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イビデン、ニデック代わって日経平均に 次代技術を極め、時代の潮流を掴む変幻自在が魅力

 イビデンが11月5日、日経平均に採用されました。採用銘柄のニデックが不適切会計で財務指標の信頼性が疑われ、東証から特別注意銘柄に指定されたことで除外され、代わりにイビデンが選ばれたのです。選んだ理由は不明ですが、長年製造業を眺めていた視点で改めてニデックとイビデンを並べると、製造業としては真逆のタイプ。イビデンは、独自技術力を軸に際限なく事業の幅を広げる変幻自在が魅力。日本経済の活力を測る体温計としてはぴったりです。

ニデックは技術力と突破力が背中合わせ

 ニデックとイビデンをざっくりと比較します。ニデックは今、不適切会計で信頼を失っていますが、まだ日本の製造業の強さを体現していると信じています。ただ、イビデンと事業のベクトルが異なります。

 ニデックの強さは深掘り。しかも、かなりの腕力。凄みがあります。その源は創業者の永守重信氏。1967年に職業訓練大学校(現在の職業能力開発総合大学校)の電気科を首席で卒業。1973年、京都市の小さなプレハブ小屋で小型モーターを開発・生産し始めました。

 真骨頂は努力と独創的な発想に裏付けられた技術力と営業力。育て上げた技術力は最大の資産であり、その資産を築き上げた技術者としての自負が失敗を許しません。小型モーターをフル回転させながら、時代が求める新製品を創り上げ、コンピューター、自動車と裾野を広げて2兆円企業に育て上げました。

 創業の地、京都市は永守氏が尊敬する稀代の経営者、京セラの稲盛和夫氏、ワコールの塚本幸一氏ら多くの個性的な創業者を輩出しています。1000年を超える伝統工芸の技が目の前にあるわけですから、一筋に極める職人気質は当たり前。中途半端を許さず、熱狂、時には狂気と映る場合もあります。

 ニデックの経営戦略が強引すぎるとも思える剛腕ぶりに映るのも当然です。小型モーターに続く第2の創業として注力した電気自動車(EV)向け駆動系事業、あるいは創業以来74社に買収を仕掛け、成功させた勝負師としての切れ味。強さと怖さが混在する突破力は誰もが認めます。

イビデンは変幻自在に用途開発

  イビデンは全く逆。創業時の中核技術を守りながら、時代のニーズに合わせて技術を進化させ、製品開発するフットワークの軽さが身上です。

 創業は1912年に岐阜県の揖斐川を活用した電力会社ですが、5年後の1917年にカーバイドを生産、フェロシリコン、カーボンなど電化製品に業容を広げます。昭和の高度成長期にはカーバイド生産で「地獄の窯の火が消えても、イビデンの炉は消えない」と言われるほどだったそうです。

 ところが、カーバイドの需要先である鉄鋼が縮小。新規開拓を余儀なくされたものの、鉄に代わる「産業のコメ」と評された半導体でチャンスを掴みます。

 1990年代、セラミックが主流だった半導体パッケージは、高速度処理の技術進化によって安価で導電性が優れるプラスチック製パッケージの需要が湧いてきたのです。イビデンはカーバイドで培ったメッキ技術を使ってプリント基板のパターン配線などで経験を積んでおり、土地勘があります。

 当時、半導体パッケージは世界最大の半導体メーカー、米インテルからの受注を突破口にカーバイドに代わる主力事業に躍り出ます。今では、人工知能(AI)半導体の世界最大手の米エヌビディアの主要サプライヤーとなっています。蓄積した技術力があるからこその成功、エヌビディアの黒子と呼ばれるゆえんです。

 もちろん、「地獄の窯の火が消えても、イビデンの炉は消えない」を捨てたわけではありません。創業時から積み重ねた中核技術が事業の裾野を確実に広げています。水力発電など電力事業から生まれた技術は電子部品やセラミックに用途を拡大。半導体製造装置やディーゼルエンジンの排ガス浄化に必須のセラミック製のDPFなど新たな事業の大黒柱を打ち立てています。

技術力で機敏に活路を拓く

 イビデンは今後の需要拡大を期待できるAI半導体など電子部品に積極的に投資しており、開発、生産の両分野で成長力をさらに強めるのは間違いありません。しかし、もっと注目したいのは産業の新陳代謝と共にイビデン自身が変化を恐れずに挑戦し続ける経営を堅持していることです。

 持ち前の技術力によって機敏に活路を開く。簡単そうに見えますが、時には過去の経験を捨てる覚悟が求められます。イビデンが日経平均を通じて注目を浴びることは、日本経済に新鮮な視点を加える好機だと思います。

◆ 写真はイビデンのHPから引用しました。

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