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ローソン、KDDIと三菱商事の都合でコンビニは生き残るのか 主役のお客はどこに?

 KDDIと三菱商事がコンビニエンスストアの未来モデルを創り上げる。スマホやデジタル決済が社会インフラとなっている今、コンビニは最先端の実験場です。コンビニが進化するうえで必要な資本力、技術力、ノウハウは十分にあり、どんな驚きが生まれるのか楽しみです。ただ、外野席から眺めると、欠けているのモノがあることに気づきました。コンビニを利用する主役であるお客さんの姿が見当たりません。消費者の目線を忘れてコンビニを進化させても、当初の思惑は戸惑いに変わってしまいます。

スマホとコンビニは社会インフラ

 KDDIが2月6日、ローソン株をTOB(株式公開買い付け)によって取得すると発表しました。ローソンは三菱商事が50%を握る親会社ですが、三菱商事以外の株式を買い集め、折半出資の形で経営します。当然、ローソンは株式上場を廃止。KDDIは全国に1万4600店を展開するローソンを傘下に置き、通信やデジタル技術などを生かしてポイントや金融などを組み合わせた消費者向けサービスを開発し、KDDIのスマホ決済「aupay」軸にした経済圏を構築します。

 KDDIにとってローソンは「宝の山」です。購買履歴などを通じて積み上げられた豊富な顧客データをAI(人工知能)で分析し、販売促進や新サービスを開発します。もちろん、ローソンの店舗運営にも、情報技術をふんだんにデジタル入して、経営をデジタル化、効率化も加速。KDDIの通信技術を活用してドローンを使った遠隔地配送も計画しています。

KDDIがローソン手中は当然

 コンビニへの経営参加は悲願でした。2008年に銀行業の営業免許を取得し、「じぶん銀行」を開業したほか、証券会社を買収してスマホを使った金融サービスの拡充を急いでいました。ローソンとは2019年、資本業務提携を結び、翌年の20年にはローソンのポイント「Ponta(ポンタ)」とauポイントを統合しており、スマホ利用者が頻繁に通うローソンを事業に取り込み、通信事業の枠外から飛び出す戦略へ移るのは当然の流れでした。

 すでに通信サービスと金融や小売りが融合する流れは広がっています。ソフトバンクは、グループの電子決済サービス「PayPay(ペイペイ)」を一気に広げているほか、楽天もインターネットの通販サイト「楽天市場」を中心にポイントを使った経済圏を構築しています。楽天が大赤字を出しながらも、楽天モバイルを設立してスマホ事業の拡大に努力するのも、スマホがあらゆる消費者サービスの主戦場になっているからです。

セブンやファミマに対抗できるか

 ローソンはセブンやファミマを上回る競争力を手にできるのでしょうか。消費者向けサービスという枠組みでみれば、すでにセブンイレブンもファミリーマートも同じ方向に走っており、ローソンの差別化につながるとは思えません。KDDIは「スマホ」を持っており、セブンイレブン、ファミリマートにはありません。ただ、スマホ決済ならPayPayはじめ数多あり、KDDIの技術を利用しなくても問題ありません。むしろ、ローソンはKDDIの技術・事業戦略が足枷となって、ライバルに比べ出遅れる可能性すらあります。

KDDIが足枷になる恐れも

 ローソンの経営戦略が商社と通信会社の事情で決まってしまうのではないかと心配です。新聞などによると、三菱商事からKDDIに出資を打診したそうです。その真偽は不明ですが、それが事実なら三菱商事は本気でコンビニ事業を経営する覚悟が失せてきたのではないでしょうか。

 流通業を長く眺めてきましたが、その内実は大変です。店頭に並べる商品の構成・開発、物流、人材の手配、チェーン店との交渉などが次々と待ち構えており、石油やガスなど資源開発で大儲けてしている商社ビジネスに比べて「労多くして功少なし」と時々、勘違いするはずです。最も重要な消費者の動向を見極めるのは、商社ビジネスが最も苦手とする領域です。ローソンがKDDIによって株式50%を取得し、非上場となるのも好都合と見るのは邪推でしょうか。

三菱商事に意欲はあるかな?

 日本のコンビニは人口減社会の加速で、高齢者や独居世帯を想定し、よりきめ細かい小売り・サービスが求められます。社会のインフラといえば聞こえは良いですが、それだけ地域密着の店舗運営が必須になります。スマホ事業に限界を感じているKDDIを引き込み、新たな消費者ビジネスを展開するパートナーと資本力を手にしたい。こう考えても不思議ではありません。KDDIと三菱商事という日本を代表する優良企業が主役を演じる提携劇ですが、その舞台裏には本来の主役であるお客さんを見失い、自信が揺らいでいる優良企業2社の姿が隠れているのかもしれません。

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