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次代の技術を見極める目を失う

新たな破壊者が現れない マスクのツイッター買収、アイガーのディズニー復帰 米国の強さに陰り?

 ボブ・アイガー氏が再び世界の舞台に登場しました。(以下、敬称を略します)。ディズニーは11月20日、CEOのボブ・チャペックが退任し、前任者のボブ・アイガーがCEOに復帰すると発表しました。復帰のニュースで株価は上昇、時価総額は105億ドル増えたそうです。ディズニーのスターの再登場は果たしてディズニーの強さを蘇らせるのでしょうか。むしろ、米国の強さに陰りが出てきた兆しに見えてしかたがありません。

アイガーの後にアイガーとは!

 アイガーは2005年から15年間、映画製作会社を積極的に買収するとともに、ネット配信にも進出。ディズニーを映画会社から総合メディア会社へ進化させました。2020年にチャペックにCEOの座を譲り、21年に会長の椅子から離れ、引退したばかりです。わずか一年です。ディズニーの経営状況はアイガー引退からわずか1年間で再び復帰せざるを得ないほど悪い状況に追い込まれていました。

 チェペックがCEO就任後、コロナ禍が拡大し、映画やテーマパークなどが低迷。ネット配信の「ディズニー・プラス」も大幅赤字に陥ります。ただ、今年に入ってCEO続投が決まり、従業員の削減など経営改革に取り掛かる寸前でしたが、突然の解任。巨額報酬を得るCEOですから、それだけの責任を問われるのは当然ですが、よほどディズニーの社内が混乱していたと推察するしかないです。

アイガーは自らの成功を否定できるか

 それではアイガーの復帰でディズニーに輝きが戻るのか疑問です。彼の経営は剛腕の一言に尽きます。2005年の就任後、スティーブ・ジョブスが創業したコンピューターグラフィックのピクサー・アニメーション・スタジオ、マーベル・コミック、ルーカス・フィルム、20世紀スタジオと有力なプロダクションを買収し続けます。2019年11月には動画配信サービス「ディズニープラス」を始め、ネット映像ビジネスについに進出を果たします。しかし、ジョージ・ルーカスが創り出した歴史的ヒット作品「スター・ウォーズ」シリーズを乱作するなど映画事業の力を失わせています。

 ただ、ディズニーの苦境を再建することは、アイガーにとって経験済みで、突然の交代も驚きではないはず。自ら演出していたのかもしれません。なにしろ前任者はマイケル・アイズナー。1984年に就任して以来、苦境にあった映画、デーマパークを再建するとともに、テレビやデジタルサービスにも手を広げ、総合メディアへの道筋を引きます。しかし、結局はアニメなど映画は低迷に戻り、創業家のディズニーとも衝突。その独裁的な経営手法は株主からも批判が集まり、株主総会で事実上NOを出されて2005年9月に退任せざるを得ませんでした。

 アイガーはまるでアイズナーと同じ道を歩み、2年前に経営を手放し、自らの経営の始末を立て直します。違うのは、アイガーに代わる人材がディズニーにいないことです。

破壊者のマスクが会社再建をできるのか

 ツイッターを買収したイーロン・マスクも同じです。ツイッター創業者のジャック・ドーシーは当初から広告モデルの構築に苦労して、事業が軌道に載らず、マスクに440億ドルで売却します。マスクは弟と創業したソフトウエア会社を売却した利益をもとにピーター・ティールらと決済システム会社「ペイパル」を設立して巨額資金を手にします。この資金をてこに電気自動車「テスラ」、宇宙事業「スペースX」などを設立。テスラもスペースXもこれまでの常識を打ち破る手法で成功させています。

 アイガーもマスクも華麗な経歴からわかるように、ディスラプターの典型例です。ビジネスの常識に囚われず横暴ともいえる破壊を繰り返して全く新しい事業分野を切り拓く。

本来ならディラプターが後継であるべき

 ただ、彼らの輝かしいディスラプターの威光が鈍り始めています。まずアイガーはディズニーの再建に向けて自身が築いた成功を否定できるのか。それとも軌道修正で立て直すのか。マスクは自ら会社、新規事業を創造するのではなく、ドーシーらが築いたツイッターのビジネスモデルをどう修正して会社再建するかに手腕が試されています。

 米国はディスラプーを相次いで輩出して、ビジネスの世界を支配しました。アップル、グーグル、ユーチューブ、フェイスブック(現メタ)はじめシリコンバレーを中心に誕生したスタートアップのバイタリティが「世界を変える力」を生み出しました。

 ディスラプターがもたらす破壊力を求めるなら、ディズニーもツイッターも次代の経営を築く新しいディスラプターに託すのが本筋。ディズニーはアイガーのディズニーに戻るのでしょう。それではツイッターは?冷静に眺めると、世界一の金持ちで自らを「言論の自由の信望者」と自称するマスクが、その独裁的な経営手法で自らの信条に従ってツイッターを遊び道具するように見えてしまいます。

メタのザッカーバーグもふらふら

 アイガー、マスクに代わる人材が見つからないのでしょう。フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグもふらふらし始めています。米国の強さを生み出し続けたシリコンバレーにも金属疲労が出てきたようです。ポキッと折れた後、世界を驚かすディスラプターがどこから登場するのか。日本であって欲しいですが・・・

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