「みんなで大家さん」「リライブ」が問い直すテレビCMの”お墨付き”　信頼より収益優先？

　テレビCMの信頼と責務が改めて問われる騒動が続いています。不動産投資商品「みんなで大家さん」と健康回復効果を謳った衣料「リライブ」。いずれもテレビで数多くのCMを放送し、事業を拡大してきましたが、「みんなで大家さん」は分配金の支払い遅延、「リライブ」は厚生労働省の定義に該当しない衣料と認定され、大量回収する事態に発展しています。

分配金遅延、虚偽広告

　騒動の責任は事業会社にあるのは当然ですが、「みんなで大家さん」「リライブ」のテレビCMが果たした影響力を無視するわけにはいきません。情報発信力はSNSなどネットに主役の座を奪われたとはいえ、新聞とテレビは今も日常生活で信頼されるメディアです。「好きな人気番組を放送するテレビでCMが流れているから」との理由でCM内容を信じる視聴者は依然、多いはず。これまでも「テレビで放送している〇〇」を強調し、会社名や製品をは多数あります。テレビが自ら改めて信頼維持と放送の責務を問い直す時です。

「みんなで大家さん」の運営会社「都市綜研インベストファンド」（大阪市）は１１月末、出資者に対して「現時点で計画の変更は予定していない」と弁明しながら「極めて厳しい局面にある」と通知しました。１９の投資商品で支払いが遅延しており、主力投資商品である成田空港（千葉県成田市）周辺の開発は頓挫寸前。開発用地の４割を所有する成田国際空港会社が開発主体の不動産会社「共生バンク」（東京都千代田区）との賃貸借契約を１１月末で終えると表明したからです。この投資商品は年利７％という高い利回りで注目され、３万８０００人から約２０００億円を集めたといわれています。

大量のCMでヒット

　分配金の支払い遅延についてはすでに１１９１人の出資者が１１４億円余りの返還を求め、大阪地裁に提訴しています。この騒動はまだまだ続くのは間違いありません。

「リライブ」は普通のシャツを健康に効果があると偽って販売していました。人気タレントの出川哲朗を起用して体調が大きく改善するテレビCMを大量に放送。遠赤外線が血行を促進させるシャツの知名度を高め、販売を伸ばしました。ところが、１１月に入って製造元の「りらいぶ」（仙台市）は、シャツとスパッツの合計約４８万着を自主回収すると発表。厚生労働省が示す定義に該当しないと判明したためです。

　回収対象は、２０２４年２月から発売した「リライブシャツα」と「リライブスパッツα」の２製品。「家庭用遠赤外線血行促進用衣」として銘打っていましたが、遠赤外線を放射する範囲がプリント加工部分に限られ、衣類全体に機能を有するとの定義に合致していなかったと説明しています。安全性に問題はなく、健康被害の恐れはないそうですが、価格１万円近いシャツは実はただのシャツ。これって詐欺行為に近いのではないでしょうか。「ガマの油」より悪質です。

　テレビCMはテレビ会社が放送法に基づき、広告内容を自主基準にも照らし合わせて審査しています。医薬品などは法律に従って判断しますが、「みんなで大家さん」などの投資商品はリスクがあることを表示して放送しています。年利７％という高利回りを謳っており、金融商品に詳しい人なら高リスクを感じますが、結局は個人の判断に任されています。

「リライブ」も健康食品と同様、あいまいな効果基準をしっかりと見極める必要があるのですが、販売会社が厚労省の定義に反するシャツやスパッツをさも該当しているかのように販売している場合、テレビ会社に虚偽表示を見抜くことは求めるのは難しいでしょう。

法律と自主基準で審査するが・・・

　しかし、広告媒体としての影響力の大きさから、間接的な責任や道義的責任を問う声があるのも事実です。テレビCMを見て信用し、出資を決めた人も少なくないでしょう。長年、テレビに親しんでいる高齢者はCMを頼りに商品を判断しがちです。「テレビが流しているから大丈夫」と安心した可能性は否定できません。

　テレビ会社にも本来なら手を出しくない商品でも受け入れざるを得ない事情もあります。ネットに広告を奪われ、各局ともテレビCMは低下し続けています。とりわけ「みんなで大家さん」「リライブ」のCMを大量に流していたテレビ東京は民放５局の中でも収益が小さく、CM収入の拡大が常に課題でした。背に腹はかえられぬというわけではないでしょうが、多少のリスクに目を瞑っていたら、自らの信用に唾を吐く行為です。テレビ会社は自主審査の基準見直し、判断を根底から見直す必要があります。