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ジャングリアとウーブンシティ 作り手が夢想に酔う「令和のバベルの塔」

 なにしろ2020年1月、当時の豊田章男社長が米国で開催した世界的な技術イベントCESで発表した実験都市構想です。静岡県裾野市のトヨタの工場跡地70ヘクタールを使い、人工都市を建設し、新しいモビリティ(移動体)や生活インフラの実験します。

 ウーブンシティとは英語のweave(織り込む)の過去分詞・形容詞で、多種多様な人間行動を最先端の技術と見識を織り込み、未来を具現化する挑戦への気概を示しています。「未来都市に人々が生活しながら自動運転やモビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS、移動のサービス化)、スマートホームコネクテッド技術、AIなどの技術を実証する」と説明する豊田社長の熱い思いを受け止められますか。

 CESでの発表から1年後には着工するスピード感、投資額が50億円などの事実を考えれば、トヨタが社運をかけたプロジェクトといって間違いなしでしょう。発案者が豊田会長なら、全体計画を指揮するウーブン・バイ・トヨタの副社長は、豊田会長の息子さん、大輔さんが就任しています。トヨタ、グループ企業のだれも抵抗できません。 

 まして世界一の自動車メーカーで日本を代表する製造業がここまで入れ込むのですから、実証実験に協力する企業も力が入ります。当初はトヨタグループやNTTなど7社でしたが、宇宙関連企業、製薬会社を含む19社に増えています。皮肉を言えば、まるでウーブンシティという祭りのお神輿を担いでるようにしか見えません。

 実験都市は9月25日から動き出します。第1期エリア(約4万7000平方メートル)が完成し、360人が居住して実証実験が始まります。居住棟を含む14棟の建物ができあがり、自動配送ロボットが宅配サービスするほか、歩行者用や自動運転車用の道路、人流や交通量を計測して切り替わる信号が設置され、近未来の交通網を模索します。

 都市には将来トヨタ系列の従業員を含む2000人以上が住民として暮らすそうです。もっとも、いずれもトヨタと深い取引関係がある企業や社員が関わるわけですから、社会実験としての客観性は担保できるのか疑問です。

人間を忘れた施設は価値がない

 実験都市としての価値を期待できなければ、ジャングリアと同じエンターテイメントのテーマパークとそう変わりません。

 ジャングリアもウーブンシティも夢を追いかけ、楽しい日常生活を実現しようと試みています。しかし、ボタンの掛け違いのように最も大事なものを見失っているのではないでしょうか。そこで楽しみ、暮らす人間の存在を忘れて、作り手、プロデューサーが夢想に酔って満足してもしょうがないのです。

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