
Amazon GO 閉鎖 高級スーパー「ホールフーズ」を活かせないネット小売りの限界
アマゾンが、レジを不要にしたコンビニ「Amazon Go」を全店舗閉鎖します。入店時にアプリをかざせば、あとは棚から商品を取って店を出るだけで決済が完了する仕組みを採用。書籍のネット通販から世界最大の小売り業に躍り出た創業者・ジェフ・ベゾス氏ですから、「Amazon Go」で「未来のショッピング」を世界標準モデルに仕立てるはずと期待していました。ところが「Amazon Go」創設時のキャッチフレーズ「Just Walk Out(そのまま立ち去るだけ)」。ちょっと残念です。
Just Walk Out
「Amazon Go」は2016年からアマゾン社内で試験的に営業し、2018年から本格的に店舗展開を始めました。米国シアトルのアマゾン本社に隣接する店舗、ニューヨーク・マンハッタンの店舗を実際に訪れ、お客さんの出入りや使い勝手を眺めていたことがあります。24時間張り付いていたわけではありませんが、「未来のショッピング」を体験するといった躍動感はなく、静かな空気が漂っていた印象がありました。無人、レジ不要などを実現する未来の扉は予想よりも重いというよりは、お客さんのニーズに合っていなければ商品は売れないという当たり前の現実を目にした思いでした。
全店閉鎖を決断した理由として、無人店舗を実現するための設備投資が大きな負担だったと指摘する意見があります。店内には数百台のカメラを配置して監視するほか、商品棚に重量センサーを設置。人工知能(AI)で商品を識別していました。
閉鎖の理由は設備投資の大きさ?
しかし、アマゾンは先行投資の大きさで躊躇する会社ではありません。1995年の創業後、巨額赤字を計上しながらネットインフラに投資し続け、その後もデータセンター事業に日本円で20兆円を超えるプロジェクトを遂行中です。
レジ会計を不要、あるいは簡略するノウハウを十分に手にしたと評価する声もあります。ほぼ10年間の試行錯誤によって実店舗に応用する次代の架け橋になったというわけです。小手先の成果としか思えません。仮りに未来への授業料分の成果はあったととしても、「ウオールマート」を追い抜いて世界最大の小売りグループとなったアマゾンにとって貢献できたといけるかどうか。

「ホールフーズ」は最強の切り札なのに・・
なぜなら、アマゾンは最強の切り札、高級スーパー「ホールフーズ」を傘下に収めているのです。2017年に137億ドルで買収した「ホールフーズ・マーケット」は、富裕層も含めて大人気のスーパーです。野菜、生肉、魚介などおいしそうな生鮮食品が店内に飾られ、いろいろなレシピで調理された惣菜、牛乳、ジュース、ワインなどが豊富に陳列されています。品質は良いですが、値段は割高。でも、どれを食べようかと迷いながら商品を選ぶショッピングは一種のエンターテイメント。
実際、「ホールフーズ」をニューヨーク、ロサンゼルス、シアトルなどで訪ね、買い物した経験があります。商品はもちろんですが、店員のサービスはていねい。「ホールフーズ」の紙袋を持って帰る時は、なんか楽しいのです。2017年の買収当時に会ったアマゾン幹部が「ネット販売では得られない楽しい体験を提供できる。アマゾンにとって本当に良い買い物となった」と手放しで喜んでいたのも、納得です。
にもかかわらず、なぜ「Amazon Go」に「ホールフーズ」のノウハウを注入できなかったか。不思議です。ホールフーズの経営はアマゾンとの連携でオンライン販売で大幅に増加しているそうですが、その成功をどうしてレジ不要で無人の店舗で逆注入できなかったのか。「Amazon Go」はホールフーズに比べ小型店舗が基本ですから、とても無理と判断したかもしれませんが、とても無理といわれた書籍のネット販売を成功させたのがジェフ・ベゾス氏です。レジ不要の無人店舗で「ホールフーズ」を再体験できる「Amazon Go」バージョンを本気で考えれば、新たな「未来のショッピング」への道筋を描けたはずです。
それともネットの世界で大成功を収めたアマゾンにとって、実店舗のビジネスは矮小に見えたのでしょうか。アマゾンの限界を「Amazon Go」を通して垣間見た思いです。

