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イーロン・マスク テスラを人工知能でトランスフォーマー ヒト型ロボットに変身する日

 イーロン・マスクが人工知能を使って「究極のクルマ」に突っ走っています。直近の米「TIME」誌9月6日号は特集「Inside Elon Musk’s Struggle for the Future」のタイトルを掲げて、彼の人工知能を活用した事業戦略と発想をリポートしています。「ヘェ〜」と驚くエピソードが多く、「シリコンバレーの今の空気」がわかる素晴らしい記事です。中でも興味深かったのが人工知能を使ってヒト型ロボットの開発物語でした。研究成果は電気自動車(EV)「テスラ」に応用して究極の自動運転に挑戦するそうです。「TIME」誌に触発されたように公表したモルガン・スタンレーのリポート「テスラの自動運転研究」はマスクの挑戦を高く評価しており、テスラ株は10%も上昇しました。(注;敬称は略させていただきます)

 TIME誌でマスクの人工知能特集

 イーロン·マスク。詳しい説明は余計ですよね。彼はEVメーカーのテスラ、宇宙ビジネスのスペースXなどを創業し、直近ではツイッター(現在はX(エックス))を買収した世界最大の富豪です。若い頃から米国のスタートアップ事業に関わり、投資しているだけあって「未来ビジネスの成否」を目利きするセンスは抜群です。自ら創業したテスラやスペースXなどはほとんどの専門家から無謀と笑われましたが、予想を大きく上回るレベルで大成功を収めています。今話題の人工知能ビジネスについても早くから関心を持っており、Googleなど最先端の研究に挑んでいる企業・組織と意見交換しながら、事業化に着手しています。

 TIME誌で注目したヒト型ロボットの開発プロジェクトの概要は次のとおりです。イーロン·マスクは2021年8月にロボットの開発·実用化する計画を発表しました。その1年後の2022年9月30日、テスラは、「シリコンバレー」の中心街であるカリフォルニア州パロアルト市の研究開発拠点で人工知能に関するイベントを開き、成果を発表しました。

ヒト型ロボットに人間の脳

 試作ロボットは二足歩行し、観客に手を振ったそうです。身体を覆うカバーはなく、アクチュエーターや基盤、ファン、ケーブルなど機械部品がむき出しの状態で登場し、Wi-Fiなどで操作しました。足取りは遅く、デモの時間はわずか。文字通り、お披露目です。制御技術は、テスラの自動運転で培ってきた「AIオートパイロット」技術を活用していますが、お披露目のレベルからわかるように、まだ実用化には程遠いようです。テスラの自動運転技術はまだ発展途上。最近でもシステムの不安があるため、30万台を超えるリコールを実施しています。

 イーロン・マスクは完全自動運転の実現に向けて人工知能を研究する会社「xAI」を設立してスーパーコンピューター「Dojo」を開発しています。Dojoは数百万を超えるビデオを使って情報処理する能力を高めており、実際の運転では路上などかを撮影する動画によって判断能力を向上させているそうです。脳に匹敵する人工知能にまで鍛え上げたら、テスラに注入され、文字通り完全自動運転に移行するのでしょう。

テスラの完全自動運転を目指す

 そのDojoはヒト型ロボットにも備え付けられ、人間の脳と同様に機能するはずです。どんなロボットを演じるのでしょうか。名称を見ればわかります。2年前の構想発表時は「Tesla Bot」でしたが、今は改名して「オプティマス」。ロボットが好きな人なら、ピ~ンときますよね。 そう「トランスフォーマー」です。

 トランスフォーマーはもともとは日本のタカラが考案して、米国のハズブロと提携して映画やアニメの世界で活躍するキャラクターに育ちました。車とロボットの変身を繰り返して、地球を支配を狙う悪と闘うのです。映画製作にはスティーブン·スピルバーグらが参加し、今や世界的なキャラクターです。主役のロボットが「オプティマス·プライム」として登場します。ヒト型ロボットの名前の由来はイーロン。マスクに訊いていませんから、わかりませんが、トラスフォーマーを意識しているのは間違いないでしょう。

ロボットの名は「オプティマス」

 オプティマスは、仮に人間と同レベルの思考能力を持つと考えたら、その活動領域は一気に広がります。力仕事や労働力が不足している介護や危険な肉体労働などで活躍するだけでなく、人間と一緒に生活するパートナーとしての役割も担うかもしれません。イーロン・マスクは月や火星など宇宙への移住計画を進めていますから、宇宙での作業に従事することも考えているのでしょう。

 トランスフォーマーは2023年8月に公開された「ビースト覚醒」で7作目を数えます。今回のテーマは「ワンチーム」。地球を支配しようとする悪と闘うため、人間とトランスフォーマーの「オプティマス・プライム」らと一体となって対抗します。

 イーロン・マスクはEV「テスラ」の未来をプライムと重ね合わせているはずです。テスラはある時は車、ある時はロボットに変身。マスクの目には、もうテスラが車とロボットを繰り返して人間と一緒に暮らす未来が見えているのです。

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