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米政府がインテル出資 結局は中国、ロシアと同じ国家資本主義 ミイラ取りがミイラに

 米国政府が米半導体大手のインテルに10%出資します。トランプ大統領は日本製鉄が買収したUSスチールに対しても黄金株を手にしています。「MAGA(米国を再び偉大に)」の下、中国政府が深く関与して世界最強をめざす半導体、鉄鋼に対抗するのが狙いですが、結局はロシアや中国が推し進める国家資本主義と同じ道を選ぶことに。

USスチールは黄金株取得

 本来、資本主義は自由な発想が生み出す活力がエネルギー源のはず。インテルもUSスチールも米国にとって産業の根幹を支える企業ですが、米国が中国、ロシアと同様に国家主導で再建する政策を選ぶようでは暗い未来が待ち構える迷路に迷い込むに違いありません。米国の結末は「ミイラ取りがミイラになる」?

 英経済紙「エコノミスト」は、「トランプのファンタジー」と表現しました。表紙に描かれたイラストは、チップに加工する前の半導体の円盤をピザに見立て、家族団らんの食事に差し出す瞬間。半導体チップのピザを食事に差し出されても、米国民が満たされるわけがありません。

インテルは台湾などに敗退

 「Intel Inside(インテル、入っている)」。パソコンを購入すれば、かならずといって目にしたステッカーです。かつて世界の半導体産業で頭抜けた存在だったインテル。今、信じらいれないほど経営の窮地に立っています。世界1位の座は生産受託に徹した台湾のTSMCに奪われ、続く韓国、中国が世界市場を押さえています。

 最先端の成長分野であるAI(人工知能)向けは米エヌビディアがダントツ。まるで四面楚歌のように呆然とするインテルは直近の6四半期連続して赤字を計上しています。

 インテル救済だけで米国の半導体産業は復権しません。米政府のインテル出資はMAGAが成功するかのような夢物語にすぎないのです。

 発表によると、米政府がインテルに89億ドル(約1兆3000億円)を出資し、9・9%の株式を取得。米政府は取締役を派遣せず、信用保証の後ろ盾になります。2008年のリーマン・ショック以降、米政府による米企業への最大規模の金融支援になるそうです。トランプ大統領は「米国にとっても、インテルにとってもすばらしい取引だ」とSNSで発信していますが、果たしてどうか。

 国が経済復興に向けて企業に深く関わることは珍しいわけではありません。戦後の日本はその典型例であり、成功例としてシンガポール、韓国、台湾など新興経済国が学びました。

経済合理性を無視した国家資本主義は混乱を招く

 しかし、経済合理性を無視して政治・外交の戦略として活用すれば、話は全く別。

 1990年代のロシアや中国を思い出してください。ロシアのプーチン大統領は石油・ガスのエネルギー会社を国家管理して欧州や日本など外交的な武器として活用しました。

 中国は日本の力を得ながら鉄鋼など基幹産業をゼロから立ち上げた後、政府と企業がより一体となって機械、自動車、太陽光などで世界シェアを高め、主導権を握ろうとしています。

 BYDなど中国製EVを見てください。欧米や日本が太刀打ちできない割安な価格で販売され、欧州車などを蹴散らしています。トランプ大統領が危険視する半導体も同じです。中国勢は巨額投資を続け、世界の最先端技術を急速に取り込んでいます。いずれも企業の体力を超える力がなければ継続できません。

 国の再建には効果的でも、政治に大きく左右されるのが国家資本主義。経済合理性は無視した企業経営となり、世界を牛耳るまでライバルを駆逐する。世界経済は大混乱するしかありません。米国が中国、ロシアと同じ国家資本主義をひた走ったら、経済戦争の枠を超えるのではないでしょうか。

 インテルの政府出資が米国の強さを再生するのか、あるいは衰退の道をひた走るのか。米国に明るい未来を見出せません。

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