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公取委、トヨタ、三菱ふそうに勧告 下請法違反で自動車の頂点にメス 

 公正取引委員会がついに下請法違反で自動車産業の頂点にメスを入れました。10月末、トヨタ自動車の子会社、トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)に対し下請け企業に金型を無償保管させたことを下請法違反と認定し、再発防止を勧告しました。すでに三菱ふそうトラック・バス(川崎市)に対しても同じ金型の無償保管で勧告する方針を固めており、立て続けに摘発する形です。

完成車メーカーへの勧告は初めて

 自動車部品メーカーのみならず製造業では下請け企業に金型や部品を無償で保管させる商慣習が当たり前のように根強く残っています。これまでも公取委は自動車部品メーカーなどに勧告を重ねてきましたが、違法行為となる商習慣を撤廃する流れが広がりません。自動車産業の頂点である完成車メーカーに初めて勧告を下し、悪習の一掃を迫ることにしました。

 ここ数年、公取委は中小企業庁と連携しながら、自動車をはじめ流通業など幅広い産業の中小企業に対する下請法違反を頻繁に摘発しています。大企業が発注する優位的な立場を利用して契約した取引価格を下回る金額を支払う事例が絶えないうえ、本来なら費用を支払うべき金型や部品の保管を無償で求めるなど長年続く商習慣があるからです。

 自動車産業の場合、トヨタなど完成車メーカーを頂点に1次下請け、2次下請けと積み重なるピラミッド形式の産業構造ができあがっています。公取委はこれまで自動車産業に数多くの勧告を決定していますが、下請け企業に対する発注業務は完成車メーカーではなく大手の自動車部品メーカーが担当するため、勧告の対象となる企業は系列大手の部品メーカーに限られていました。

トヨタはマニュアルが不法行為

 しかし、今回は初めて自動車の産業ピラミッドの頂点に立つトヨタ自動車の子会社、トヨタ自動車東日本と三菱ふそうが摘発されました。トヨタの場合、論拠となったのは取引マニュアル。下請法違反の行為がトヨタグループのマニュアルを参考にしているためで、公取委はマニュアルを作成した親会社のトヨタに対しても改善措置を求めました。

 実は2024年にも別のトヨタ子会社が摘発されています。公取委は事実上、トヨタがグループぐるみで下請法違反を行なっていたと認定し、勧告した形です。過去の勧告事例と重みが違います。

 金型の無償保管など下請け企業に経営負担を強いる商習慣は長年、当たり前のように続いています。三菱ふそうの事例をみても、2024年以降、新たな発注予定が無いにもかかわらず、5000個超える金型を下請け業者50社以上に無償で保管させていたそうです。中小企業庁などの調査で判明し、公取委に勧告を求める「措置請求」が伝えられていました。

不正行為に対する鈍感さに呆れる

 それにしても、トヨタなど自動車メーカーの下請法違反に対する意識の鈍感さに呆れます。この3年間をみても、公取委と中小企業庁が下請け企業に対する不正取引を盛んに摘発しており、トヨタに限らず自動車各社の購買担当は現在の取引形態が下請法違反に触れるかどうかをチェックしているはず。それでもトヨタや三菱ふそうは是正しなかったのですから、不正行為という認識がなかったのでしょう。

 10月末からジャパン・モビリティショーが開催され、トヨタ、三菱ふそうを含む大手自動車メーカーは電気自動車(EV)や人工知能を使った未来の物流を提示し、近未来に訪れる明るいモビリティ社会を描いています。しかし、その未来の繁栄に向けて下請け企業から不正行為で収益を奪取しているとしたら、モビリティ社会は空疎な砂上の楼閣に過ぎません。猛省すべきです。

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