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キヤノン 外部人材で初めての女性取締役誕生 まるでジグソーパズルのピース 社内登用は?

 キヤノンが元消費者庁長官の伊藤明子氏を社外取締役候補とすると発表しました。キヤノンにとって初の女性取締役の誕生です。現在、5人の取締役のうち女性がいないため、海外など一部の機関投資家が経営のあり方に疑問を示し、前回の株主総会で御手洗冨士夫会長兼社長ら取締役の選任賛成の比率が大幅に低下していました。御手洗会長の信任比率は過半ギリギリ。ちょと信じられない比率でした。その答が伊藤さんの新しい取締役候補の指名なのでしょう。

御手洗会長の信任は過半ぎりぎり

 ちょっと距離を置いて眺めてください。すぐに素朴な疑問が湧くはずです。キヤノンは「女性取締役が不在」の意味を取り違えているのではないか。「女性」がいれば良いのか?外部からジグソーパズルのピースが足りないと指摘されたから、空いたピースを埋めればと言ったかのような、まるで無理矢理当て嵌めたような発想を感じます。キヤノン社内から女性取締役に相応しい人材はいないと宣言しているようで、とても残念です。

 まず、誤解しないでください。伊藤さんについて異論を述べているわけではありません。素晴らしい人物です。京都大工学部建築学科を卒業して1984年に建設省に入省。国交省で初めての局長として住宅局長に就任。その後、2019年に消費者庁長官にも付いています。現在は伊藤忠商事の社外取締役を務めています。

 キヤノンは社外取締役として元最高裁判事の池上政幸氏、元環境事務次官の鈴木正規氏も候補として発表しています。2024年3月に開催する定時株主総会で正式決定する予定です。

 経団連会長も務めた御手洗会長の経営手腕に対する信任は急低下しています。今年3月の株主総会での取締役選任に対する支持比率は50.59%。名経営者としての評価が定めているにもかかわらず、その後の後継者選びにつまづき、合計3回も社長復帰を繰り返しています。取締役に女性が不在であるという批判は、御手洗会長に対する経営全般に対する厳しい見方の一部に過ぎません。

最優先はキヤノン自らESGの実践

 キヤノン自体は、日本を代表する企業です。業績の良し悪しに左右されるというよりも、日本の企業が今後歩んでいく経営の進化を先取りする判断、実践が求められています。国籍や性別などが制約にならないよう才能がある人材がどんどんその力を発揮し、企業の新たな成長を生み続ける先例が期待されているのです。

 伊藤明子さんは国交省の局長、消費者庁官を歴任しています。日本の政府、政策に精通しており、消費者の目線から社会の変化を察する経験をお持ちでしょう。キヤノンの社外取締役経営として幅広い見識から、御手洗会長はじめ経営陣にアドバスするはずです。

 しかし、キヤノンの経営を考えたら、社外取締役にはもっと異色な目線を持つ人材が相応しいのではないでしょうか。御手洗会長は1995年に初めて社長に就任して以来、会長と社長を行ったり来たりしながらも経営の実権を30年近くも握り続けています。創業家出身とはいえ、キヤノンのような世界企業の基準を考えたら、異例と言わざるを得ません。

長期に実権を握る御手洗会長に異論を唱える人物は?

 社外取締役は御手洗会長の耳の痛いことも言える人物がふさわしかったのではないでしょうか。消費者庁長官を経て社外取締役というキーワードを重ねると、阿南久さんを思い出します。消費者運動の要職を務めた後、消費者庁長官に就任。その後に雪印メグミルクの社外取締役に選ばれました。阿南さんの前任の社外取締役は日和佐信子さん。消費者運動でも阿南さんの先輩格にあたる方です。

 日和佐さんが社外取締役に就任した2002年、雪印メグミルクは中毒事件などをひきおこし、経営破綻寸前に追い込まれ、食品メーカーとしての信任は地に堕ちていました。日和佐さんは全国の工場現場などを回り、会社全体の空気を肌で感じながら、生え抜きの経営者らに手厳しい意見を述べます。厳しいだけでなく、会社と消費者との距離を縮め、信頼回復に努めました。阿南さんは日和佐さんの思いを継承して会社との距離感を保ちながら、食品メーカーが見落としてはならない視線を問い続けました。

 キヤノンの御手洗会長は経団連会長として今の言葉でいえばESG、SDGsの実践を率先して唱えてきました。自らの会社で実践してほしいです。キヤノンで優秀な女性取締役はたくさんいます。どうして外部から登用するのか。不思議でしょうがありません。

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