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ホンダが消える48 今こそ魔改造、魔破★掃一郎が証明した強さの源泉「本田宗一郎」

 ホンダは今こそ本田宗一郎の創業精神に立ち返ってゼロから会社を創造する時。心の底からそう考えています。もう日産自動車、三菱自動車との経営統合・提携の残影はサッと消しちゃいましょう。ホンダ自らの力を再認識して、電気自動車(EV)や人工知能、ロボット開発に邁進する時です。必要なら、自動車に限らずホンダの弱点を補強する提携を選べば良いのです。日産などとの協業を模索しているホンダを見て、何を迷っているのだろうと不思議に思っていたぐらいです。

掃除ロボットに驚異的なアイデアと技術

 そんな不思議を一掃する正解に出会いました。NHKのテレビ番組「魔改造の夜・技術者養成学校」第7回がホンダの強さを明快に示してくれたのです。しかも、その原点はやっぱり創業者・本田宗一郎さんでした。目から鱗、コロンブスの卵。あまりにもお約束通りで呆れると思いますが、ホンダの強さのスタートラインは「ここにある」と納得しました。

「魔改造の夜」は技術者が 家電やおもちゃを使って、短距離競争や跳躍力などで予想を超えるモンスターパワーを生み出するマシンに変身させ、その技量を勝負する番組です。過去にトイレットペーパーのホルダー、脚立、犬のおもちゃなど身近な商品を改造しており、その劇的な変身ぶりとパワーアップする「魔改造」に毎回、魅了されてしまいます。

 もちろん、番組の主役は技術者。日本を代表する大企業、中堅・中小企業から選抜された企業が技術者チームを結成し、一つのテーマに挑み、その性能を極限までの引き出すアイデアと精密加工を競います。「技術者養成学校」は「魔改造の夜」のスピンオフ版で、魔改造に挑む技術者を養成することを名目に掲げながら、アイデアや技術を捻り出すために七転八倒する過程を笑い、感動する内容となっています。

 ホンダの技術者が紹介された7回目は、過去に放送した「お掃除ロボット走り幅跳び」の舞台裏を解き明かしています。掃除ロボットを魔改造し、掃除機能以外に跳ぶという新たな機能を加え、飛距離を競います。

魔破★掃一郎は本田宗一郎

 ホンダの技術者チームは遠くへ跳躍する技術を探すために多くの失敗を重ねながら、最終的には掃除機をロケットに魔改造するアイデアに到達します。マシンの名前が振るっています。「魔破★掃一郎」。魔破はジェット機などで使われる速度を表す単位の「マッハ」に由来し、そのマッハにホンダ創業者の本田宗一郎さんをなぞらえて命名しました。

 本田宗一郎さんは戦後、2輪車で創業し、当時の政府の反対を押し切って4輪車にも進出、「世界のホンダ」を築いた日本の産業史に輝く経営者です。その本田宗一郎さんの夢は航空機への進出でした。その夢を叶える意味合いも込めて「魔破★掃一郎」と名付けたそうです。とても洒落が効いており、このマシン名だけで心をグッと掴まれます。

 ホンダとしてはロケット技術そのものは持ち合わせていません。しかし、本田さんの夢だった航空機「ホンダジェット」は2015年、米連邦航空局から型式認定を取得してついに実現。今では小型ビジネスジェット機として世界トップの売り上げを維持しています。三菱重工業が政府から兆円単位の支援を受けながらも失敗した旅客機の開発をホンダは単独で成功したのです。凄いと思いませんか。

 創業者の思いを乗せ、掃除機ロケットを空に跳ばせたい。そんな思いで集まった技術者チームは航空機、2輪車、4輪車からベテラン、若手が集まります。ロケットの推進力はCO2を充填したボンベ。その先には噴射ノズルを取り付け、マッハ4の速度で噴射し、上昇力を生み出します。部品として最も重要な噴射ノズルの設計、加工には航空機を開発した技術力と経験が欠かせません。

 さらに掃除ロボットを極限まで軽量化します。小型ロケットが放つ推進力を上昇力に変えるためには、軽量化した掃除ロボットの重心バランスを探す必要があります。当時、番組本番まで試行錯誤を重ねたそうです。

 ホンダ社内に蓄積された技術力と経験を結集し、成功するまで失敗を重ね続ける熱意。これこそがホンダを魔改造するエネルギーであり、未来を築くパワーです。

ウイングマークは青い鳥

 メーテルリンクが描いた童話「青い鳥」を思い出しました。ある日、兄妹のもとに魔法使いのおばあさんが現れ、孫を救うために「幸せの青い鳥」を探してくれと頼まれます。兄妹は旅に出て青い鳥を探しますが、さまざまな経験をしながらも見つけることができません。クリスマスの朝、母親が呼ぶ声に目を醒めた兄妹は、探していた青い鳥が目の前のカゴにいることに気づきます。「幸せは目の前にあっても、気づかない」という教訓として小学生の頃、先生が話していました。

 ホンダはこの2年間、日産を青い鳥と勘違いするなど自らの未来探しの旅に出ていました。すべてが勘違いとわかった今、改めて社内を見渡してください。素晴らしい技術者たちがいるではありませんか。ホンダのエンブレム「ウイングマーク」は実は青い鳥の翼だったのです。魔破★掃一郎で飛翔してください。

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