
日本ガイシ NAS電池から撤退 残念!エコ電力のエースは技術競争で取り残される
日本ガイシが2002年に世界で初めて実用化した「NAS(ナトリウム硫黄)電池」から撤退しました。NAS電池はメガワット級の大容量の蓄電能力を備えているので、太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気を電力消費が異なる昼夜の時間帯に合わせて効率的に利用できるエコ電力システムを構築できます。しかも、電池のサイズは従来の鉛電池に比べ3分の1とコンパクト。原子力発電などと違い、大規模な発電所を建設する必要がないため、地球温暖化を阻止する電力の脱炭素を後押しする日本発の電力インフラ技術として期待されていました。
2002年に世界で初めて実用化
昼間に太陽から得たエネルギーをNAS電池に貯め込み、夜間に消費する。無駄がない美しいエネルギー循環です。実際、2018年に産油国である中東ドバイで大型プロジェクトを受注し、2018年に納入しています。当時、中東諸国は将来の石油資源枯渇に備えて再生可能エネルギーの導入を推進しており、ドバイも大規模な太陽光発電所を建設し、昼夜など時間帯によって異なる需給調整にNAS電池を採用したのです。日本ガイシは狙い通りに見事に的を射ることに成功したのです。「さあ、これから弾みがつく」と誰しもが期待しはず。
ところが、加速する再生可能エネルギーの普及が思わぬ逆風に。発電効率が大幅に向上したうえ、発電機器のコストがどんどんダウン。しかも、中国がリチウムイオン電池の量産を国策として推進したため、電池コストが低下。合わせて材料費も高騰し、逆風は強くなるばかり。
NAS電池を組み込まなくても、再生可能エネルギーの発電インフラが効率良く構築できる環境ができあがり、日本ガイシのNAS電池は蓄電池の受注競争で劣勢に回ってしまいました。小林茂社長は「ここが潮時。デジタルや半導体関連に人的資源や経営資源を投入したい」と撤退を決断したそうです。
NAS電池に続く画期的な技術を期待
石油やガスなどを輸入に依存する資源小国の日本にとって、NAS電池は電力を無駄なく徹底的に利用できる画期的な発明でした。発電源の主役に躍り出た再生可能エネルギーの将来を考えても、国土の大半が山地が占め太陽光や風力を利用した発電所の適地が少ないだけに、発電した電気を大事に蓄電して効率良く消費する電力のエコシステムの構築は今後も必須です。当然、日本での経験とノウハウは世界の多くの国でも活用できます。資源小国の日本が産油国のドバイにNAS電池を輸出したことで証明済みです。
残念ながら、NAS電池は蓄電池の開発思想からみれば、時代に取り残された大艦巨砲主義だったかもしれません。大容量の蓄電が売り物でしたが、時代はリチウムイオン電池など小回りが効くフットワークの良い電力インフラを求め始めていました。
NAS電池に続く日本発の画期的な発電システムが登場していません。太陽光、風力などいずれも欧州や中国が主導権を握っています。最近も、三菱商事が海上風力発電計画を突然、中止するなどむしろ後手に回る動きが目立ちます。日本から世界が再び注目する電力インフラが誕生することを期待しています。
◆ 写真は日本ガイシのHPから引用しました。

