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小林製薬、日産、フジテレビ、社外取締役は企業に潜むDNAと闘わなければ、無能な存在

 社外取締役は機能しているのか。小林製薬、日産自動車、フジテレビで繰り広げられる経営の混乱を眺めていると、改めて責務を問い質す時を迎えていると痛感します。

責務と実効を考えるチャンス

 紅麹を材料にした深刻な健康被害を引き起こした小林製薬は、上場企業の中で優等生と言われるほど社外取締役を軸にしたコーポーレートガバナンスに取り組んでいました。ところが、健康被害を巡る取締役会の経緯をみると、とても機能したとは思えません。コーポレートガバナンスの権威といわれた一橋大学の伊藤邦雄名誉教授を擁していたにもかかわらず、対外的な発言はほとんどなく、創業家出身の会長、社長の横暴を見逃していました。

 直近の定時株主総会でも創業家からの影響力を抑えるため、取締役会の主導権を社外取締役に移す改革案を提案しましたが、大株主の創業家から否決される事態に。社会問題となった健康被害を教訓に創業家からの脱却を謳っていましたが、絵に描いた餅でした。創業家の本音は、全く手放す考えはなく、これまでの経営改革はその場しのぎの空疎なものであることが判明したのです。

 日産は2025年3月期で800億円の最終赤字を出す窮地に立っています。2019年12月に就任した内田誠社長が5年間、日産再建に剛腕を振るったカルロス・ゴーン氏が残した「負の遺産」から抜け出すことができず、新車開発、販売すべてに負のスパイラルに陥ります。元々、「社長の器ではなかった」「何も決められない人物」との声は就任当時から聴こえていました。

 2025年4月、内田社長に代わって就任したイヴァン・エスピノーザ社長は経営環境に対応したスピード感を重視し、新車の開発期間を大幅に短縮する考えを示しましたが、直近の新車開発の最高責任者はエスピノーザ氏自身。天に唾するような発言を知り、こちらも天を仰ぐ気持ちでした。

 日産の社外取締役は取締役12人のうち8人います。このうち取締役会の木村康議長ら5人は2019年から就任しており、内田社長の経営をを目の当たりにしています。不甲斐ない経営手腕に対する異議があってもおかしくありません。しかも、8人全員は今後も留任します。株主や従業員からみれば、社外取締役は無責任、形骸化しているとしか思えないでしょう。

文化放送はフジテレビ創立時のメンバー

 フジテレビは社外取締役が機能しているように思えます。テレビ取材では、社外取締役を務める文化放送の斎藤清人社長が度々登場し、中居正広氏による性被害事件の対応に追われるフジの経営改革について答えています。

 もっとも、文化放送は社外取締役としての立場が相応しいのでしょうか。フジテレビは1957年11月、ニッポン放送と文化放送が中心になって東宝、松竹、大映が参加して設立されています。文化放送は創業時から深く経営に関与して、現在も3・3%を出資する大株主です。フジテレビがひっくり返ってしまったら、文化放送にとっても損失です。社外取締役とはいえ、かなり利害関係者に近い存在です。フジテレビの経営陣が社内外から信用を失った状態の今、文化放送社長がリーダーシップを発揮するのは当然としか思えません。

 元々、フジテレビの場合、社外取締役が本来の中立的な立場にあったのか疑問です。性被害が発覚する前の2024年3月期でみると、親会社のフジ・メディア・ホールディングス取締役17人のうち社外取締役は7人。このうち斎藤文化放送社長、島谷能成東宝会長の2人は大株主の立場で、もう1人は産経新聞社出身。

 外形的に直接利害が絡んでいないと思われるのは、キッコーマン、大和証券、全日空、郵政省出身者の4人だけ。フジサンケイグループの実権を握る日枝久取締役相談役が会長、社長、グループ会社社長の人事を決め、親会社の取締役の人事を決めていた実情を踏まえれば、フジ・メディア、フジテレビの社外取締役は多勢に無勢。無力だったのでしょう。

上場企業の99・94%が採用

 社外取締役制度は、海外から日本の企業経営は透明性が無く、わかりにくいとの批判を受けて制度化されました。暗黙知とも呼ばれる「あうんの呼吸」を軸にした経営は、株主など外部からは日本企業は仲間内で経営判断しているように映り、中長期的な投資判断ができないと理解されていました。海外からの株式投資を招きたい政府や東京証券取引所はコーポレートガバナンスの「見える化」を掲げ、社外取締役の設置を広げた結果、今では東証プライムの上場企業の99・94%が社外取締役を選任しています。

 外見上、社外取締役など欧米並みの経営改革を達成したとしても、実効はまだほど遠いのが現状です。最大の障壁は、創業以来深く根付いた企業風土です。新入社員の頃から先輩後輩の関係を重視して社内勢力を築き上げ、経営トップに立ったら身内で固めてしまう。多くの企業で散見されます。言い換えれば、その企業独特のDNAが組織に充満しているため、社外取締役など外部の意見があったとしても、内輪の利害に合わない場合は組織全体で跳ね返してしまう強さを持っています。企業DNAは経営者だけでなく従業員の多くに住みついています。

小林製薬、日産、フジテレビは氷山の一角

 小林製薬、日産、フジテレビの経営問題は、氷山の一角に過ぎません。本気で企業改革をするなら、企業のDNAと闘うしかありません。それが社外取締役にできるのか。日本企業に限らず欧米の有力企業でさえ闘いに敗れることもあります。経営改革を考える際、この企業DNAとどう闘うかをもっと考える必要があります。

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