
ホンダが消える58 上場以来初の赤字が6900億円 日産と同じ道を歩むのか
2021年夏から「ホンダが消える」シリーズを連載し始めて4年以上も過ぎました。第1回は「守るモノと捨てるモノは何か 創業7年目の社史から解き明かす」でした。
連載開始はEV宣言がきっかけ
連載を思い立ったのは、2つの出来事です。
2021年4月23日、三部敏宏社長が就任会見で2040年までに新車を電気自動車(EV)と燃料電池車へ全面転換し、エンジン車をゼロにすると宣言しました。地球温暖化を防止するため、世界各国がCO2など温室効果ガスを削減するカーボンニュートラルに向けて突っ走っていました。
1970年代、世界で最も厳しい米国のマスキー法をクリアするCVCCエンジンを開発するなど世界に先駆けて挑戦するのが「ホンダらしさ」。素晴らしいエンジンを開発してきたホンダがエンジンを捨てる決断にはかなり驚きましたが、新しい「ホンダらしさ」の第1歩と受け止めました。
もうひとつは55歳以上の社員を対象にした早期退職制度の実施。エンジンに見切りをつけて思い切った電動化へハンドルを切るためには、世代交代が必要と判断しました。
ホンダは四輪車事業の採算悪化に苦しんでいました。就任したばかりの三部社長が、本来の「ホンダらしさ」を見失い、大企業病が蔓延した社内の意識を一掃するため、大胆な経営戦略の転換に踏み切る胸の内はわかったつもりです。
警鐘と叱咤激励も
しかし、1980年代から長年、新聞記者としてホンダを眺めてきた自分としては、すぐには納得できませんでした。新しい挑戦を成功するためには過去の栄光を捨て去る勇気が欠かせませんが、新たな成功を達成する原動力は創業以来、積み上げてきた技術と経験と人材です。まるで「だるま落とし」のようにベテラン社員を木槌でポンと社外に放り出して、「若手社員に頑張れ!」と鼓舞しても試行錯誤も空回りするだけ。
このままでは飛躍どころか、失速してしまう。連載「ホンダが消える」は、警鐘と叱咤激励を込めて始めたのです。第1回に「守るモノと捨てるモノは何か 創業7年目の社史から解き明かす」を選んだのも、創業の原点に立ち返る大事さを問いたかったからです。
4年以上の歳月が過ぎ、今回で第58回目を数えますが、テーマは「上場以来初の赤字が6900億円 日産と同じ道を歩むのか」。
赤字幅が最大6900億円にまで拡大した主因は、5年前に宣言したEVへの全面転換。トランプ大統領による補助金打ち切りなどで主力の米国市場はEV需要が大幅に減少、GMやフォードと同様、ホンダもEV計画の変更に追い込まれました。2025年10月末のジャパンモビリティショーで大々的に発表し、2026年から発売するEV「0(ゼロ)シリーズ」2車種を含むEV3車種は開発中止です。
目を背けたくなる悲惨な結果
目を背けたくなる悲惨な結果です。最大約1兆3000億円と見込む減損損失を計上。最終利益は3000億円の黒字から上場以来初の赤字転落。営業利益も5500億円の黒字から2700億~5700億円の赤字に。来期は部品会社への補償費用などで約1兆2000億円の損失が発生するそうです。
この4年間はなんだったのだろうか。創業者の本田宗一郎氏はホンダ社員に自らの夢に向けて全力疾走することを求めました。ところが、今のホンダは、夢を現実に落とし込む挑戦で迷路から抜け出せないでいます。
なにしろ最大の懸案だった四輪車事業がいつになっても黒字化しない。祖業の二輪車が高収益を上げてホンダの屋台骨を支えているとはいえ、EV全面転換を宣言する以前からの課題が全く解決しない。理由はEVをめぐる政策変更などとは無縁です。
四輪車は稼げない事業に
四輪車事業は猛烈な逆風に襲われています。2025年年4〜12月期でで四輪事業の営業損益が16641億円の赤字に転落、赤字は14年ぶり。当面はHVに注力する構えで、EVに投じる計画だった経営資源を投入して車種の拡充や開発期間を短縮するとしていますが、これまで成功していないことが、今のホンダにできるのか。三部社長は「今求められているのは、現実を正面から受け止め、四輪事業を中長期的に成長できる構造へと転換することだ」と冷静に話しますが、評論家ならまだしも社長の弁とは思えません。
皮肉にも、ホンダは日産自動車の後追いかけているように映ります。日産は2025年3月期は6709億円、2026年3月期は6500億円と最終損益で2年連続の赤字を計上。2025年はホンダと協業するかどうかで大騒ぎとなりました。結局はホンダも日産も同じ7000億円に迫る赤字の窮地に追い込まれています。EV戦略の成否が左右したというよりは、ヒットする新車を世に送り出せない経営状況もそっくり。
「ホンダが消える」シリーズで「第4回 EVはジンクスを破るのか、それとも日産の軌跡を辿るか」を投稿しましたが、残念ながら的中してしまいました。
注)「第4回 EVはジンクスを破るのか、それとも日産の軌跡を辿るか」は電子書籍「ホンダが消える」でしか読めません。申し訳ありません。

