
ホンダが消える 60 今こそソニー「アフィーラ」でEVの閉塞感を拓く時
ホンダとソニーが共同開発している電気自動車(EV)「アフィーラ」。100年以上にわたって培われた燃焼機関エンジンに裏打ちれた自動車メーカーの歴史に縛られず、21世紀の新たな移動体「モビリティ」の創造につながる挑戦と期待していましたが、今ソニーとの連携には新たなミッションが加わります。「エンジン車の時代は終わる」、そして「EVこそ近未来のモビリティ」を証明することです。
ミッションは近未来のモビリティの証明
自動車を取り巻く経営環境は開発当初の4年前から一変。EVへ「全集中」したホンダの大胆な戦略は失敗し、2026年3月期で上場以来初めて最大6900億円の巨額赤字を計上する窮地に追い込まれています。来期にかけて2兆5000億円も損失処理しなければいけないため、2040年までに全廃すると宣言したエンジン車を延命し、好調に売れているハイブリッド車によって日銭を稼ぐ資金回収に「全集中」せざるをえません。
欧米の自動車メーカーも業績悪化を受けてEV戦略を軌道修正し、ハイブリッド車にシフトチェンジしています。
トヨタ自動車だけはEVへ大きく舵を切らず、ハイブリッド車を軸にエンジンの温存を進めた結果、業績悪化を極力抑えた格好です。CO2排出ゼロをめざすカーボンニュートラルに向けて、多種多様の駆動系を活用するトヨタの「マルチパスウェイ戦略」は政治に左右される環境規制の変化に柔軟に対応できる懸命な選択だったと評価する意見が広まっています。
エンジンからEVへの流れは変わらない
果たして、そうでしょうか。世界のEV市場は変調しているとはいえ、エンジン車からEVへ移行する流れに変わりありません。
30年前からわかっていたことです。トヨタは1997年に世界初のハイブリッド車「プリウス」を発売した後も、「ハイブリッド車はあくまでも繋ぎの役割」と説明。将来はEV、燃料電池車(FCV)へ移行し、CO2ゼロの自動車を実現すると明言しています。現在もトヨタは、EV、FCVの開発に注力しており、ブレはありません。
ただ、ハイブリッド車を軸にしたエンジン車の温存は、中国政府の後押しを受けた中国製EVが世界市場を席巻、主導権を握る時間を与えるだけと考えます。欧米や日本は、中国が制覇した市場に振り回され、今まで以上に守りの経営を強いられるでしょう。
「アフィーラ」はEVとして第一歩を踏み出していますが、BYDなど中国EVと真っ向から勝負する位置付けにありません。むしろ、新しい可能性をもたらす領域を創造するモビリティでなければいけません。
中国は欧米の高級車をコピーしたかのようなセダンやSUVを投入しており、車の性格は従来の延長線上にあります。自動運転の技術でも先行していますが、あくまでも移動する器の域を超えていません。
これに対し、ホンダとソニーの「アフィーラ」はホンダが確立した走行性能にソニーが持つ世界最強のセンサー技術をふんだんに移植し、自動車の枠を超えるモビリティに挑んでいます。自動運転はもちろん、ソニーがふんだんに保有するエンターテイメントのソフトや技術をつかって車内空間を「人間が自由になる空間」に変えるつもりです。
「アフィーラ」の乗車中は、ドライバーら乗り手は本を読んだり、映画を見たり、あるいは移動中の時間を仕事や日常から心身ともに解放する時空に一新するのです。BYDなど中国EVも技術やソフトウエアで負けいないと思いますが、すべてを総合して創造する経験とノウハウはソニーには敵わないでしょう。
「アフィーラ」の最強の競争力は、GMやベンツも含め世界の自動車メーカーが束になっても勝てないホンダとソニーの創造力にあります。これを発揮できなければホンダとソニーの提携は成功とはいえません。
ホンダが消えるかどうかを占う試金石
ホンダとソニーの「アフィーラ」はエンジン車、ハイブリッド車では実現しなかったプロジェクトです。そのミッションは「エンジン車、ハイブリッド車の終焉」を告げるとともに、EVが未来社会のインフラとして活用できるかの試金石でもあるのです。地上を離れ、空を飛ぶモビリティになっても変わりません。ホンダが再びEV戦略を本格稼働する際、盤石な自信を与えてくれます。
「アフィーラ」がEVとして成功し、未来社会への可能性を切り開くことができるか。「ホンダが消えるかどうか」を知る手掛かりになるはずです。

