一新を理由にコメントしています。しかし、乗田社長は21年に就任し、わずか2年間した経過しておらず、よっぽどの不祥事を起こしていない限り、再任拒否は理解し難いことです。

 一方、日航は議決権行使についてはコメントしていません。こちらも不思議です。全日空はコメントしているのに、日航は無言。どちらも上場企業として自社の株主のみならず、社会的公平性を背負う航空会社です。国交省と上場企業の関係が問題視されている空港施設の取締役選任の議案に関わっているのに、沈黙とは・・・。

日航はノーコメント、全日空は人心の一新

 今回の株主総会で提出された取締役選任の議案は、それなりの手続きを経て中立性、公平性を担保していたようです。国交省元事務次官よる役員人事の介入問題を受け、4月に外部の有識者による独立検証委員会が役員指名方針を提言。空港施設はこの提言をもとに指名委員会を経て新体制を編成したものです。議案のうち社長だけ疑義が生まれ、残る役員は問題なしと判断することは、選任の過程、議案の中立性、公平性に納得しているのかどうか。社長に疑義を持った理由を説明してほしいです。

 空港施設は乗田社長の選任が否決されたため、新社長として田村滋朗常務が同日開催の定時株主総会で選任されたと発表しています。田村社長は初めての空港施設生え抜き出身で、役員構成で国土交通省出身は初めてゼロとなりました。

 空港施設は、国交省の許認可権益のもとで事業を展開しています。1970年から国交省出身の社長が継承されてきたのも、国交省との太いパイプが重視されてきたからです。今回の役員人事で、この太いパイプは途切れてしまうのでしょうか。そんなことはないと反論するなら、なぜこれまで国交省出身者の社長が続きてきたのか。

 こうした事業の先行きに対する不安材料を大株主の日航、全日空をどう考えたのでしょうか。ここも疑問です。もし不安と考えたら、否決した乗田社長以外で国交省出身者ゼロの取締役構成に賛成するのは不自然です。疑問が絶えません。

国交省と航空会社は空港権益などで深い関係

 空港や運航などの権益を巡って国交省と航空会社は、深い関係にあります。空港施設のみならず、空港の離発着ゲート、便数、運航路線などは航空会社の生死を握る重要な案件は、国交省の許認可を経て決まります。例えば羽田空港の国際線ゲートを取れるかどうかは、収益に大きな影響を与えます。だからこそ、羽田空港の国際線は日航と全日空が多数を占めているのです。その恩恵の大きさを反映して、航空会社にも運輸省時代から時間経験者や幹部を引き受け、時には社長にも就任しています。

人命を守る責務を持つ航空会社には詳しい説明を

 一方で、航空会社は運航を通じて乗客の人命を守る重要な責任を背負っています。国民から国交省との関係に癒着ともいえる誤解を招くような事態は避けなければいけません。日航、全日空は簡単なコメントで手仕舞いせず、社長を罷免した理由を詳しく説明して欲しいです。そうしなければ、航空会社と国交省の間に国民が知らない何かがあるのではないかという邪推を生んでしまいます。

関連記事一覧

PAGE TOP