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軽EVは日本を救うか⑦ スズキのカーボンニュートラル(下)途上国開拓で先行利得

 「軽EVは日本を救うのか」シリーズでは、読み取るキーワードとして2つの2極化を挙げています。第1番目は価格の2極化。日本円で1000万円を超える高価格帯にはホンダ・ソニーなど自動車メーカーと情報技術メーカーが連携した未来の電気自動車(EV)が相次いで登場します。富裕層が競って購入するはず。一方で低価格化も進みます。クルマが日常の足として欠かせない層にはEVがエンターテインメントの空間となるかどうかは問題外。日本円で100万円台が主戦場です。

途上国のEV市場はこれから巨大化

 そして第2番目の2極化は市場。EVが主役を演じる欧米中国と、EVがこれから普及する途上国に分かれます。もちろん、欧米や中国がEV一色になるわけがありません。地域、国によってEVとエンジン車が入り混じり、まだら模様になります。

 スズキのカーボンニュートラル時代の成長戦略は途上国にぴたりと焦点を合わせます。

スズキは世界12カ国でシェア1位

 2023年1月に発表した成長戦略で四輪車がシェア1位を獲得した国・地域を列挙しています。販売している208カ国・地域のうち、シェア1位は12カ国。筆頭はインドの43・2%。さすがです。市場規模はインドを大幅に下回りますが、パキスタンが44・8%、ジブチが42・9%、エチオピアが42・9%と続きます。

 地域別に見ると、アジアはインド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマーの5カ国、アフリカが4カ国、中南米がバルバドス、ボリビアの2カ国。欧州は現地生産しているハンガリーだけ。

 成長戦略では「スズキらしい解決策」を重視すると強調していますが、世界シェアの国・地域をみると、やはり「スズキらしい」かも。

 その「スズキらしい」で狙う市場成長力は凄まじいものがあります。2050年の市場成長力は、スズキの予想によるとインドは人口13億人超から2050年には17億人近くへ。アフリカは13億人近くから24億人に手が届きそう。GDPの成長はインドが6倍、アフリカは5倍近く。予想が当たるかどうかは別にしても、インドは確実に日本のGDPを上回りますから十分に期待できます。

 ちなみに日産自動車とルノーはEVで再び手を組むことで合意しました。成長を見込む市場としてアフリカ、南米を狙っています。世界の自動車メーカーによる市場の奪い合いが始まる寸前です。

インドでの成功は途上国開拓の強さをもたらす

 スズキの強みはインド、アフリカなどで積んだ経験による先行利得です。インド進出を推進した鈴木修さんが「インドでシェア1位になれば、世界一の米GMと同格のブランド力を持てる」と当時、豪語していましたが、まさにその通り。

 先進国、途上国問わず市場の開拓はお店を開けばスタートするものではありません。現地の政治・経済に精通し、人的ネットワークが欠かせません。インド、パキスタン、アフリカでシェア1位を獲得している実績と経験は、スズキにとってブランドの強さだけでなく新たに開拓する途上国でも確実に発揮されれます。

 しかも、インド市場などで途上国で培った小型車の開発、販売の経験はEV戦略で他社を引き離す強みになります。安価で小型車なら売れるわけではありません。スズキにとってインドでの成功はEV時代に入ってもパイオニアとしての先行利得を約束しているのかもしれません。

トヨタGと並走も

 スズキはダイハツとともに軽EVを共同開発しています。ダイハツもインドネシアなどアジアを中心に輸出しているほか、同じトヨタグループの豊田通商は南アフリカを拠点にアフリカに強い販売網を構築しています。

 EVを掲げアジア、アフリカ、南米の市場を開拓するスズキの横にはダイハツはじめトヨタグループが並走します。ひょっとしたら、同じブランドに統一して軽・小型車クラスのシェアを広げるのではないでしょうか。

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